こんにちは。札幌と筑波にて蓄電池材料研究を行う工学系大学院生のかめ (M2)です。
先日の記事に引き続き、今回の記事でもラボ生活を快適にするヒントを伝授してまいります。
まだ先日の記事をご覧になっていない方は、先に以下のリンクからお読みになることをオススメします⇩
大学院試験:実験は二の次で、まず受かる事を優先して下さい!
理系大学生の大半は、まるで約束したかのようにそのまま大学院へと進学します。
というのも、大学のカリキュラム自体が大学院進学を前提に作られているので学士課程だけではほとんど研究に打ち込めないし、修士課程に進んだ方が学部卒の人間よりも企業から内定を得やすくなるからです。
私自身も大学院へ進学する際、
もうちょっと研究やってみないと研究に向いているのか不向きなのか分からないよなぁ…
と思って大学院へ行くことを決断しました。
学部で大学を離れる場合、4月に研究室配属される前から就活を始めなくてはなりませんので、もし研究室に入って研究がめちゃくちゃ楽しくなっても楽しむ時間的余裕がないわけです。
幸運にも私は院試の筆記試験を免除されたので、面接試験のみで大学院修士課程の合格を掴み取ることができました。
そんな筆記試験を受けていない私が言うのもアレなのですが、大学院試験に臨むのであれば実験は二の次で、まずはとにかく合格する事を最優先にして貰いたいです。
なぜなら、大学院試験に落ちれば即・ニートであり、大学受験に落ちて浪人するより大変な日々が待っているからです。
いい齢(とし)こいているクセに社会的身分がなく、”自分は何者でもない”という事実は大学受験浪人よりも辛いものがあるのです。
大学院試験はよく
えっ?大学院試験ってみんな合格するものじゃないの?
と舐められがちです。
しかし実際に毎年何名かは落ちていることが大半ですから、絶対に油断せず徹底的に対策し、試験終了まで一点をかき集める貪欲さを発揮して試験に臨んでくださいね。
普段は「実験をやれ!」とやかましく言う先生方も、大学院試験の勉強のためなら実験から解放してくれるでしょう。
なぜなら、その学生が落ちたら手を動かしてくれる実働部隊を一人失い、教授自身の研究業績を上積みすることがちょっと難しくなるからです。
院試合格のためならば、あなた方の先輩は惜しみなくアドバイスを提供してくれるでしょう。
特に同じ学科の先輩の院試体験談は大変参考になりますし、その先輩との距離を縮める良い機会になりますので、「どうやって勉強したんですか?」と話しかけてみると何か良いことがあるはずです。
実験:最初は失敗して当たり前。やればやるだけ上手くなる
私の所属する研究室の場合、大学院試験終了後から本格的に実験がスタートしました。
院試前からバリバリ進めている人間などごく一握りでしたし、大半の人間は
- 院試前は基礎的な実験手順を習得して
- 院試後から卒論に使えそうなデータを集める
このような形で実験を進めていた形になります。
そして、実験経験のある方なら首がもげるほど頷くと思いますが、最初は何をやっても上手くいかず、全然有意義なデータが取れないのです。
実験セルの作り方が粗かったり、そもそも装置の作動原理を知らなかったりした結果、実験して得られるデータがとんでもなく素っ頓狂なものになってしまいます。
ここで
私ってもしかしてセンスないのかなぁ…
と諦めてしまってはいけません。
今までやったことがないことに挑戦しているわけですから、最初は上手く行かなくて至極当然。むしろ最初からうまくいく方がビックリというものでございます。
何度も何度も実験を行って少しずつ経験値を蓄積し、失敗から色々と学び取ってちょこっとずつ成長していけばいいいんです。
スポーツでも事情は全く同じで、繰り返し練習すれば必ず上達するから全く焦らなくてOKです。
ひとたびコツをつかんでしまえば、その後が今までの苦悶の時間がまるでウソみたいに作業が捗ります。
今は後の飛躍を固く信じ、投げ出さず技術の熟練を辛抱強く待って下さい。
なお、もし3か月頑張っても上達する兆しすらなかった場合、指導教員にお願いして実験テーマを変えてもらうのも一つの選択肢だと思います。
私自身がそのケースに該当するので、ココで私の経験を少々記させてもらいます。
私は研究室配属当時、大変デリケートな装置を使った実験をさせてもらっておりました。
しかし、装置の繊細さと私の大雑把な性格がどうしても全くかみ合わず、3か月ひたすら試行錯誤しても何一つ上達しませんでした。
研究室の同期は少しずつ実験を始め、早くも有意なデータを得た奴がチラホラ現れ始めました。
そこで私は”自分も早く結果を出したい!”と焦ってしまい、焦れば焦るほど結果が出ないという負のスパイラルに陥ったのです。
ただ、どれだけ頑張ってもデータを取れず、とうとう「もう無理です」と先生に泣きついてギブアップいたしました。
先生も「合わないなら仕方ないなぁ」と実験テーマを変えてくれ、今の蓄電池系のテーマに移らせてもらったのです。
もしかしたら読者さんの中には(実験テーマを変えるなんて逃げじゃないか?)とお感じの方がいらっしゃるかもしれませんね。
私自身も最初はそう思っていましたし、逃げるのが嫌だったから研究テーマを変えてもらうまでかなり粘ってみたのです。
ただ、指導教員の立場的には”学生に気を病まれて大学を中退される”のが一番困るわけですから、たとえそれが逃げであっても『逃げてよい逃げ』だと思います。
