⑦学生実験の研磨で心を折られる
応マテの学生実験はB3から始まります。同じ学科の応用化学コースがB2から実験をしているのに対し、応マテはB3から悠々とスタートします。おかげで応マテの講義数には余裕があり、何かと暇だからということで、巷では「ヒマテ」なるあだ名が付けられているようです。
学生実験では、金属を固くしたり、溶かしたり、電気をかけて製錬したりと、材料工学らしい内容を一通り体験します。実験補助のTA(ティーチング・アシスタント)さんに助けてもらいながらデータを集めていくのですが、TAは大学院生で、研究室の内部事情に精通しています。どこのラボがどんな雰囲気なのか、実験中にそれとなく聞いておくと、研究室選びの参考になるはずです。
さて、学生実験の中でも応マテ生の心をへし折るのが金属の研磨。金属板をサンドペーパーでひたすらこすり、表面を滑らかに整えるという、原理は単純きわまりない作業です。なんですけれども、これが本当に難しい。自分ではきれいに磨けたつもりでも、指導役の先生に顕微鏡で確認してもらうと、たいてい「やり直し」と言われます。私も何度やってもやり直しになりました。
もう研磨なんか二度とするものかと心に誓い、研磨しなくてよさそうな研究室を選びました。私が扱う金属はリチウムですから、リチウムそのものを研磨することはありません。しかし、リチウムを析出させるための電極自体を丁寧に研磨しなければなりません。マイクロメートル単位の凸凹が実験結果に影響を及ぼしてしまいます。結局、研磨からは逃れられませんでした。研究室に居た五年間で、軽く2000枚は研磨したのではないでしょうか。
応マテに入る以上、研磨とは一生の付き合いになると覚悟しておいた方がよいかもしれません。学生実験のあいだにTAさんに教えてもらいながら研磨技術を磨いておくのがオススメです。
⑧就職実績が抜群
ここまで読んで、「応マテ、大変そうだな」と思った方もいるかもしれません。しかし、大変なだけのコースではありません。応マテの就職実績は、控えめに言っても抜群、控えめに言わなければ最強です。
応マテで学ぶ材料工学は、ものづくりの根幹を支える学問。たとえば、自動車には鉄やアルミが使われており、衝突安全性を向上させたり、腐食に強いボディーを設計したりする際に材料学の知識が欠かせません。電池にはリチウムや無機物質が使われていますよね。電池の性能を向上させるには、物質に対する深い理解が不可欠です。このように、あらゆる工業製品の裏側に、材料学の知見が隠れているのです。
にもかかわらず、材料学を本格的に学べる大学は多くありません。履修できる学科は、旧帝大と早慶などごく一部の私立大に限られている。そのため、応マテ出身の人材は、メーカーから引っ張りだこに。あっちからもこっちからも「来てくれ」と言われて、どこへ入社するかで迷うことになるでしょう。就職氷河期やリーマンショックの時代でさえ、企業からの推薦依頼が途絶えなかったと聞いています。
確かに、応マテには情報系のような華やかさはありません。応マテは工学部の中でも地味なコースだと思います。しかし、こういう地味な学問こそ、社会からの需要が安定しているのです。
今後、材料学は、マテリアルズ・インフォマティクスや量子コンピュータとの融合により、さらなる革新を迎えます。まだ見ぬ材料が次々と開発され、人類を新時代へと導く旗手となるでしょう。これからの時代、材料学はホットな分野になること間違いなしです。
⑨それなのに移行点が低い
以上のように、応マテは大変だけれど面白く、就職にも強い、素晴らしいコースです。卒業生として太鼓判を押します。
にもかかわらず、最近の応マテは移行点が下降傾向にあるらしいのです。工学部の中ではぶっちぎりの最下位、全学でも一、二を争う不人気コースなのだとか。この記事をここまで読んでくださった方なら、応マテの魅力を少しは感じていただけたのではないでしょうか。
いま花形と言われているコースに進んだとしても、将来が安泰だとは限りません。逆に、いま不人気であっても、入ってみれば想像以上に面白く、卒業後に明るい未来を描けるコースもあります。応マテは、まさにそういうコースではないかと思っています。
総合理系の皆さん、進路振り分けの際にはどうか応マテにも目を向けてみてください。金属の研磨で心を折られ、転位の概念に脳を破壊され、先生の人格と金属の一致に笑いながら、気がつけば社会で引く手あまたの人材になってください。一緒に幸せな人生を歩みましょう。

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