こんにちは。札幌と筑波で蓄電池材料研究を行う工学系大学院生のかめ (M2)です。
2021年3月に大学を卒業し、4月からは同じ大学で大学院生として引き続き研究室生活を営んでいきます。
これからの数記事では、これからラボライフを始める学生たちへ、自身の経験に基づいた研究室生活のヒントを授けたいなと思っています。
(研究に挑戦する全ての学生が少しでも快適に過ごせるように)と願って記事を作成しましたので、ぜひ最後までご覧頂ければ幸いでございます。
それでは早速始めましょう!
研究室に入る前は、勉強なんてせず休んで気力の充実に専念すべし
意識の高い学生はひょっとすると、研究室生活が始まる前から既にバリバリ勉強しているかもしれませんね。
よーし、これから研究頑張るぞー!先輩なんてすぐに追い抜いて、大学院を出る頃には先生も追い抜いてやる~!
このようにやる気に満ち溢れ、一日も早く研究室生活が始まることを願っているかもしれません。
こうしたやる気のある学生は今どきすごく貴重です。
我々研究室のメンバーもボーっとしていられなくなるから、意識の高い学生さんは研究室にとってかけがえのない宝物となること請負です。
しかし、ここで少し待って下さい。
確かに研究をやり始める前から意識が高いのはすごく良い事だと思いますが、果たしてその高い志を大学/大学院卒業まで維持できるのか?と、一度立ち止まって考えてみて欲しいのです。
よほど特殊な人を除いてモチベーションはいつか必ず落ちますし、やる気があればある人ほど燃え尽き症候群に苛まれてしまう傾向にあります。
どうしてそう言えるかというと、私自身に一時期燃え尽きてしまった経験があるためです。
私は幸運にも第一志望の研究室に入れました。しかも望み通りの指導教員から指導を受けられることも決まったため、”一年目からガリガリ勉強してガンガン研究しよう!”と春休みは心が燃え盛っておりました。
そして、研究生活が始まる4月からは平日に加え休日までも9時~18時まで研究室にいたし、実験はもちろん、実験を行うにあたって必要となる背景知識の勉強も全速力で行っていきました。
ただ、その勢いは急速に衰えます。6月中旬から体中に蕁麻疹が出現し、更にはまぶたが痙攣したり絞り出せる気力がなくなってしまったりと、心身ともに限界を迎えてしまったのです。
そのため、勉強や研究に対する意欲がある程度戻るまで3週間ほど、家に引きこもり全く勉強しない日々を過ごす羽目に陥ったのです。
確かに研究や勉強に没頭しているときはかなり楽しい一方で、私にはのめりこみ癖があるため体を壊すまで己を追い込んでしまいがちです。
いくら研究が楽しかろうと、体を壊してしまっては元も子もありません。
引きこもり期間中、今後の研究との向き合い方について自分なりに考えてみました。
そして、今後は『研究命!』ではなく、安定した精神状況で研究を進めるべく肩の力を抜いて楽に生きることに決めたのでした。
私自身の経験から伝えたいのは、研究室に入る前からそんなにガツガツしなくても良いという事である。
むしろボーっとして体力や気力を満充電しておいた方が良いと思うし、頭を空っぽにして研究室に来てくれた方が知識の吸収も捗るのではないかと思います。
それに研究室に入ったらかなり忙しくなりますので、今のうちに旅行や帰省、ディズニーデートなど、やれることを沢山やっておいた方が後々後悔が残りません。
指導教員からもし何か課題を渡されたとしても、配属前はそんなに一生懸命頑張る必要はありません。
基本的に先生たちは実験をやらない
いざ研究室配属が完了して研究室に足を運ぶと、先生方が居室でずっとデスクワークをしている姿が目に入るはずです。
私の研究室でもそうでして、最初にそんな姿を見た私は
こんなに忙しく働いていて、先生方は果たしていつ実験をしているの…?
と不思議で仕方ありませんでした。
一日中仕事をしているのに、先生たちは毎年膨大な数の論文を投稿なさっている様子です。
(この人たちは論文に載せるためのデータをいつ集めているの?)と、私は何度も頭をひねって考えていました。
しばらく考えても答えが出なかったため、私は思い切って先輩に聞いてみました。
先輩、先生たちっていつ実験やっているんですか?もしかして休日に集中的に実験なさっているんですか?
