【海外旅行記#3】なぜ、人は空港の中を徘徊するのか

出発間際に荷造りしていないことに気づき、大急ぎでリュックサックに必要物を詰め込んだ。時間に余裕を持って悠々と空港に着くつもりが、ドタバタの出立劇となった。きちきちのスケジュールを組んでいなくて良かったと思わなければならない。

アパートからJR駅までは3kmある。歩けば30分ほどで、バスを使えば10分で着く。非常手段のほふく前進なら3時間かかる。まだ薄暗い中の出発だったので、バスは運航していなかった。仕方なくほふく前進での移動を考えた。荷造りで時間が押している以上、遊んでいるヒマはなく、早歩きで駅に向かった。

転職前まで広島に居たが、朝5時台の電車はガラガラだった。ひと車両に1人か2人いるかどうかといったところで、座席が全部埋まるなど夢のまた夢である。その点、関東は広島と違う。朝5時台でも多くの乗客がいる。席に座れないどころか、乗客同士で押しくらまんじゅうになる。こんなにプレスされたらもみじ饅頭になりかねない。にしき堂への出荷は勘弁してくれ、私はオランダに行きたいのだ。

JRを上野で降り、京成電鉄に乗り換えた。上野から京成高砂経由で成田空港を目指す。京成の方はガラガラだった。おかげでちゃんと息ができた。満員電車は苦しくてたまらない。関東は人が多すぎるので、もうすこし西日本に住んだ方がいいと思う。

皆さん、広島はオススメですよ。関西で流行りのジャパニーズピッツァと違い、麺が入った真正お好み焼きを食べられます。街中を川が流れていて、公園がたくさんあり、実に自然豊かです。お酒の産地で、日本酒もウィスキーも美味しいです。ぜひ広島に引っ越してください、と関東に転職した私が行っても仕方がないか。

京成本線に乗っていると、スーツケースをひいて乗るお客さんが目立つ。皆、いったいどこへ行くつもりなのだろう。海外旅ならバックパック1個で十分なはずだし、家出でもしてきたのか。あるいは亡命するのかもしれない。税金、高いですからね。一緒にタックスヘイブンに行きましょう。

成田空港第一ターミナルに到着し、エスカレーターで出発階を目指した。外貨両替ATMを見つけたが、GPAが必要なようで遠慮した。

私は博士課程を一年飛び級修了したけれども、講義は地を這うような成績だった。歩いているけど実は宙に浮いているらしいドラえもんと同じぐらいの低空飛行ぶりだった。研究に熱中しすぎて、講義課題をやるのをつい忘れがちになったのだ。

ある講義なんか、レポートを一個出すのを忘れて最低評価を食らった。レポートを書くまでは頑張ったのだが、出す気力が湧かなかった。外貨入手にGPAが必要だと知り、学生時代にもうちょっと頑張っておけばよかったかなと唇を噛んだ。

京成乗車中に調べたところ、最近の欧州旅行に現地通貨は基本不要らしい。スーパーもレストランもほとんどクレジットカード決済で回っている。そのため、日本から海外へは現地通貨の用意なしで向かってOKなのだとか。ほらみろ、だからGPAなんかいらないんだよ。学生時代の私は正しかった。

意気揚々と出発ロビーに上がった。KLMオランダ航空の表示を探すが、見当たらない。チャッピーに聞いてみると、気付いた私は随分**筋がいい**そうだ。自重でも細々と筋トレを続けてきてよかったな、報われたと思った。成田T3は北ウイングと南ウイングに分かれていて、KLMは北ウイングで手続きをする。

南ウイングから北ウイングまで500mほど歩いた。道中、海外遠征に行くとみられる高校の部活生が、後ろでわいわい騒ぎながらついてきた。高校生で海外って、羨ましいな。自分なんて、広島から瀬戸大橋を渡って香川へ海外遠征するぐらいだったもんな。多感な時期に海外を眺めれば、だいぶ価値観が豊かになる気がするが、どうなのだろうか。

KLMカウンターに行ったら、窓口のおっさんに「あっちに行け」と手で追い払われた。一応私も乗客だぞと憤慨したら、チェックイン機で手続きしろとの意味だった。チ ェ ッ ク イ ン 機。

おお、これがチェックイン機か。プリクラみたいなチャラい顔つきだね、君は。KLMのボタンを押し、パスポートをかざすと、唸り声をあげてバーコード付き用紙が出てきた。これが、私の搭乗券である。この紙が私をアムスに運んでくれる。なんか薄くて心もとないな。大丈夫なのだろうか。もう一枚発券して分厚くしてやろうか。

座席周りを確認すると、隣席のステータスは空きになっていた。良かった、両肘置きを占拠できるぞ。イギリス留学に向かう便では隣に図々しい黒人が座り、肘置きを奪われ窮屈な思いをしたから、今回は快適に移動できそうで安心した。

出発までまだ時間があり、ヒマつぶしに展望デッキを歩いた。成田は絶好の旅行日和。心のきれいな人には青空が見えると言わんばかりの曇天である。この時期らしく、蒸し暑かった。ハエやユスリカなど小さな虫も飛んでいて、無視してもたかってきて、嫌になって屋内にこもった。

展望デッキからは色々な航空会社の機材を眺められた。羽田では見られない色鮮やかな便が多く、これから海外に行くのだという非日常感が否応なしに引き立てられた。搭乗予定のKLM便は確認できず、搭乗時のお楽しみに取っておくことにした。

出発2時間前に保安検査へ向かった。普段から街中を徘徊しているだけに、穴という穴を念入りに隅々まで検査していただいた。幸か不幸か問題はなく、「異常ありません」と変質者の烙印を押していただいた、ありがとうございます。

出国手続きもアッサリとしていた。電子ゲートにパスポートを置き、カメラ目線で最高のスマイルを送る。なんか、ちゃんと読み取れなかったみたいで、再検査となった。唇の端が裂けんばかりの笑顔を送ったら、ブーッ、ブーッ、と大音量で警告された。係の方から「ちゃんと真顔で映ってください」と言われた。指示通りにしたら3秒でゲートが開いた。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

カテゴリー

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次