なお、そこで逃げ癖をつけてしまっては己の成長につながりませんので、ひとたびテーマを変えてもらった後は、何としても踏ん張る気概で頑張らなくてはなりません。
(どうしてもこの研究と相性が合わない)と感じた時は、”実験テーマは変えられる”という事を思い出して下さいね。
テーマを変えてもらったおかげで博士進学まで志す可能性だってあなたは秘めているのです。
ディスカッション(進捗報告):できれば毎週、先輩か先生とお話ししよう。
研究は決して一人では進めることができません。
どんなにすごい研究者でも必ず他の人と話し合いながら研究を進捗させておりますし、話し合う回数と新しい発見の数が比例するのが自然の摂理というものです。
なので、我々学生も周囲の先輩や指導教員などと積極的に対話すべきなのです。
できれば毎週、最低でも月に2回ぐらい、自分の現状を誰かに報告しておくのをオススメします。
進捗報告には新しいアイディアを生み出す他に、自分が変な方向に突っ走っていないかを確認する意味合いをも兼ねています。
もしかしたら自分の立てた仮説自体が根本原理に反していて実現不可能かもしれませんから、”う~ん、なんで上手くいかないんだろなぁ…”と幾ら労力を割いても徒労に終わる可能性すら秘めています。
頻繁にディスカッションを行うことで自分の研究をよりスムーズに進められるし、『少なくとも間違ったことはしていない』とか『この道を突き進めばいいんだ』といかいった安心感に浸れるので余計な心配をせずに済みます。
あまり人と話すのが得意ではない人も、自身の研究のためディスカッションだけは欠かさず行ってもらいものです。
ちなみに研究室配属当初、私は人と話すのが大の苦手でありました。
小4~中2の間に経験したいじめにより人間不信に陥ったのが原因であり、それ以降、なるべく人との関わり合いを避けるようして暮らしてきました。
しかし、研究室に入って人と話さざるを得なくなり、(こうなったらやるしかない)と腹をくくって積極的に人と話すよう心掛けてみたのです。
すると、少しずつ人とリラックスして話せるようになり、B4の終わりには幼少期のように人と話すのが楽しく感じるまでになりました。
もしもあなたが人見知りやコミュ障であろうとも、何度もディスカッションしていくうちに少しずつそれらを克服することが可能です。
超コミュ障の私だって人並みに話せるようになったのだから、大概の人は私より遥かに話し上手になるに違いありません。
卒論:書く順番が何よりも大切。先輩の論文のボリュームに圧倒されないで
私にとって研究室生活初年度の最大の壁は卒業論文の製作でした。
先輩たちの卒論の文字数は15,000字近くの大ボリュームだったし、簡潔で分かりやすい文章が書かれていて圧倒されたものでした。
直属の先輩の卒論をチラッと見せてもらった時、私は
果たして自分は卒論を仕上げられるのか…?
とものすごく不安になりました。
今までそんな理路整然とした著作を記した経験などなく、”卒論を書かなきゃ卒業できない”とあって日増しに焦りが募ったのです。
なお、文字数に対する心配はなかったのです。
私はB4当時から別ブログで文章を書くことを趣味としておりまして、中にはひと記事で19,000字オーバーと卒論を上回るボリュームの記事も書いた経験があったからです。
ただ、卒論と論文とではまるで書く勝手が異なります。
ブログでは何でも好き勝手書いて良いのに対し、論文では話を脱線させることなく、ある一つの線に沿って客観的に考察し続けなくてはならないのです。
先輩にアドバイスを求めても「まぁ、何とかなるさ」としか答えてくれません。そこで困り果てた私はネットで卒論の作り方を検索してみたのです。
色々とサイトを見ていくうちに、卒論製作には順番があると少しずつ分かってきたのです。
- 何はともあれ謝辞を書き
- 次に論文の目的地を定めるため結論を記して
- その研究で分かったことを実験結果・考察で淡々と述べて
- その結果を得るためにどのような手法を用いたのかを実験方法で詳述し
- その結果をえる意義について実験背景にて説明する
このように、卒論を一つのストーリーとして見立てることで、製作途中に迷子にならず、かつ迅速に論文を仕上げられると気付かされたのです。
私が卒論作りを難しく思っていたのは、最初に実験背景を作ろうとしていたからでした。
本来、イントロダクションは実験結果や実験方法をまとめた後に書くパートですから、そんな大変な章にいきなり挑戦しても上手く行くはずがなかったのです。
上で述べた5ステップに従って改めて卒論作成に取り掛かった所、5日間であっという間に私の卒論が完成しました。
私の卒論は表紙と目次を抜いて59ページ&23,000字ありまして、(多いなぁ…)と圧倒されていた先輩の卒論より遥かに多いものでした。
最後に
これからラボライフを始める学生さんたちに伝えたいメッセージに関してはコレで以上となります。
研究室配属の前と後では環境が激変するため、今まで培ってきた生活リズムをなるべく崩さないよう気を付けて頂きたいと思います。
何よりも肝心なのはトラブルを一人で抱え込まない事です。
全て一人で解決しようとせず、周りの力を上手に使い、研究室ライフを華やかで実りのあるものに彩って頂きたいと思っています。
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