

最高の朝日に身体を温めてもらい、野宿で寝られなかった分の眠気が吹き飛んだ。無尽蔵のスタミナを取り戻し、いくらでも動けそうな感覚が戻ってきた。これから一日、アムステルダムを満喫するぞ。
チャッピーに調べさせたところ、一日乗り放題券が売られているそうだ。一日中動き回るならば、一回券や時間券を購入するより一日乗車券を買う方がコスパが良いのだとか。初めて訪れる街だし、乗り物の乗り間違えもするかもしれないし、乗り放題券にしておくのが無難だろう。
一日乗車券は€10(1900円弱)。アムス中央駅に戻って、交通機関の券売機を探した。駅の北口に数か所、機械があり、近くに物乞いがたむろしていた。券売機を操作していると、物乞いがやってきて、「お金をくれ」と言ってきた。ヨーロッパには物乞いがたくさんいて、イチイチ相手にしていたらキリがない。無視して券売機を操作した。そうしたら背中ごしに”F*ck you!!”と叫ばれた。お前が死んだらいいと思うよ。
どうも券売機が壊れていたようで、三回連続で発券に失敗した。イライラが募って頭を掻きむしり、別の券売機に向かった。途中でさっきの物乞いがいたので、超至近距離で”F*ck you!!”をお返しした。相手は何でオレ…?とでも言わんばかりにキョトンとしていた。新しい券売機では、一発で発券に成功した。

チケットを買っている途中で尿意を催してきた。おしっこに行きたくなったのだ。ヨーロッパの街中にはトイレが少なく、美術館に行くまで我慢しなければなるまい。と思っていたら、WCの表示を見つけた。アムス中央駅にトイレがあった。
薄々予感していたとおり、トイレを使うのにも入場料ががかった。なんと、一回€1.1(200円)もした。仮に毎日ここを使ったら、年間7万円以上の出費になるのか。海外って、トイレだけですごい額のお金が飛んでいくんだな。留学でオックスフォードに住んでいたときは、中心街のショッピングモールに無料トイレがあって助かったが、アムスはそう易々と便意を発散させてくれないらしい。
入場口でトイレ代に顔をしかめつつ、クレジットカードで決済した。すると、何やら一枚チケットが発行された。次回のトイレ割引券である。次にこのチケットを読み込ませれば€0.5オフでトイレを使えるのだそう。やったね、ありがとうございます。もう使わないで済むよう、水分補給ペースには注意しようと心に誓った。


昨日、空港で食料調達場所の選択ミスで痛い目に遭い、使わなくていいお金を使ってしまった。もう同じ過ちは繰り返さない。飲食物は、大手スーパーのAlbert Heijnで買うと決めた。オランダの中ではここが一番安い。安いと言っても日本と比べりゃ高いけれども、オランダの中ではマシな方である。
昨日、成田を飛び立った時からまだ便が通っておらず、お腹の具合がやや悪い。胃腸の調子を整えるべくヨーグルトを買った。ヨーロッパでは気軽にたんぱく質を摂取するのが難しく、たんぱく質20g入りのイチゴ味ヨーグルトにした。
そのほか、店内焼き立てのおいしそうなチーズパンと、最高に健康的なオレオ入り巨大クッキーを購入した。三点で€7(1300円)程度。まぁ、許容範囲内である。


ヨーグルトを吸いながら、歩いて駅の表口へ。美術館のすぐ近くまで行けるとチャッピーが教えてくれたトラム2番に乗り込んだ。乗車方法が分からず小鹿のようにまごついていると、運転手のおばちゃんから「早くしてよ!」とオランダ語でキレられた。分からねぇから困ってんだろ。キレられても困るんだって。
後ろに並んでいた同世代のお姉さんが、券はこうやって使うのよとジェスチャーで教えてくれた。そうかそうかとマネてカードリーダーにタッチし、乗ることができた。お姉さんにお礼を言おうとしたのだが、彼女は颯爽と車両の奥まで歩いていってしまい、お礼を言えずじまいだった。
オランダの路面電車の運転手は、他の電車の運転手と無線でおしゃべりしている。業務上のやり取りには聞こえなくて、明らかにプライベートな感じで気楽に駄弁っていた。確かに、乗客としても安全に目的地に着きさえすればOKなので、日本みたいに黙って運転する必要もないよなぁと思った。オランダ人がおしゃべり好きなのか、日本が静かすぎるのか。海外旅行では日本を客観視できて面白い。

美術館は10時入館で予約した。下車したらまだ一時間ほど早く、寄り道して向かうことに。
美術館の近くにアンネ・フランクの家があった。ナチス軍の迫害から2年間逃れた家で、アンネの日記とか、当時アンネが隠れていた部屋とかの展示があるのだそう。入り口では観光客が大行列を作っていた。ここも予約入館制らしく、当日入場は叶わなかった。外からでは何も分からない。中に入って見学したかった。
アンネの家の外装と、アンネの家を見る観光客を眺め、美術館に行った。

9時40分ごろ、アムステルダム国立美術館に到着した。ダメもとで係の方に「10時からのチケットなんだけど、入れるかな」と尋ねたら、「入れるよ、ウェルカム!」と中に通された。聞いてみるものだな。
美術館は西洋画が多く飾られていた。西洋画は人物の絵が多く、景色を題材にしがちな日本画とは対照的である。どこを見ても人の顔が描いてあって、ちょっと気が休まらず、しんどかった。風景画を見ると、心が落ち着く。私は典型的な日本人なんだな。


オランダはゴッホとフェルメールの生誕地である。館内にはゴッホの自画像とフェルメールの牛乳を注ぐ女も飾られていた。残念ながら絵画の良し悪しを評価できる眼がなく、あ、有名な絵だ! ぐらいのリアクションしかできなかった。
オランダに行こうと思ったのは、フェルメールの真珠の耳飾りの少女を見るためである。真珠の耳飾りはどこだと、探したが、館内には見当たらなかった。
チャッピーに調べさせると、オランダ国内の別の美術館(マウリッツハイス美術館)にあるらしい。しかも折あしく、ちょうどいま大阪の中ノ島美術館で特別展示中なのだとか。もっと調べてからオランダに行けばよかったな。しかも、真珠の耳飾りの少女展は大行列で、何時間も並んだ挙句、作品を数秒チラッと見たら係の方に「はい、次の方~」とはがされるのだそう。それならアムスの美術館に置いてくれりゃいいのになぁ。。。
西洋画に疲弊し、見たかった作品は見られず、消化不良で美術館を後にした。


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