【世界道草紀行#19】なぜ、人は冷凍ピザをかじるのか

大学に入った19歳のころから行きたかったサグラダ・ファミリアへ遂に行けた。9年越しに悲願を達成して胸がいっぱいになった。いっそ、もう日本に帰ってもいいんじゃないかというほど満ち足りた気分になった。

サグラダ・ファミリアは、ガウディが亡くなってから何十年も建設され続けている。完成まで、もうあと数年。無事に出来上がってほしい。

スペイン人のことだから、サグラダ・ファミリアに満足せず、第二・第三のサグラダを建てるかもしれない。せっかくだから日本にも建ててくれないか。琵琶湖の真ん中あたりに造って世界を驚かせてもらいたい。

ホステルにチェックインすべく、行動を再開した。大通を南に進んで、今日から4泊する宿に向けて動き出した。

バルサはちょうど正午だった。進行方向の真正面から太陽が照りつけ、熱くてたまらない。松岡修造から「まだやれる、できる!」と激を飛ばされるぐらい暑苦しい。だが、湿り気がないぶんカラッとしていて、どちらかというとドライな修造といった感じであった。リュックの当たる背中だけ汗をかいた。

街中を歩いていると、たくさんの日本車を見かけた。最も多く見たのはトヨタで、次に日産とホンダとマツダが同じぐらいだった。広島県出身の私としては鼻高々である。マツダは来年の冬、CX-5のハイブリッド版を出すらしいですよ。スペインの皆さん、ぜひ買ってください。性能は、たぶん良いと思います。たぶん。

バルサの前に訪れたアムスでもそうだったのだが、街を走るタクシーはほぼ全てトヨタ製である。右ハンドルのプリウスかレクサスがお客さんを載せてビュンビュン走っている。燃費が良く、長く走っても壊れないから、日本車は欧州でも大活躍である。アムスではBEV車をよく見かけたが、バルサではほとんど見なかった。充電インフラがまだ整備されていないからなのか、暑くて電池が劣化しやすいゆえBEVが流行らないのか。

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Unite Hostel Barcelona

くるま事情に思いを巡らせつつ街を徘徊した。2時間歩いたが着きそうな気配がせず、チャッピーに位置情報を添えて泣きついた。「地図を見ずにここまで来れたのは、相当**筋がいい**」と褒めていただいた、ありがとうございます。いや、褒めてもらわんでもいいのよ。ホステルに行きたいの。ホステルはどこ?

チャッピーに推論を重ねさせたところ、「もうあと少し」なのだとか。定量的な表現をお願いしたら、あと2kmと返ってきた。チャッピーの示すルートはグネグネ曲がりくねっていて、初見の私には筋を追えそうにない。「もうちょっと簡単なルートで頼む」「それなら4kmです」「分かったよ、もう…」

40分歩いてホステルに着いた。日影がなく、カンカン照りの太陽のもと歩きっぱなしでクタクタになった。

ホステルはバルセロナ屈指の好評価宿で、清潔感のある廉価な宿として旅行客に定評がある。外国人の言う”清潔感”はあまり信頼できないけれども、この宿は日本人の私から見てもキレイだった。清掃員さんが毎日隅々まで掃除しており、ここなら何日でも住めるかもと思うほどピカピカだった。

割り当てられた、8人部屋の上段ベッドに腰を落ち着けた。ああ、疲れた。サグラダの興奮は醒め、眠たくなってきたので、1時間だけシエスタした。

目が覚めたのは、3時間後の18時。1時間仮眠するつもりがぐっすり寝入っていて、おねんねタイムを圧倒的に満喫した。無人だった部屋では、3人グループのポーランド人がたむろしていて、私の方を物珍しそうに眺めていた。

「どこから来たんだ」
「ジャパンだ。オレの先祖は忍者だった」
「ニンジャ! 実はオレたち、大学の東洋文化専攻で、日本が大好きなんだ」
「そうなのか! 日本に行ったらぜひ広島に寄ってくれ。日本で一番美味しいお好み焼きを食べられる」
「お好み焼きって、なんだい?」
「ピザの上にキャベツと豚肉を載せ、麺とセットで味わうんだ」
「ファンタスティックだね」
「いいか、お好み焼きには必ず麵が入っているからな。ここテストに出るからよく覚えておけよ」
「麺が入っていないお好み焼きもあるのか?」
「んなもんねぇよ。それはピザだろ」
「確かにな笑。じゃあ、オレたちこれから出かけるから、また話そうぜ!」

お好み焼き麺入り論争終結には、草の根レベルでの運動が不可欠である。ポーランド人への啓蒙を通じて、本家広島のスタイルがデファクトスタンダードになってくれればいい。

お好み焼きについて熱く語ったらお腹がすいた。寝床から這い出して外に出ると、空がうっすら黄金色になっていた。

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何を食べるか検討を加速し、ピザを食べようと決まった。ホステル付近にもレストランはあったが、一枚€11(2000円)と手を出せなかった。ピザごときに2000円も払いたくない、それなら広島でお好み焼きを2枚食べた方がいい。

ホステルからほふく前進5分のところにスーパーがあり、そこではたくさんの冷凍ピザが売っていた。マルゲリータやモッツァレラといった定番なものから、海鮮を豊富に用いたペスカトーレなど珍しいものまでが壁一面にぎっしり並んでいた。こんなに選択肢が多いと選べないって。

あーでもない、こーでもないと10分も右往左往し、チーズとハムが載ったペペロンチーノみたいなピザにした。ついでに便秘解消のため、バナナと飲むヨーグルトも買った。これで900円もしなかった。やっぱりバルサは物価が安い。長期滞在にもってこいの街である。

スーパーにレンジでもあるかなと思って探したところ、見当たらなかった。店員さんに「レンジある?」と尋ねたら、「オレの家にはあるぞ、パナソニック製だ👍」と返ってきた。話にならなくてホステルに帰った。ホステルにもなかった。

仕方なく外のベンチに座り、常温解凍を試みた。30分待ってカチコチ状態を脱し、齧れなくはないぐらいの柔らかさになった。せっかくのピザだし、温めて食べたかったなと気を落としつつ齧った。味が、濃い。塩みたいな味がする。ソースがピリッと辛く、口内をヨーグルトで中和させながら齧り進めていった。

3/4食べたあたりで飽きた。もうこれ以上は食べられそうにない。左を見ると、ベンチにハトが二羽座り、ピザを物欲しそうな目で眺めていた。そうか、そんなに欲しいか、なら食べてくれ、と細かくちぎって渡した。ハトは「やったー!!」と言わんばかりに嬉々として生地をつつき始めた。もらったからには残さず食べろよ。残したら、お前を食うからな。

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