仕事内容とキャリア観
面接官B業務の話をしましょう。今回の募集では材料合成をやっていただくことになりますが、合成の経験はありますか?



御社の求人に記されているような材料の合成は、やったことがありません。しかし、学生時代には模擬電池作製のため有機電解液を日常的に調製していましたし、電極にはリチウム箔や銅箔を使っておりましたので、扱いに気を使う材料のハンドリングには慣れています



現職では、どうですか?



現職では材料ではなく実電池を用いており、電池の試験をやっております。材料合成の技術は、入社後に磨いていきたいと思っております。



率直に聞きますが、材料合成をやってみたいと思いますか? かめさんにとっては、未経験の領域に飛び込むわけですが



ぜひやってみたいです
学部から博士まで材料系専攻に在籍していたこともあり、昔から材料に対して深い関心を持っています。これまでは完成した電池を評価する側にいましたが、今回の転職では自らの手で新規材料を作り出す側に回ることを志向しています。私が開発した材料を世界中の顧客に使っていただき、材料の力でこの世界を豊かにしていきたいです



ありがとうございます^ ^
長期的なキャリア像は、どう描いていらっしゃいますか?



入社直後はまず材料合成の経験を積み、御社の社員さまの技術レベルに追いつきたいです。私の強みは研究力ですので、研究面で力を発揮しつつ、三年を目途に、ひとつの研究テーマを自分で技術リードできる人材を目指します



五年後や十年後には、私も年次を重ねて中堅になっているでしょう。新卒社員やキャリア入社で若手社員が入ってくる頃には、自らの背中でチームをリードしながら、後輩の皆さんを立派な電池技術者に育てていく役割も担いたいです



ずいぶん長いスパンで考えていらっしゃいますね



はい。一社目こそ一年半で離れることになりますが、二社目となる御社では、腰を据えてじっくり研究に取り組み、できるだけ長く勤めさせていただきたいです



ひとつ確認ですが、数年後に出向や海外への技術営業等で本拠地を離れていただく可能性があります。大丈夫ですか?



紛争地域とカーボベルデ共和国以外なら地球のどこでも大丈夫です



さすがに紛争地域には送りませんので、どうかご安心ください



安心しました(カーボベルデは…?)
先ほど申し上げた通り、私にとってはどこに住むかより何をするかの方が大事ですので、勤務地は柔軟に対応できます。ただ、今は独身ですが、将来パートナーができて転勤時期の調整が必要になるタイミングが来るかもしれません。調整が必要になったときは、改めて相談させてください



もちろんです。遠慮なくおっしゃってください
日本の電池業界に勝ち目はあるか



少しスケールの大きな話をしましょうか。ご存じの通り、中国をはじめアジア勢が、ものすごい勢いで電池研究を進めています。本音ベースで伺いたいのですが、日本の電池業界に勝ち目はあると思いますか?



勝ち目は薄いかもしれませんが、勝てると信じてやるしかないと考えています



薄い、とまず認めるんですね



確かに勝ち筋は狭いですし、現実は直視すべきだと思っています。私が学生だった頃も、電池系の論文を開けば、著者の八割以上が中国人でした。博士課程でイギリスに留学したときも、滞在先のラボは中国人研究者ばかりで、欧州の方はごくわずかでした
研究の規模で殴り合う場合は、日本は相当厳しいのではないでしょうか



では、どこで勝つのでしょう?



材料です
電池は規模だけの勝負ではなく、いかに良い素材を作るかが大切です。良い素材さえ見つかれば、特許で参入障壁を築けます。どれだけ早く障壁を作り、どこまで市場を広範に押さえられるかが肝となるでしょう
真正面からの競争を避けつつ、ブルーオーシャンを見つけて独占を狙えば、まだまだ勝てると考えております



なるほどねぇ
ただ、良い素材を見つけること自体、人手のかかる仕事でしょう。人数の差は、最終的に効いてきませんか?