しばらく考え込んだのち、先輩は意味深長な面持ちでこのように仰いました。
かめちゃん。実はね、先生たちは実験をしないのよ
ちょっと何言ってるか分からなかったので
すみません。ちょっと何言ってるか分からないです
と答えました。
すると、先輩は
私たち学生が手を動かして実験をして、先生たちは学生が集めたデータをもとに論文を書いているんだよ
このように仰いました。
これで謎が解決しました。先生方がずっと部屋の中にいるのは、学生を実働部隊として働かせているからです。
先生方が忙しそうに見えるのは、大学の雑務に追われている他、学生が出してくれたデータを論文としてまとめるのに大わらわなためですね。
コレだけ見た学生さんはもしかすると「学生を奴隷みたいに扱うなんてけしからん!」とお考えになるかもしれません。
ちなみに私の指導教員も実験をやらない先生ですが、学生をこき使うだけではなくて研究の楽しさも教えてくれるので、正直、搾取されているような気分にはなりません。
加えて、学生を筆頭著者として論文に載せるよう取り計らってくれるため、”自分の名を世界にとどろかせるチャンスだ!”と研究に大きなやり甲斐を感じています。
なお、中には学生が苦労して出してきたデータを全て自分の手柄にしてしまう先生も一定数いらっしゃるみたいですが、万一そういった先生の元についてしまった時は、程々に手を抜いて頑張りすぎないように注意するのが肝心です。
もし先生との相性が悪ければ、大学院入試の際に同じ専攻の他の研究室への移動希望を出したり、思い切って他大学の大学院へ行ってしまうのが有効な選択肢と考えます。
一年間に53万円もの学費を払うのに我慢して耐える必要はありませんので、人間関係で困ったら環境を変えることも考慮してみてくださいね。
ゼミ:スピードラーニングの要領で少しずつ専門用語に慣れていくべし
だいたいどこの研究室に行っても週1~2でゼミが開かれています。
私が所属している研究室では
- 雑誌会:各自の研究分野と関連する論文を分かりやすく紹介する
- 輪講:英語の教材を扱う
- 中間報告:各自の実験の進捗報告
- 学会や学位論文発表会に向けた発表練習
この4つの内容を学期期間中に取り扱っておりました。
そして、私が初めてのゼミに参加して思ったのは
この人たち、さっきから何を喋ってるの?一言も意味が分からないんだけど…
といったものでした。
専門用語を全く知らなかったから全然話をフォローできませんしたし、プレゼン中に突如英単語が出現すると途端にパニックに陥っていました。
ここで知っておいてほしいのは、みんなの前でちょっと何言ってるか分からない内容を話している先輩自身も、昔はみんなと同じくゼミの内容がちんぷんかんぷんだったという事実であります。
日常生活では聞きなれない言葉ばかり扱っているのだから何も知らなくて当然だし、最初から話にホイホイ話についてこられたらむしろこっちがビックリしますよ。
分からないなりに一生懸命調べたり考えたりすれば知識が少しずつ身についていくし、時々勇気を出して質問する事でディスカッション能力も鍛えられます。
有名な聞き流し英語学習教材に『スピードラーニング』というものがございますが(アレ、本当に効くんですかね笑)、全く意味が分からないうちはスピードラーニングのようにゼミを聞き流してしまって構わないと思います。
私も研究室配属初年度の初期のゼミは少ししか理解できませんでした。
ちょっとどころかチンプンカンプンな状態だったし、あまりにも分からなさ過ぎて (ホンマに研究室でやっていけるのかな…?) と不安に苛まれたほどでした。
しかし、ゼミを聞き流したり、自分でも自主勉強したりした結果、後期からは自分の研究分野ではない話でも多少はイメージできるようになりました。
これから研究室に入る学生さんには、聞き流しに加えてほんの少しの自主学習をオススメしたいと思います。
プレゼンテーション:情報過多にはご注意を。伝える内容は徹底的に絞り込もう
研究室に入りますと、皆の前でプレゼンする機会が格段に増加いたします。
私はB2/B3の頃に合わせて5回ぐらいしか機会がなかったのに対し、研究室生活初年度のB4時代だけでおそらく10回以上はプレゼンの機会がありました。
自分のゼミ発表や実験の進捗報告だけではなく、卒論発表や学会発表の前にはそれらのプレゼン練習を何度も何度もやらされました。
私は人前で話すのがすごく苦手な性格のため、B4時代の特訓のおかげでかなり度胸を鍛えられた気がします。
皆の前でプレゼンする前、私は指導教員に資料を見せて色々とフィードバックをもらっていました。
たくさん有益なアドバイスをいただいた中で、最も頻繁に言われていたのが情報過多には気を付けろということでした。
かめちゃん、君は丁寧すぎるんだよ~
そうなんですかねぇ
これでも随分端折った方なんですけど…
コレでもまだ多すぎるね
プレゼンでは伝えることを絞り込まないと相手に何も伝えられないよ
プレゼンを一つ作るたび、こうしたやり取りを交わしていました。
私はご覧のようにブロガーなので、(物事を丁寧に伝えたい)と思って資料にビッチリと文字を書きこみがちです。
しかしこの一年間、指導教員から「それだと相手に伝わらないぞ」と嫌になるほど教えられました。
几帳面な人ほどつい、プレゼンで多くの事を伝えたくなってしまう傾向があります。
でも、多くの事を伝えたいと思ったら、むしろ伝える内容を絞り込み、一つ一つの話を相手がきちんと理解できるよう情報をそぎ落とすべきなのです。
研究室生活初年度でプレゼン作成の肝をマスターできれば、M1、M2と学年を経るに伴いどんどんプレゼンが上手くなります。
反対に、初年度でかたくなにオレ流を貫き通すと悪い方へ能力が開眼し、いつまでも理解不能なプレゼンをつくってしまうかもしれませんので、配属初年度ぐらいは周囲の言うことに素直に従っておけば後々良いことがあると思います。
次回予告
これからラボに所属する理系大学生に知っておいて欲しい豆知識 (配属前&配属直後編)に関しては以上となります。
次の記事では
- 大学院試験
- 実験
- ディスカッション
- 卒論
これらについて述べていきます。
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