海外のビッグジャーナルに論文がアクセプトされて良かったこと&良くなかったこと

北大と国研で研究をしている化学系大学院生かめ (D2)です。M2の10/20にインパクトファクター24のビッグジャーナルへ筆頭著者として論文が掲載されました。

この記事では、ビッグジャーナルにアクセプトされて良かったことと良くなかったことについて解説します。

  • 初めてのビッグジャーナル掲載を目論む若手研究者の皆さん
  • ハイグレードな雑誌への投稿を要求されている学部生&大学院生の皆さん

こうした方々にピッタリな内容なので是非最後までご覧ください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

【良かった事】身内からの評価はうなぎ上り。指導教員らは喜んでいた

良かったのは、自身の身内からの評価が上がったこと。ビッグジャーナルにアクセプトされたおかげでかなり上がったような印象。

ビッグジャーナルはアクセプトされる前までは、他の大学院生と同様、可もなく不可もなくといった評価。取り立てて褒めていただいたこともなく、かといって叱責されたこともなく。要は実力を認められていなかったのです。思考能力のない単調作業が得意な産業機械といった扱い。少なくとも研究仲間といった形では見られてはいませんでした。対等だなんてまずあり得ない。明確に下に見られていた印象。教員と院生との関係ならまぁ、対等じゃなくて当然なんですけれども、明らかに子供扱いされていて少々歯がゆい思いを味わいました。

論文執筆の過程で指導教員や共同研究者さんへ私の思考力の片鱗を見せつけました。”コイツはただの実験マシーンじゃない”と印象付けられたのです。意外に根性があるというのも見せられたかな、と。何度ダメ出しを食らおうとも「どこがおかしいんですか?!」と逆ギレしながら必死に喰らいついて行ったから。めでたく論文がアクセプトされて努力が成果となった。ソコで初めて褒められましたよ。「おめでとう、すごいね!」と満面の笑みで。

社会では成果を出したら認められますアクセプト以降、自分の意見を尊重して聴いてもらえる機会が増えた印象。ただでさえ放置系の指導 (←指導じゃないじゃん笑)だったのが完全放置系の指導になりました (←やっぱり指導じゃないじゃん笑)。私を信頼して研究の進行を100%任せて貰っている形。指導教員に限った話ではなく、共同研究者さんや研究室のボスからの信頼をも獲得できました。研究の打ち合わせやゼミ発表において「キミがそれだけ言うなら…」と納得して頂いたことが多々あります。

論文がたった一本アクセプトされただけで扱いがガラリと変わりました。ビッグジャーナルにアクセプトされる難しさを知っている人ならではの変わり様です。

良くなかった事

ビッグジャーナルにアクセプトされて良くなかったことは以下の三つ⇩

  • インパクトファクター24の雑誌なのに一年で3回しか引用されなかった
  • 周りのためにビッグジャーナルを狙ったけれども…
  • ビッグジャーナル病に罹った

以下で一つずつ解説していきます。

インパクトファクター24の雑誌なのに一年で3回しか引用されなかった

まず一つ目は引用数の少なさ。インパクトファクター (IF) 24の雑誌にアクセプトされたにもかかわらず、この一年で他の人から合計3回しか引用されていません。雑誌のIFは、論文が一年間に引用される回数の目安。IF10の雑誌なら年間10回、IF24の雑誌ならば年間24回引用されてもおかしくありません。けれども引用数はたったの3件。どんだけ注目されていないんだって話。論文のダウンロード回数は合計2000回ほど。2000回も読まれ、 (面白いな、引用しよう) と思ってくれたグループが3つしかないって寂しすぎます…

まぁ、私がまだまだひよっこの院生。科学コミュニティー内の信頼を勝ち取っていないというのは承知しております。『こいつは○○の分野の研究者なのだ』と未だ認められていないのです。それでも、それでもですよ。もうちょっと引用して下さっても良いようなものじゃありませんか。せめて年間8~10回ほど引用されていたら溜飲が下がったのに。3回だと流石に辛いです。

周りのためにビッグジャーナルを狙ったけれども…

私がビッグジャーナル掲載を狙ったのは自分のためじゃありません。後輩のため、指導教員のため、そして共同研究者さんのため。

そもそも私、自分が研究者に向いているとは全く思っていないんです。心配性、脳の持病持ち、猪突猛進な性格からして研究者には不向き。研究者にならないならわざわざ苦労してビッグジャーナルなど狙わなくてもいい。IF5でもIF24の雑誌でも論文の本数自体は同じ。ウチの専攻は英誌の筆頭論文を2報以上記せば博士号取得の権利を得られます。省エネでPh.D.を得ようと思うならば、アクセプトに多大なる労力を要するビッグジャーナルを狙うのは悪手。

