【2年がかり】海外のビッグジャーナルへ論文がアクセプトされた喜怒哀楽の一部始終

M2のとき、インパクトファクター(IF)当時42の学術雑誌にあと一歩の所でリジェクトを食らい、それから約5か月後の10月20日に、IF23の雑誌にアクセプトされました。

この記事では、論文作成に必要な実験データを取る所からアクセプトとなるまでの一部始終を記していきます。これから高IFジャーナルに投稿予定の方にピッタリな内容です。喜怒哀楽を全部詰め込んだアクセプト体験記を、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

【B4後期~M1前期】実験中毒の日々

研究室に配属され、講義からようやく解放された。せっかく理系学部に入ったのに配属前はほとんど実験をする機会がなく、あぁホンマつまらないわとイライラばかりが募っていたのだ。たまっていた鬱憤を晴らすため、B4では毎日ひたすら実験に励んだ。

私が大学に入ったのは、自らの手で真理を明らかにする喜びを得たかったから。実験をして何かデータが得られたとき、まだ世界の誰も知らないことを自分が知っているんだと思うと、ウキウキして夜も寝られなくなった。

私の場合、実験テーマを卒論の段階から自分で決めるように指導されていた。だから、指導と言うよりも「放置」と言ったほうが正確だろう。早いうちから自立心を養ってもらいたかったのか、あるいは単にお世話が面倒だったのか。いずれにせよ研究室生活初年度から自分のやりたいようにのびのびと実験させてもらっていたので、環境を与えてくれた先生には感謝しなくてはならない。ありがとうございます。

実験熱は、修士課程に入っても冷めなかった。衰えるどころかむしろ加速し、体力が限界を迎えてまぶたがぴくぴく震え出しても「ヤバい、何か気持ち良くなってきた…!」と麻薬中毒者の如く実験を手放さなかった。

私は実験をやっていると気持ち良くなってくる、かなり特殊な性癖の持ち主。ランナーがマラソン中に感じるランナーズハイと似たようなもので、実験を超長時間やり続けると同様の快感が得られる。その快楽に病みつきになり、ますます実験にのめりこんでいった。周囲からは理解されないが、本人は至って真剣だった。真面目な顔で、気持ち良くなっていたのだ。

もし実験を誰かからやらされていたら、ここまで没入することはなかったはず。研究を進めていたのは自分の意志であり、その原動力は、誰よりも早く真理を明らかにしたいと願う純粋な知的好奇心だった。実験をすればするほど結果が出て、ますます楽しくなって更に実験を重ねる好循環。

膨大な量のデータを整理して指導教員に見せたとき、先生からの指摘によって、いつの間にかすごい発見をしていたことを教えられた。共同研究先の先生ともディスカッションを重ね、IF40以上の超一流雑誌への掲載を目指して論文を書き始めていった。

【M1・8月~1月】論文執筆、半年の格闘

図表作成・配列検討

M1前期の中間報告を終え、いよいよ論文を書き始めた。まずは図表作成に着手したのだが、作るべき図の数を見てあやうく卒倒しかけた。

私の属する化学系コミュニティーでは、ひとつの論文に15〜20個程度の図表を載せるのが一般的だ。ところが、私が作成しようとしていた論文は、合計46個もの図表から成り立っていた。

膨大なアイテムを学術雑誌の規定通りに作成するのも大変だが、図表を整えた後の配列決めがなかなか厄介だった。自分の主張を最も効果的に伝えるには、どの順番で図表を並べるかが極めて重要となる。46の階乗(5.5×1057通り)から最適解を探さねばならなかった。

作成した図表を印刷し、一枚ずつハサミでくり抜き、物理的に並べ替えられるようにした。あーでもない、こーでもないと唸り続けること2週間、遂に納得のいく配列を編み出した。

本文作成

図表作成終了後、いよいよ本題の論文作成へ。まずは定石通り結論から作り、主張の軸を確固たるものにしておいた。結論を最後に回すとアピールポイントがブレてしまう恐れがあるため、先に着地点を明確にしておくのだ。

次に本編を作成した。考察や英語表現でしばしば手間取りはしたものの、基本は以下の順番に書いていく。

  1. 図表から読み取れること
  2. 考察 (独自論の展開)
  3. 先行研究と比べてどうなのか

図表の並べ替えと違って、本文作成ではあまり苦労しなかった。日々ブログを書き綴っているおかげかもしれない。ブログは書き方が執筆者の裁量に100%委ねられているが、科学論文はお作法がほぼ決まっているから、論文のほうが何倍も書きやすかった。とはいえ、ブログと違い、論文中では議論を厳密かつ慎重に進めていく必要がある。もしかしたら私の研究をきっかけに新たな学問分野が花開く可能性だってあるわけだから、原点たる論文に間違いがあってはならない。

本編作成後、アブストラクトとイントロダクションを書き始めた。論文作成で最も大変だったのは、この2つだったと思う。アブストやイントロでつまらないと思われたら、ディスカッションパートにまで目を通してもらえないままリジェクトされてしまうから、本編以上に要旨や導入の完成度を高めておかねばならない。

自分なりにアブストを完成させて指導教員に見せてみると、10秒ほどの沈黙ののち「もう一度書き直してみよっか^ ^」と最高のスマイルで死刑宣告が下った。どうやら、私の書いたアブストは、一般的な論文としては及第点だが、最高峰の雑誌に載せるには漠然としすぎていたらしい。

指導教員からは以下のアドバイスを頂いた。

  • 自分の研究例の新規性について、もっと明確に打ち出すこと
  • 論文が何を提言し、科学コミュニティーをどう変えるものなのかアピールすること

書いては突き返され、また書いてはやり直しのヘビーローテーション。AKB48の選抜メンバーに入れるぐらい、多くの修正を受けた気がする。1か月ほどかけて及第点の文章がようやく出来上がった。

論文中で最も短いパートに最も長い時間がかかるとは、誰も教えてくれなかった。

論文校正から投稿へ

完成した論文を雑誌会社のテンプレートに挿入し、英文を校正会社に送って校正をかけた。純ジャパの私が書いた英文などネイティブからすれば噴飯ものだろう。ネイティブに自然な表現へ直してもらってから雑誌会社に送ることにした。私が修士だった頃はまだ生成AIがなく、文章校正のために外部へお金を払っていたのだ。

校正にはもうひとつメリットがある。校正会社が発行する校正済み証明書のおかげで、英語力を理由にエディターやレビュアーからリジェクトされにくくなるのだ。

校正料は、非常に高い。私の論文は20万円かかった。しかし内容以前に英語表現でリジェクトされるリスクを潰せるのは大きい。論文執筆者が名の知れていないアジア人だと、英語ネイティブから舐められがちだ。お金を払って英語ドーピングを実行し、万全の態勢を整えた上で論文を投稿した。

ちなみに、論文校正料を支払ってくれたのは共同研究者の方だった。研究費から20万円もの大金を出していただき、感謝してもしきれない。

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