データが揃ったらなるべく早く論文を書き始めるべき5つの理由

北大と国研で研究している化学系大学院生かめ (D2) です。B4からD2後期の間に7つの筆頭論文を出版しました。リジェクト経験は7回。同じ論文を四回連続でリジェクトされた経験も。7つの論文を書いてみて思ったのが、「論文はなるべく早く書き始めるべきだ」ということ。できるだけ早く、可能な限り早期に執筆を開始しなければなりません。

私がここまで口うるさく「早く書き始めろ」と言うのにはそれ相応の理由が。そこでこの記事では、データが揃ったらなるべく早く論文を書き始めるべき5つの理由を解説します。これから初めての論文執筆に挑戦する学生さんへピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

論文執筆のやる気が最高潮なのは、ひと通り実験を終えた直後だから

論文執筆は頭を酷使する知的労働。一つのデータを徹底的に考察し、思考過程が読者へ伝わるよう明瞭な文章を紡いでいくのです。論理に矛盾がないか、先行研究と比較してみてどうか、何か見落としているポイントはないか… 様々な観点から分析を重ね、それでようやく論文の骨子が出来上がります。講義レポートのように一筋縄には完成しません。書いては直し、書いてはまた直し、延々とブラッシュアップを重ねて良い論文が出来上がります。

正直、論文を書くのは非常に面倒です。七報の論文を書いた私でも結構面倒くさい。なんせ、論文を書くとヘトヘトになっちゃいますから。頭が「もうこれ以上は何も考えられませんっ!」とギブアップするまで考える日々を何週間も営みます。これほどまでに辛いことを学費を”払って”やっているだなんて信じられません。ドMなの、自分笑?学位が懸かっていなければ早々に執筆を投げ出していたでしょう。

過酷極まりない論文執筆ですが、執筆に対して唯一前向きになれる時間がほんの瞬間あります。それはいつか?実験をひと通り終えた直後です。データを出し切った直後だけは「成果を論文にまとめて他の人に見てもらいたいなぁ~ (*≧∀≦*)」とポジティヴな気持ちで執筆に臨めます。宝石のようにキラキラ輝いて見える実験成果を全世界へお披露目したい気持ちに。一日でも時間が経ったらもう遅い。「書くの面倒くさいなぁ…誰か代わりに書いてくれないかなぁ…」と論文作成が面倒になるでしょう。やる気のあるうちに論文執筆に着手しなければ何時まで経っても書き上げられません。なるべく早く書き始めましょう。皆さんのやる気が消えてなくなるその前に。

一報の論文を書き上げるのに3ヶ月以上必要だから

論文執筆は過酷であると同時に、ひどく時間がかかる難物でもあります。一報の論文をゼロから仕上げるのに、初めての執筆なら最低3か月、書き慣れていても1.5か月は要するのです。ヘタをすれば半年以上かかる場合も。私がインパクトファクター [IF] 24の学術雑誌にアクセプトされた筆頭論文は、実験データを揃えてから完成するまでに7か月かかりました。実験期間を含めれば一年以上もかかっています。ChatGPTを使えば数分で終わる講義レポートや、AIを使わずとも2時間程度で終わるブログ記事作成と比べれば時間スケールが桁違いです。

論文執筆に時間がかかればかかるほど、その論文が自身の業績リストへ加わるまでの時間が長引いてしまいます。それの何が困るか?フェローシップや学振DC、JASSO第一種奨学金返済免除などの申請時に業績が足らなくて困らせられるのです。少しでも多くの論文出版歴があった方がフェローシップや学振DCに採用されやすいでしょう。もっと早く業績を集められていたら業績の殴り合いで勝てたかもしれません。いま投稿中の論文が「アクセプト済み」だったら、JASSO奨学金が半額免除ではなく全額免除になる可能性もあります。査読中の論文は業績にカウントされません。査読中はノーカウント。業績に加算されるのは掲載が決定した論文のみ。