そんなことなど百も承知。知っていながらビッグジャーナルへのアクセプトを狙いました。それは、ひとえに周囲を勇気づけるため。北大のイチ学生に過ぎない自分がビッグジャーナルにアクセプトされる姿を見、研究室の後輩が『オレらも頑張ればアクセプトされるんじゃないか』との希望を抱いて欲しかったのです。北大生だからって世界に対して卑屈に感じる必要は一切ありません。”自分たちにもチャンスはある。もうひと踏ん張りしてみよう!”とモチベーションの向上に繋げてもらいたかった。また、有名なジャーナルへアクセプトされた実績により、指導教員が大きな科研費を当てて研究室の環境を改善してくれることを願っていました。研究室メンバー全員に対するデスクトップやiPadの無償貸与、あわよくば私の使用している壊れた実験装置を新調してくれやしないかなぁ、と。

私の目論見はただの空想で終わりました。周りのやる気向上に繋がると思いきや、「あの人は特別だしな…」と頑張らない言い訳に利用されてしまいました。また、ビッグジャーナルを一本通したからって科研費に通りやすくなるわけではないようです。一本通るまでは偶然でもできる。毎年続けてビッグジャーナルに通して初めて科研費の採択確率が高まるのだそう。私に再びビッグジャーナルへ挑む気力が残っているか?いや、もうそんな気力は無いでしょう。先生がせっかく大型プロジェクトの申請書を書いて申請してもあえなく不採択。研究環境の改善はどうやら研究室所属ラストイヤーの今年も見込めなさそうです。

『残念』、この一言に尽きる。周りのために頑張るんじゃなかった。自分がいくら頑張っても報われない環境に居ることにもっと早く気付くべきでした。

先生がビッグジャーナル病に罹った

前述のように、私は周りの為にビッグジャーナルへのアクセプトを狙っていました。少しでも周りを勇気づけられれば、少しでも研究環境を良くできればと願って日々奮闘していたのです。ところが何故か、自分よりも指導教員らの方がビッグジャーナルへこだわり始めるように。おそらく欲が生じたのでしょう。いたって普通の大したことのないデータでもって「とりあえずあの高IFジャーナルへ投稿してみよう」と仰るようになったのです。

論文がビッグジャーナルへと掲載される所以は、大したことの”ある”データを載せているから。実験量や文章の巧みさでは誤魔化し切れない『新規性』が求められるのがビッグジャーナル。図表や考察にいくら手を入れて見せ方を変えてみようとも、大したことの”ない”データが大したことの”ある”データに変わることはない。大したことのないデータしか得られない研究を行った以上、ビッグジャーナルへの投稿を諦め、標準的な雑誌への投稿を目指すべきなのです。自分のデータに面白味がないのは実験者の自分がよく分かっています。そりゃもちろん、ビッグジャーナルへ運良く通れば嬉しいに違いないけれども、通る可能性が極めて低いデータをビッグジャーナルへ載せるのにこだわる理由がありません。

標準的な雑誌にいち早くアクセプトされ、研究成果を世に公開したい。論文がアクセプトされるのが早ければ早いほど、論文をより長期間に渡って他の研究者に役立ててもらえるでしょう。ビッグジャーナルへこだわってしまったらアクセプトまで年単位の時間がかかります。標準的な雑誌の2倍以上、時には10倍もの時間を要するのです。論文公開まであまり時間をかけたくない。ビッグジャーナルへ挑戦すると時間が溶かされます。

”研究者になりたい!”という気持ちが私にはありません。論文を書けば書くほど己の研究者適性の無さに絶望させられるばかり。既にビッグジャーナルへ論文を一報通し、指導教員にはこれまで育てていただいたことへの恩返しを済ませたつもり。である以上、私がビッグジャーナルへの投稿にこだわらなきゃいけない理由をもはや思い付けません。先述のように、ビッグジャーナルはアクセプトされても事態は何も変わりませんでした。今の私には、ビックジャーナルへの投稿はただの時間の無駄にしか思えないのです。

早く博士修了要件を満たして楽になってしまいたい。ビッグジャーナルにアクセプトされたからって私には何の得にもならない。かといって周りが得するわけでもない。科研費も通りやすくはならず、後輩がビッグジャーナルを目指すようにもならなかったし。いったい先生はどうしてビッグジャーナルに投稿したがったのでしょう?本当に訳が分かりません。いくら考えても分からない…

最後に

ビッグジャーナルにアクセプトされて良かった事と良くなかった事は以上になります。

研究者志望の方にはビッグジャーナルにアクセプトされることが非常に重要になってきます。私をはじめ、研究者になるつもりのない方には払った労力に見合うリターンを得られません。ビッグジャーナルに挑むぐらいなら、標準的な雑誌へ二報通した方がマシ。博士課程の修了や奨学金返済免除業績の積み立てにつながります。私の体験談を参考とし、ビッグジャーナルに挑むか挑まないかをよくよくお考え下さい。皆さんの研究・研究室生活の更なる向上を願って本記事の締めくくりとします。

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