確かに、これまでならそうだったと思います。けれども、その前提は崩れつつあります
生成AIを筆頭に、科学技術の発展で、少人数でも莫大な量のアウトプットを出せる時代になりました。私自身、博士課程と現職でAIを駆使し、従来の数パーセント程度の時間で従来と同じ量の仕事を処理できるようになっています。もちろん個人では大国に敵いませんが、社員全員がAIを使って創意工夫を重ねれば、まだギリギリ何とかなるかもしれません



日本には世界的な電池メーカーやOEMが集積しており、御社をはじめ素材メーカーも綺羅星のごとく沢山あります。R&D企業の集積密度は、世界的に見ても稀ではないでしょうか
ただ、積み重ねてきたものは、放っておけば風化してしまいます。技術を持った方が引退すれば、知見ごと失われてしまいます。跡形もなく消える前に、次の世代へバトンタッチしなければなりません



前職でモビリティー業界に身を置いた経緯もあり、電池を使う側の人々を材料の力で助けたいと願っております。もし良い素材を作れたら、使い手側へ良い電池を用意してあげられますし、良い電池は走行性能の高さや充電時間の短さに、つまりは商品性の高さへとつながるでしょう。言うまでもなく、電動車はお客さまの生活を彩る存在でもあります
私は、自分の頑張りを通じ、自分を取り巻く人たちを幸せにしたいです。御社で次世代材料の開発に挑み、技術とこの豊かな日本を後世へ継承したいと考えております
志望度



さて、そろそろお時間ですが、最後にひとつお聞きしたいことがあります
かめさんは電気化学がご専攻で、北大の博士課程を飛び級で修了されたんですよね。ぜひ弊社に来てもらいたいんですが…… 他社の選考状況はいかがですか?



現在、自動車関連メーカーと電池メーカーから一社ずつ内定をいただいています



え、二社だけ?



内定をいただいているのは二社ですが、他にも複数の材料メーカーさんの最終面接を控えています



あ~、そうなんですねぇ… では、もしかしたら弊社に来ていただけないかもしれない、ということですね。ちなみに、内定が出ているメーカーさんと弊社では、志望度は何対何ですか?



気持ちは、99対1で御社側に傾いています



えっ、そうなんですか!



内定をいただいたメーカーさんからは、素材から最終製品まで一気通貫で仕上げるポジションのオファーを受けています。もちろんそれは大変魅力的なポジションですし、仮に私がその会社に行ったとしても、やりたいことはある程度実現できるはずです



しかし私は、素材から製品まで満遍なく携わるよりも、特定の領域に特化して、深くのめり込みたいんです。つまり、研究がやりたいのです。研究に集中できる環境はどこだと考えたとき、材料メーカーである御社が最も転職先に相応しいと感じております



広く薄くよりも、狭く深く、ということですか



おっしゃる通りです
学生時代に研究に携わるなかで、狭く・深く潜り込むのが得意だと感じました。実際、探求は得意です。学生時代には、趣味で始めたランニングをマラソンで2時間42分を記録するレベルまで極めておりますし、研究では博士課程を一年飛び級して修了できるほどの成果を挙げておりますので



ですよねぇ。でも、現職では強みを発揮できる研究をやれていないんですよね?



はい
現職の量産開発では、広く薄く業務を回しています。自分なりに責任感を持って取り組んではいるものの、ひとつのテーマを深掘りする時間がなかなか取れていません。業務時間の9割を会議に費やす日もあることから、もう少し落ち着いて考えを深められる仕事に就きたいと願っております



学生時代と現職の経験を通じ、狭く・深く仕事していきたいと改めて感じました。私は、電池素材に関してトップクラスの知見と技術力を有する研究系エンジニアになりたいです。そして、自分の希望を最も的確に叶えられるのは、御社を置いて他にないと確信しています



よく分かりました
本日はありがとうございました。結果は追ってご連絡します



本日はどうもありがとうございました
では、失礼します











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