転職活動を経て何を思うか
にゃん量産開発部員として過ごした一年半を振り返ってみて、どんな時間だった?



辛い一年半だったよ。得意なものとは真逆の力が求められ、適応に苦しんだ。視力が左右ともに半分も下がり、不満をウィスキーで流し込むなど、今まで感じたことのないストレスに絶えず悩まされた



ちなみにどのウィスキーが好きなの?



やっぱニッカが一番だよ。なかなかキレのある味で、悪酔いしないのがいい。あとね、



もういいって



聞いたのそっちじゃん。まぁいいや
もちろん量産開発の仕事は大変だったけど、博士課程のころは苦手だったプログラミングができるようになったし、人と一緒に仕事を進める肌感覚も培えた。また、大学院修了前と比較して、製造業に対する解像度が高まり、おかげで二社目と巡り会えた。悪いことばかりではなかったよ
もちろん、もう二度と経験したくないよ。あんな辛い思いは、もうこりごりだから



そんな一年半を経て、研究職への転職が決まったとき何を考えた?



ようやく研究の世界に戻れる…と安堵した
博士課程ではアカデミア公募への挑戦を諸般の理由で断念し、民間企業に進んだ。企業では、研究ができると思っていたのに、研究に携われなかった。そのうえ、学術的知見に対する理解がない方もおられ、業務のヒントを得るためオフィスで論文を読んでいたら、「そんなもん読むな!」と怒られる始末。自分のアタマに汗をかかずに楽をするなどけしからんらしい



みんな、論文を読んで怒られたことある? 博士に論文を読むなと言ってきたんだよ、いろんな意味ですごいなぁと思ったね。アカデミアから遠く離れた場所に来たのだと感じ、悲しくなっちゃったな
転職を経て、研究業界への復帰を果たした。もうね、嬉しくてたまらないよ。論文を読んでも怒られない場所に行けるんだって。研究しても怒られないんだって。博士号が喜んでいるよ



そこまで研究職へ戻れて嬉しかったのは、あなたにとって研究がどんな存在だったから?



私にとって研究とは、生き方そのもの。中学高校では馬術競技で全国大会に出場し、大学では全集完読やマラソン自己ベスト更新に精を出し、研究室では研究テーマに全力で取り組んできた。このように、絶えず何かを深く掘り下げて探究する人生を歩んできた



私が研究職になるというのは、職務レベルで生き方を体現すること。量産開発職から研究職に転身すれば、自分本来の生き方を取り戻せる
仕事って、もちろん生活費を稼ぐためにしているんだけど、社会貢献の意味合いもあるよね。業務を通じて社会をより豊かにし、未来に希望を託すために働いているんじゃないかな。転職で会社を移ったおかげで、自分の最も得意とする形で社会のお役に立てるようになった



一社目での量産開発経験は、素材メーカーでの研究に活かせそうかな?



活かせると思う。研究と量産双方の事情を知っているエンジニアとして、両者を橋渡しする存在になりたい



橋になるの?



明石海峡大橋かな



長すぎやろ
研究と量産どんだけ離れてんねん



うわ、ホンマや…
これから研究側の人間として素材研究に携わるわけだけれども、企業は営利団体なので、素材を量産・市販して儲ける必要がある。研究一辺倒だと、良い素材の開発に気を取られて、どう量産するかまで考えられないかもしれない。でも私は量産を経験しているため、モノづくりにつなげる視点を持ちつつ量産側の方々と話し合える



また、自分たちで作った新規素材を完成品メーカーに届ける技術営業的な仕事にも関心がある。素材の良さや特性を深く理解すれば、お客さまにとって最適な解決策を提案する営業研究者になれるかもしれない。実際、いつか技術営業もする可能性があるらしく、今から心づもりをしている
研究を核に、素材を通じて世の中をより良くできたらと考えているよ



そっかぁ~
これから先、どんなキャリアを歩んでいきたい?



しばらくは研究職に携わりたい。ようやく研究畑に戻れるので、しばらくは喜びを噛みしめさせてもらいたい。ひと通り経験して満足したら、少しずつ役割を拡げていけたらと考えている
いずれば部長や執行役員として責任を背負い、会社を、ひいては日本を担う大きな人材になりたい。目指すはCTO、かな



はいはい、CTOね



雑になってない?



確か、10月からなんだよね?



そうそう!
二社目で働き始める10月1日は、9月30日の翌日なんですよ。これ、意外に知られていないんですけど



もういいよ
10月から研究職として働き始めるにあたって、いま一番楽しみにしていることは?



にゃん…
自分の手で実験データを取り、考察すること。一社目では実験装置が故障し、壊れても修理費がつかず、実験をサプライヤーに委託する形で仕事していた。私は自ら実験する方が楽しいし、試行錯誤も厭わない性格なので、手先でゴチャゴチャいじって探究できる日々を楽しみにしている



素材分野は、海外勢の追い上げが著しい。厳しい競争環境でどこまでやれるかチャレンジしてみたい気持ちも強い



分かった。んじゃ最後に、転職活動を終えたいま、一年前の自分に何かひとことお願い



よく頑張ったな
一年後には笑っているから、もうちょっと辛抱しろよ。あと、その会社もうすぐ辞めるから、ちゃんと何日か有休残しておけよ












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