論文執筆へ取り掛かるのが早ければ早いほどアクセプトされる時期が早くなります。業績勝負へ挑む方は残り時間を意識し、なるべく早めに執筆へ着手しましょう。

データが過不足なく揃っているかは論文を書いてみるまで分からないから

論文執筆に取り掛かるのは、ひと通り実験を終えた後になるでしょう。データが揃い、やる気は最高潮。その勢いで一気呵成に書き上げて下さい。悲しいかな、データが本当に揃っているか/否かが分かるのは、原稿を書き上げた後なのです。原稿をまとめるために図表を作り、データについて考察していく過程で「アレっ、おかしいぞ。何かが足らない…」と気付かされる。データ不足に気付いた瞬間、両脇から冷や汗がドバドバ流れ落ちます笑。私は経験済み。頭を抱えて机に突っ伏し、唸り声をあげて身動きを取れなくなりました。

データ不足の際に取りうる選択肢は2つ。

  • データが揃っている範囲内で論拠不十分にならない程度の考察をする
  • 必要な追加実験を行って十分な論拠を収集する

①を選んだ場合、論文が早く仕上がるでしょう。論文のボリュームや完成度としては幾らか劣ったものになるのは否めません。②を選んだ場合、追加実験にあてた期間分だけ完成が遅れるでしょう。その分、論文の完成度は高まり、自分の中で満足のいく論文を書き上げられるのは間違いありません。論文をなるべく早く書き始めるべきなのは、時間に追われて①しか選べないという悲しい結末を迎えないようするため。時間がなくて追加実験を行えず、完成度不十分なまま投稿するのは悲しいです。残り時間が十分にあれば、①と②のどちらをも選べます。妥協しても構わないなら①を、自分の限界に挑戦してみたいなら②の道を選べるでしょう。未来の自分がより多くの選択肢を持てるようにするため、できるだけ早く動き始めるべき。一日早く動けば一日分、一週間早く動けば一週間分もの時間を未来の自分にプレゼントできますよ♪

一度の投稿でアクセプトされるとは限らないから

論文出版の厄介な所は、雑誌会社へ論文を投稿したからといって「必ず」アクセプトしてもらえるとは限らない所です。アクセプトは何ら保証されていません。何の容赦もなくリジェクトされます。雑誌編集者にリジェクトされる場合もあれば、査読者にリジェクトされる場合も。化学系の場合、標準的な国際雑誌 (IF<10) ではリジェクト率50%、IF10-20の雑誌ではリジェクト率80~90%、IF20以上の一流ジャーナルでは9割以上の論文がリジェクトされます。日の目を浴びて輝いている論文の陰には、出版されずに死骸となった原稿が星の数ほど転がっているのです。我々の記した論文もひょっとしたら死骸側の原稿になるかもしれません…

一度の査読に要する時間は、短く見積もっても1か月。雑誌の格が上がれば上がるほど査読期間は長引く傾向に。NatureやNatureの姉妹誌の場合、査読に半年以上かかるようです。半年かけた挙句リジェクトされたら、次の雑誌へまたゼロから査読を依頼せざるを得ない無慈悲な世界。論文執筆とその後の査読に時間がかかるのを見越し、なるべく早い時期から執筆へ取り掛かるべき。一報の論文が出版されるまでにかかる時間は皆さんが思っている以上に長いですからくれぐれもご注意を。

ひょっとしたら他グループに先を越される可能性があるから

研究業界には多くのプレイヤーがいます。近年、インド人とチャイナ人の流入によって、全学術領域において研究者の数が増加傾向に。これだけ多くの研究者が居ると、研究内容が他のグループと偶然被ってしまう場合があるのです。同じ時期に全く同じ実験を行い、同じような論文を書き、そして出版に至る… 相手チームに先を越されたら最悪です。研究の新規性が著しく損なわれてしまうからです。論文出版を諦める、または膨大な量の追加実験が必要になるでしょう。いずれにせよ、ひどく面倒なことになるのは間違いありません。

論文出版は時間との勝負。自分が発見した事実をなるべく早く論文にまとめ、他の人に先を越される前にスピーディーに出版までこぎつけてしまわねばなりません。先を越されたが最後、科学的事実の第一発見者は我々ではなくなります。おまけに論文を出版できなくなるかもしれないのです。早めに論文執筆へ着手すればトラブルを未然回避できるはず。皆さん自身の身を助けるため早め早めの執筆をオススメします。

最後に

データが揃ったらなるべく早く論文を書き始めるべき5つの理由は以上。これから論文執筆へ挑む学生さんの参考になれば幸いです。

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