真駒内マラソンは自身の初マラソンの大会
今から六年前、北大の学部二年生だった2018年の11月に初マラソンへ挑みました。出場したのは作.AC真駒内マラソン。真駒内マラソンは、札幌市南区の真駒内公園と豊平川河川敷を舞台に繰り広げられる周回コース。高低差約50mの激しい坂を一周ごとに乗り越えねばなりません。案の定、30km以降は足が痙攣して悶絶寸前に。ふくらはぎやハムストリングスの激痛に耐えつつ、フラフラになって青息吐息で走り抜きました。記録は3時間10分46秒。42.2km走り切れた達成感から、蒼穹の青空へ何度もガッツポーズしたのを覚えています。
初マラソンから六年経った今日、再び真駒内マラソンへ出てきました。今年は学生ラストイヤー。初フルの思い出が詰まったこの大会へ出ずに学生生活を終えるのは何だか寂しくてエントリー。本命は2週間後の福知山マラソン。福知山では2時間40分切り (サブ40) を狙っています。福知山で好走するにはココで力を出し切ったらダメ。2週間後に最高のパフォーマンス状態を持ってこられるよう、真駒内マラソンを練習レースとして使うことに。起伏豊かな42.2kmのコースをペース走するつもりで出場を決意。目標タイムは2時間48分。終始余裕を持って走り切る作戦でした。
レース体験記
出走前
レース当日は朝5時に起床。本命レースではないからか、変な緊張感もなく、終始リラックスして準備を進められた。ストレッチポールで筋膜リリース。動的ストレッチで体中の血流を促進。フルマラソンに備え、通販で買った「answer600」を水に溶かして摂取。600kcalもの莫大なカロリーをごくごく飲んでエネルギー満タン。
7時前に家を出発。外はキンキンに冷え込んでいた。天気予報では摂氏1度。息をするたびに鼻や口から白い吐息がブワーッと出てくるほどの寒さ。歩道の水たまりは水面が凍っている。寒いなぁ。今日走るコースが凍結していなければ良いのだけれども。
地下鉄一日乗り放題きっぷ「ドニチカ」を購入。今日一日、地下鉄をどれだけ乗り回しても520円。家の最寄り駅からスタート最寄りの真駒内までは、普通に往復切符を買うよりもドニチカを買った方が安上がり。家と真駒内をただ往復するだけで乗り放題券の元を回収できる。ドニチカを買ったのは二週間ぶり。二週間前の日曜は、総合旅行業務取扱管理者試験を受けに澄川駅へ行くためにドニチカを買った。ドニチカを買うのは非日常的な日だけ。だから、ドニチカを買うだけで何だかワクワクしてくる。
地下鉄南北線で終点の真駒内駅へ。”地下鉄”と謳いつつも、南平岸から終点まではガッツリ地上区間を走行する。家の最寄り駅から終点まで駅数は十駅以上。八年間の北大生活を通じ、ほぼ全ての駅で下車して何かをやった。駅ひとつひとつに思い出が詰まっている。それだけ長く札幌で暮らしたということか。この街をあと半年で出るのかと思うと寂しくなる。ようやく札幌が好きになってきたばかりなのに…
駅からスタート会場の真駒内セキスイハイムスタジアムまでは歩いて移動。道のりは2.5km。バスも出ているが、歩いて向かえばウォーミングアップ代わりになってちょうど良い。寒い時は身体を動かし、体温をガンガン上げて暖をとる。動いている間は凍えずに済む。バスに乗ってしまえば体温上昇の機会を失ってしまう。
真駒内公園の紅葉シーズンはもう終わりかけていた。葉を一切まとっていない裸の木が多く、道の脇には枯葉が山のように積み上がっていた。北大構内はまだイチョウ並木で紅葉を楽しめる。平日週末の別を問わず、大勢の観光客でごった返している。同じ札幌市内でも、地域ごとにこれほどまでも見える景色が違う。札幌はデカい。わずか八年間では全域を知り尽くすことはできなかった。
25分ほどで目的地へと到着。スタジアム内の受付でゼッケンを受け取った。自分のラッキーナンバーは5番。じゅんちょうにごーるできる「15番」だなんてあまりに縁起が良い。今日は好走できる予感がする。少なくとも失速することは無いだろう。
天候は晴れ。気温は3 ℃。8時前の今はまだ寒い。スタートする9時頃にはもっと気温が上がって暑いぐらいになるだろう。マラソンは厚着よりも薄着で走る方が良い。薄着で寒いのは頑張って走れば気にならないが、厚着で暑いのは汗の大量分泌とミネラル喪失に繋がって足痙攣の元になる。手袋をはめないで走ることに決めた。上の服も半袖ではなくノースリーブにアームウォーマー。下は2XUのハーフタイツでいこう。万が一に備え、内側のポケットにエナジージェルを一個忍ばせておく。シューズは愛機のアディゼロジャパン8。今まで買ったシューズの中で一番走りやすく感じられる心強い相棒。2週間後の福知山でも同じ格好で走るはず。42km走る過程で体の状態がどう変わっていくか確認しておきたい。
スタート直前
スタート10分前から目標タイム別に整列開始。ターゲットペースの2時間50分切りはほぼ最前列。今までこんなに前へ並んだことがない。周りの人はみな私よりも速そう。大丈夫かな。もう少し後ろに並んだ方が良かったかな… 2週間後にサブ40を目指す以上、たかが2時間50分切りでビビっていたらいけない。ビビるな。覚悟を決めろ。集中しろ。大丈夫。これまでにキロ4で軽々と42km走り切られるだけの練習をやってきた。胸を張り、自信を持って余計なことを考えず淡々と走るだけでいい。
六年前にこの大会へ出場したとき、最前列に並ぶ人たちが超人に見えた。少なくとも自分と同じ人間には見えなかった。彼らは顔や脚が鹿のようにキュッと絞れていた。背中からは常人には発しえない気迫やオーラが醸し出されている。自分とあの人たちとは細胞レベルで何かが違う。周回コースで周回遅れにされた時なんて、自分を颯爽と追い抜いていく彼らの後ろ姿にただ見惚れるばかりだった。悔しいという感情すら湧かなかった。レベルが段違いなのだから抜かれて当然だろう、と。
あれから六年が経ち、今度は自分が超人と見られる側になった。まだまだ超人の端くれに過ぎないが、六年前の自分から見れば今の自分は超人の一味として映っているはず。まさか六年間でこんなに速く走れるようになるだなんて思っていなかった。フルをキロ4分半で走って足が攣りかけていた人間が、練習目的でキロ4分の42.2kmペース走へ挑戦するようになるだなんて。コツコツ練習を続けてきて本当に良かった。何事も続けていれば良いことが待っているものだな。
真駒内マラソンにはペースメーカーがつく。最速のぺーサーはキロ4分。今回はぺーサーの後ろへついていく作戦。単独走はしない。一人で走ると風よけがなくて疲れるから。各ペーサーの後ろには、同じようなペースで走るランナーがたくさん集まる。集団の内側で走ると他の人と足が絡まって転倒する可能性も。集団の最後方で走れば、集団の恩恵を最大限に享受しつつ安全に走れるだろう。スタート前に位置取りを微妙に変更。スタート後、集団最後方へ容易に陣取れる位置を確保した。
9時。号砲と同時に旅路へ駆け出した。ペーサーの後ろへ2時間50分切り目標の集団が形成された。迷わず最後方へ。ここから約2時間50分もの長い長いペースランニングが始まる。
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