学術論文執筆作業をやる気に頼らず進めるための4ステップ

北大と筑波の国研で電池材料を研究している化学系大学院生かめ (D2) です。研究室配属されてからの五年間で筆頭論文を六報出版しました。

論文を出版にこぎつける過程の大変さは身に染みております。私自身、論文関連でストレスをためすぎ、M2の8月に喀血してしまいました。論文を書くのは初っ端が一番大変。論文を書けるだけのやる気を掻き立てるのが難しいのです。論文執筆がなかなか進まないのは、やる気に頼って論文を書いているからなのかも。そこでこの記事では、六報の論文執筆経験を踏まえ、学術論文執筆作業をやる気に頼らず進める方法について解説します。

  • 論文執筆作業をより迅速に片づけてしまいたい方
  • 論文を書かなきゃいけないのを承知しつつも、やる気が出ずに作業へ取り掛かれない方

こうした方々にピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

思考回路の負担の軽い順に作業へ取り掛かろう!

モチベーションに頼らず論文執筆作業を進めるには、頭を使わずとも処理できる作業から手を付け片付けるのが効果的。考えなくてもこなせる単純作業から取り掛かり、最終的には何日も考え続ける思考プロセスへと至ります。物事を真剣に考えるのは大変。脳のCPUをフル活用せねばなりませんから。いきなり脳へ高い負荷をかける前に、まずは簡単な作業を着実にこなして脳を暖機しておくのがオススメ。脳への負荷を徐々に高めていけば脳が高負荷をすんなりと受容してくれます。

かめ

【やる気がなくてもできることからやる】がセオリー。単純作業→複雑な作業の順にこなせば挫折せずに済んでスムーズです♪

「やる気が出ないよ…」と仰る方は、初っ端からあまりに難しいことへと手を付けてしまったのが災いしたのかも。作業の思考レベルを落としましょう。思考レベルを落としてもこなせる作業から順に処理していけば大丈夫。以下では、私がやる気に頼らず論文を書くために用いている4ステップをご紹介します。論文執筆作業へ着手したり加速させたりする一助にしてください。

STEP1:論文のワードファイルを作成する

まずはワードファイルを作って保存します。ついでにフォルダも作っておきましょう。論文フォルダの中にワードファイルを入れ、デスクトップの中央へ配置しておいて下さい。ここまでに掛かった思考回路への負荷はほぼゼロ。論文とフォルダの名前を考えるぐらいしか頭を使っていません。ワードファイルとフォルダの二つを作っても合わせて一分以内で済むはず。どれだけ怠惰な学生さんでもコレぐらいならできますよね。

ところがどっこい、ファイルを作るだけの簡単な作業には途方もない威力があるのです。

千里の道も一歩より起こるといいます。長い道のりや大きな目標を成し遂げるには最初の一歩を踏み出さねば始まりません。ファイルがない状態とは、一歩も踏み出していない初期状態を指します。ファイルとフォルダを作った状態とは、論文脱稿に向けて一歩、いや二歩目を踏み出した活性化状態と言えるのです。我々は少なくとも”論文脱稿”という目標に対して着実に距離を縮められています。活性化状態は初期状態よりも残りの距離はほんの少ししか少なくないけれども、歩むべき距離が短くなったのには何の疑いもありません。脱稿に向けて「歩み始めた」のも重要な事実。物は静止摩擦力に打ち勝って動かし始めるのが最も大変。ひとたび動かし始められたら、あとは惰性だけで案外何とかなります。

STEP2:好きなBGMを流しながら図表を作成する

次に取り掛かるべきは図表作成。図表は論文の根幹にあたる重要なパーツだけれども、作るだけならデータをまとめるだけで済むからさほど頭を使わずともできるはず。

論文で何をウリとするかに応じてデータの見せ方を変えねばなりません。縦軸と横軸を入れ替えたり、あるいは複数のデータを二軸表示で同じグラフへ載せて傾向を見出したり。色々な組み合わせを試してみましょう。一番しっくりくる組み合わせが見つかるまで試行錯誤を続けるしかありません。単調な作業には空きが生じやすい傾向が。何かBGMでも聴きながら図表を作れば作業を楽しめることでしょう。私の場合はクラシック音楽のメドレーが好み。優雅な音楽で耳を喜ばせつつ、高周波数の音で脳を寛がせて発想の源泉をドバドバ溢れ出させています。

STEP3:図表を印刷し、考察のポイントを紙へ書き出す

ここからは少し頭を使っていきます。論文作成に思考作業は不可欠。自分で論文を書き上げなきゃいけない人間は思考作業からは逃れられません。とはいえ、いきなり難しいことを考えても挫折してしまうだけ。簡単な思考作業から取り掛かり、それから徐々に思考の抽象度を高めていくのがオススメです。

ステップ3では考察に手を付けます。ステップ2で作った図表をA4サイズのスライドへデカデカと貼り付け、それらを片面印刷し、それぞれの図表で考察すべきポイントを用紙の中へ直接書き込んでいって下さい。「なぜこうなったのかな?」「この箇所は他の文献と比べて少し傾向が違うんじゃないかな?」などと。今後の論文執筆に備え、今のうちに脳内へ考察のタネを蒔いておくのです。注目すべき箇所をメモしておくと、脳が潜在意識の中で考えを巡らしてくれます。考察パートの執筆へ取り掛かったときにはもう脳が答えを用意してくれているかもしれません。脳へ問題を意識させれば、脳がその問題を解こうと勝手に頑張ってくれます。やる気に頼らず、なるべく省エネルギーで論文執筆プロセスを乗り越えるには、脳味噌が持つ【無意識の力】を借りましょう。

STEP4:実験方法から論文を書き始める!

さて、ようやく論文執筆へと取り掛かります。論文を書くにあたってもこれまでと同様、思考回路への負荷が低い順に作業を進めていきましょう。

論文は5つのパートで構成されています。①要旨、②イントロ、③実験方法、④結果と考察、⑤結論の5つ。文量が短いのは①と⑤。記す文章は少なくて構わないけれども、言いたいことをコンパクトにまとめ切るには相当高度な思考が必要です。④結果と考察は文量も思考量もハード。イントロも同様、作るのに骨が折れます。

私のオススメは③実験方法からの作成。実験方法はデータを得るために用いた手法を淡々と記すだけのパート。文章もだいたいは定型文のため、思考回路への負荷を抑えて執筆が可能。作業が早い人なら、実験方法パートを1~2時間程度で書き上げられます。どれだけ書くのが遅い人でも2日もあればおおかた書き終えられるはず。実験方法パートを書き上げた勢いでもって残りのパートを執筆してしまいましょう。実験方法の次は④結果と考察がオススメ。その次は結論、その次はイントロ、最後に要旨を書けば論文の出来上がり。

やる気に頼らず論文を書ければ驚くほど早く論文を仕上げられる!

論文執筆は大変な作業。効果的なステップを踏むことでやる気に頼らずに進められます。ワードファイルの作成から始め、図表の作成、考察ポイントの書き出し、そして実験方法の執筆へと進むことで、作業の負担を軽減しつつ効率的に進めることが可能です。これらの方法を取り入れて、スムーズかつ迅速に論文を書き上げましょう。千里の道も一歩より起こる。努力の積み重ねが大きな成果をもたらすはずです。

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