レース展開その1
0km~10km | 37分51秒 18’43”-19’00” |
10km~20km | 38分15秒 19’10”-19’03” |
20km~30km | 38分26秒 19’00”-19’26” |
0~10km 37分51秒
号砲から8秒でスタートラインを通過。前は団子状態。レースペースで進めるようになるまでに30秒ぐらいかかった。コースはいきなり急な下り坂。スタート直後の興奮も併せてついついペースが上がってしまう。「ゆっくり、ゆっくり」と自身に言い聞かせる。序盤の貯金は終盤の大減速を招く触媒になりかねない。ランニングウォッチを見ながらペース調整。減速し始めるのが遅れたせいで最初の1kmは3分34秒だった。
坂を下り終える直前、サブ40ペース近傍で走る5人の集団を発見。後方につかせてもらって助力を得る。一人よりも集団で走った方が楽。ピッチのリズムを作りやすく、おまけに風よけまでしてもらえて省エネルギーで走れる。ところが、この集団は平地になった途端にキロ4まで落ちた。もしかして、下り坂だから3’45″/kmぐらいで走っていたのかな。前を走るランナーが「今日はサブエガ目指して頑張りましょう!」「最後までキロ4で行けたらいいですね~」と言っているのが耳に入った。このグループについていってはダメだ。キロ4だとサブ40には全く及ばない。
3km過ぎに意を決して集団を追い抜く。50m前方に見える集団をめがけて走る。あそこがサブ40ペースのグループ。あの人たちの所まで追いつき、少しでも長く食らいついてサブ40したい所。ところが全く距離が縮まらない。迫っては開き、少し迫っては一段と開いていく。最初の1kmであの人たちに着いていっていれば… 後悔しても遅い。腹をくくり、最後まで単独で走り抜く決意を固めた。
最初の10kmは37分51秒。38分ペースでサブ40できるから予定通り。ペースの上げ下げを行った影響か、既に少し足へ疲労がたまっていた。まだ10kmしか走っていないのに大丈夫なのだろうか。心肺へ苦しさが皆無なのは良かった。「余裕、余裕」と自身へ言い聞かせる材料ができて。
10km~20km 38分15秒
200~300mほど前方に集団を見ながらのレース展開。目標めがけて進める楽しさがある反面、いくら頑張っても追いつけない絶望感も半端ではなかった。あそこについていかなきゃサブ40できない。それは分かっている。なのに距離が開いていく一方。直線で距離を縮めてやろうと決意した矢先、北からの突風が私の前進を拒む。「そう簡単にはサブ40させてやらないからな」と神様からいたずらされているみたい。自分はサブ40するために札幌から飛んできた。何の収穫もなしにすごすごと下がってたまるかってんだ。
孤独にひとり走っていた所、後ろから一人のランナー (Aさん)に追い抜かれた。Aさんに置いていかれたら今度こそサブ40のチャンスを失ってしまう。10m後方へそっとつかせてもらうことに。単独走でメンタルがぐったり疲弊していたから追走させてもらえて助かった。複数人での走行は元気になる。一人よりも断然楽。サブ40を目指す仲間の存在に発奮してたちまち活力を取り戻した。
一緒に3kmほど走った頃だろうか、急にAさんの顎が上がってきた。もしかしてちょっと疲れてきちゃった?ごめんね、ずっと引っ張らせ続けてしまって。今度は私が前に出て引っ張る番。助けてもらった分、ちゃんと恩返ししないと。それから3kmほど走って18kmを迎え、ふと気付いたら後ろで足音がしなくなっていた。振り返ったらAさんは後方50m。このまま大失速しなけりゃいいけれども。Aさんの姿は未来の私の姿。油断して足元をすくわれぬよう、いま一度気を引き締め直して巡航した。
20km~30km 38分26秒
中間点を1時間20分04秒で通過。まずまずのペースだ。想定より30秒ほど遅いけれども、向かい風のことを考えれば上出来だろう。同じペースで残り半分を走ればいい。最後に少しペースを上げられればサブ40できる。今までは北からの風へまともに向かって走っていた。25kmで折り返して以降、向かい風は背中を押す追い風へと変わる。サブ40ペースの出力も幾らか楽になるはず。足がキツい終盤は風の力を借りてどうにか凌ぎ切りたい。目標達成が見えてきて気分が高ぶってきた。行けるぞ。絶対に大丈夫。夢が現実になる瞬間がすぐそこまで迫っているんだ。
折り返していざ神風の吹く後半区間へ。ここからフィニッシュ地点まで飛ぶように駆け抜けてやる。前進を阻まれていたのと同じ力での助けを期待した。背中を撫でる程度のそよ風しか吹かず、「これだけ?マジかよ…」とガックリ肩を落とす。25kmの手前から足がかなりキツくなってきた。向かい風に体力を削り取られていた。もはやいつ痙攣し始めてもおかしくない。少しでも強い追い風が必要だったが、神風はどうやらほとんど見込めないらしい。
26kmからはラップタイムが3’55″/kmを下回り始めた。前半と同じ体感強度で走っているつもりでも疲労でペースが落ちていく。意識してペースを上げねばサブ40ペースが出ない。単独走してきたツケがここで回ってきた。加えて、サブ40ペースを出すと数百メートルごとに足へピクッと痙攣の予兆が。その都度、慌てて減速して筋肉への負荷を和らげる。一度痙攣し始めたら止まらない。痙攣は大失速のもと。サブ40ペースがキロ5に、キロ7に、そして歩行までズルズルと下がっていく。痙攣だけはしてはならない。速度を上げるに上げられない状況だ。
サブ40達成にあたって最大の試練が訪れた。諦めるか?諦めた方がずっと楽だぞ。白旗を掲げた瞬間からこんな辛い時間から解き放たれる。温かい部屋に帰って豚汁をすすり、同じくリタイアした同志と一緒に「今回は残念でしたねぇ」と健闘を称えあえる。これまで本当によく頑張ったよ。今回はサブ40は無理かもしれないけれども、また練習して次の機会に挑めばいいじゃないか…
そう簡単に諦められるわけがないよね。
この一年間、ずっとサブ40だけを目指して頑張ってきた。練習する前から憂鬱になるほどのメニューを立て、喉から血の味がするほど追い込んできた。自分を強引に練習へと駆り立ててきた。一時はランニングが嫌いになりかけてしまったこともあった。どんな練習にも怖気づかず耐え抜き、夢を現実に変えようとしてきたあの日々は何だったんだ。飲み会の二次会を断ってまで体調管理を優先し、ありとあらゆる娯楽を断ってきたこれまでの自分自身を愚弄するつもりか。流してきた大粒の汗はただの飾りだったのか。一瞬でもサブ40を諦めるなんてバカじゃないのか。諦めんなよ。絶対に諦めるな。脚がちぎれてでも走り続けろ。なるべく速く走れ。一秒でも近くまでサブ40に肉薄しろ!
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