ウルトラマラソンは、42.195kmのフルマラソンの2倍以上となる100kmを走破する究極の持久競技。この距離を10時間以内で完走する【サブ10】という目標は、多くのウルトラランナーが抱く大きな挑戦の一つとなっています。
こんにちは。馬術競技と研究からマラソンに転向した、マラソン自己ベスト2時間42分の化学系大学院生かめ (D2)です。2022年12月18日、沖縄100Kウルトラマラソンにて100kmを9時間1分で完走しました。
この記事では、サブ10達成に向けて実践した直近4ヶ月間の練習内容について解説します。一般的なウルトラマラソン練習では、極端な長距離走や高強度インターバルトレーニングが重視されがちです。しかし私は、時間管理とジョグペースを基本としたトレーニング方法で、効率的かつ持続可能な練習を実現しました。
ここで紹介する練習方法は、以下のような方々に特に参考になると考えています:
- 怪我なく継続的にトレーニングを積みたい方
- サブ10やサブ9を目指すランナーの方
- ウルトラマラソンでのタイムアップを目指す方
- 長距離走の練習方法を見直したい方
それでは早速始めていきます!
週間トレーニングスケジュール
- 月曜日:完全休養
- 火曜日:60〜80分ジョグ + 100m橋ダッシュ3〜5本 + 上半身筋トレ
- 水曜日:80〜100分ジョグ
- 木曜日:120〜150分ジョグ
- 金曜日:完全休養
- 土曜日:60〜100分ジョグ + 100m橋ダッシュ3〜5本 + 上半身筋トレ
- 日曜日:150〜180分ロング走 または 起伏走
練習は1週間を一つのサイクルとして設定し、4ヶ月間継続して実施しました。月曜日と金曜日は完全休養日とし、火曜日は60〜80分のジョグに加えて100m橋ダッシュ3〜5本と上半身筋トレを行いました。水曜日は80〜100分のジョグ、木曜日は120〜150分のジョグを実施。土曜日は火曜日と同様のメニューをこなし、日曜日は150〜180分のロング走または起伏走を行いました。
トレーニング方法の特徴
私の練習プログラムには、2つの大きな特徴があります。まず一つ目は、走行距離ではなく「時間」による負荷管理を行ったことです。二つ目は、大半の練習を「ジョグペース」で実施したことです。この2つの特徴には、それぞれ明確な意図がありました。
時間ベースの練習管理について
走行距離ではなく時間で練習を管理することには、大きな利点がありました。体調に応じたペース調整が容易になり、オーバーワークを防止できます。また、練習に対する心理的ハードルも低減されました。特に重要だったのは、「どうせ○○分走らないと練習が終わらない」という意識が自然と芽生え、必要以上にペースを上げて走ることを防げた点。距離設定の場合、無意識のうちにペースが上がりがち。時間ベースでの練習設定ならば、その日の体調に合わせて適切なペース配分が可能となるでしょう。
平日の基礎練習は60〜150分、週末のロング走は150〜180分を基本としました。体調不良時は予定より短縮し、コンディションが良好な場合でも設定時間を超えないよう注意を払いました。
ジョグベースのトレーニングについて
日々の練習で最も重視したのが、ジョグペースでの走行です。4’50″〜5’05″/kmという一定のペース帯を基本とし、体調良好時は4’45″/km程度まで、疲労時は5’15″/km程度まで柔軟に調整しました。実施環境はアスファルト路面を基本とし、全ての練習を朝食前に行うことで脂肪燃焼を促進しました。
ランニングウォッチは時間確認のみに使用し、自動ラップ音はオフにしました。これは、頻繁なペース確認による精神的な縛りを避けるためです。ただし、練習終了時間のアラートは設定し、オーバーワークを防ぎました。
実践した主要トレーニング
橋ダッシュトレーニング
ジョグ練習後に実施する100mの橋ダッシュは、約10度の勾配を利用した重要なトレーニングでした。3〜5本を基本とし、ピッチの向上と走行フォームの改善を目指しました。地面からの反発力を効果的に活用することで、足部の筋肉の弾力性も向上しました。
このトレーニングは即効性はありませんでしたが、約3ヶ月の継続により、最大出力の向上とフォームの安定化、特にふくらはぎの柔軟性向上という形で効果が表れました。これにより、長距離走行時の怪我予防にも大きく貢献しました。
ロング走トレーニング
ロング走は4’45″〜5’05″/kmのペースで実施し、原則として給水・補給なしで行いました。時間設定は段階的に増加させ、レース4ヶ月前は120分から始め、4〜2.5ヶ月前は150分、2.5〜1ヶ月前は180分と延長していきました。
特筆すべきは、レース6週間前の週末に実施した連続トレーニングです。金曜日に120分(約24km)、土曜日に150分(約31km)、日曜日に195分(約40km)という高負荷の練習を成功させました。ただし、50km以上の練習は回復に時間がかかるため、あえて実施しませんでした。
起伏走トレーニング
4ヶ月間で計4回実施した起伏走は、最大斜度25度、平均斜度7〜8度という本番以上に過酷なコースで行いました。上り坂では心肺機能と精神面の強化を図り、下り坂ではペースコントロールと衝撃吸収フォームの確立に注力しました。特に下り坂では、背筋を意識した制動により、前腿への負荷を軽減する技術を習得しました。
補完トレーニング
上半身の筋力維持のため、腕立て伏せと懸垂を定期的に実施しました。また、日常生活の中で階段昇降や一日一万歩のウォーキングを心がけ、低強度での持続的な足部強化を図りました。
これらのトレーニングを総合的に組み合わせることで、100kmという過酷な距離を安定して走破できる身体づくりを実現できました。最も重要なのは、各トレーニングの目的を明確に理解し、計画的に実施することです。怪我を予防しながら、着実に実力を向上させていく姿勢が、ウルトラマラソンでの成功につながったと考えています。
まとめ
4ヶ月間の練習を通じて、ウルトラマラソンにおける持続可能なトレーニング方法の重要性を実感しました。特に以下の3点が、サブ10達成の鍵となりました↓
- 時間ベースの負荷管理:体調に応じた柔軟な調整を可能にし、オーバートレーニングを防ぎながら着実な積み上げを実現しました。
- ジョグペースを基本とした練習構成:無理のない強度設定により、怪我を防ぎながら効果的な持久力向上を達成できました。
- 計画的な補完トレーニング:橋ダッシュや筋力トレーニングなど、目的を明確にした補完トレーニングにより、総合的な走力向上を実現しました。
このトレーニング方法の最大の特徴は、極端な練習を避け、継続可能な負荷設定を重視した点です。100kmという距離は、一朝一夕には克服できません。しかし、明確な目的を持って計画的にトレーニングを積み重ねることで、必ず達成できる目標だと確信しています。
この記事が、ウルトラマラソンに挑戦する方々の練習計画立案の一助となれば幸いです。
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