【五年連続転出超過No.1】広島から若者が出ていく理由を、広島にUターン就職した二十代会社員が考える

広島県が五年連続で転出超過日本一の座に輝きました。おめでとうございます。いや、おめでたくない。全然おめでたくないですね。

大幅な転出超過を引き起こしている主要因は、十代後半から二十代の若者たち。進学や就職を機に広島を離れ、そのまま戻ってこない。私の高校時代の同級生の大半も、東京や大阪に出ていったきり帰ってきません。

私は広島で生まれ育ちました。大学進学を機に札幌へ渡り、博士課程まで八年間を北海道で過ごし、Uターン就職で広島に戻ってきました。サンフレッチェとお好み焼きをこよなく愛し、宮島の鹿に何度も弁当を強奪された経験を持つ、正真正銘の広島人であります。

そんな私が、なぜ広島から人が出ていくのかを考えてみたいと思います。戻ってきた人間だからこそ見える景色もあるはずですので、少しだけお付き合いください。

目次

この街は、若者と子どもにやさしくない

いきなりストレートに書かせていただきますが、広島は若者と子供にやさしくありません。身も蓋もない見出しで申し訳ありません。しかし、これが事実だと思うのは私だけでしょうか。

広島といえば製造業。マツダをはじめ、三菱重工やJFEスチールなど、日本屈指の大企業が経済を下支えしています。私自身もメーカー勤務なので、その恩恵にあずかっています。求人だってたくさんある。働く場所には困らないはずなのです。

では、なぜ人が出ていくのか。答えはとてもシンプルです。広島に限らず、今どきの若者は製造業で働きたがりません。そして、働きたいと思えない会社が多いから、若者は仕事を求めて県外に出ていってしまうのです

SNSがすべてを可視化してしまった今、我々Z世代は他業界との差を嫌でも目にします。IT企業勤務の同世代がおしゃれなカフェでMacBookを広げ、写真をInstagramに上げている横で、こちらは汗と油まみれの作業着で工場や実験場で動き回る。彼らがリモートワークでバリ島からSlackを打っている頃、私は工場の食堂でカツカレーを食べています。

いえ、カツカレーは美味しいですよ。カツカレーを食べれば誰だって幸せですから。美味しいには違いありませんが、なんなのでしょうね、このやるせなさは。

我々の世代は、努力や根性よりも、どの業界に身を置くかで収入が決まることを知っています。給料の低い会社で昇進を目指すよりも、給料の高い会社に移る方が稼げると気付いてしまいました。どうせ同じ時間働くなら、稼げる業界にいたほうがいい。少しでも高い値札をつけてくれるところがいい。合理的な判断を下した結果、製造業が選ばれにくくなってきています。

昨今、製造業の現場も厳しい状況が続いています。人手不足は相当深刻で、技能実習生の方々がいなければ工場のラインは回りません。メーカーは、激化する国際的な競争に対抗すべく、設備投資にお金を投じざるを得ず、他業界と同じぐらいのベースアップを行う余裕がありません。競争が激しいから、先行きも不透明。そんな状況で製造業への就職を夢見る若者が大量発生するかと言われれば、まあ無理ですよね。よほど奇特な人間か、モノづくりへの情熱にあふれた人間しか来ません。

いくら製造業の求人が豊富でも、製造業自体が若者に選ばれにくいのであれば、人は広島に残りません。これが転出超過の大きな要因ではないかと考えています。

加えて問題なのは、広島は子どもにもそれほどやさしくないということ。他県と比べて自治体の子育て支援は手薄で、経済的な負担が大きい。若い夫婦が子どもを育てるハードルが高く、そもそも子どもの数が増えにくい環境にあります。

広島はただでさえ子どもの数が少ないうえ、子どもたちの遊び場まで乏しいです。

私が小さい頃は近所の公園で泥だらけになって遊んでいました。砂場で城を築き、ブランコで宇宙開発し、滑り台から人生を学んだものです。ところがいつの間にか、公園は老人たちのゲートボール会場と化していました。朝早くから集まるシニアの皆様に、我々キッズは駆逐されたのです。行き場を失った私たちは、家でひとりゲームに没頭することになりました。いま、街中を見渡してみても、子供の遊び場になりそうな場所はごく僅かしかありません。

ここで気づいたのですが、モノづくりへの興味って、実際にモノに触れることで芽生えるものじゃないですか? 泥だんごを作り、秘密基地を建て、壊れたラジオを分解して、さらに壊す。リアルなモノにかかわる原体験があってこそ、将来エンジニアになりたいと夢見るようになるのではないでしょうか。

最近の子供たちは、公園を追われ、外遊びの機会を奪われています。公園はあっても遊具が撤去され、モノに触れる体験が圧倒的に少なくなりました。すると当然、大人になっても、モノづくりには魅力を感じません。車に縁のない人が車を好きにならないように、モノづくりと縁がなければメーカー入社など考えないでしょう。それでも働いて稼がねば生きていけない。だから、製造業以外の選択肢を求めて、県外へ出ていくという構図。

私は思います。子どもの遊び場を奪ったことが、巡り巡って製造業人材の流出につながっているのではないかと。そう考えると、広島は自らの手で転出超過のアクセルを踏みぬいてしまったのかもしれません。

働く場所さえあれば、人は戻ってくる

暗い話ばかりでは読者の皆様も気が滅入るでしょうから、明るい話もさせてください。

ここまでの話をまとめると、広島から人が出ていく理由は、若者が望む仕事がないからです。製造業の求人は豊富でも、製造業自体が選ばれにくくなっている。であれば、解決策は明確ではないでしょうか。若者が働きたいと思える環境を整えればいいのです。

ひとつ目の方向性は、リモートワーク移住の促進です。コロナ以降、フルリモートで働ける会社が増えました。オンラインツールを使えば、家の中だけで仕事を完結させられます。広島は新幹線で東京まで四時間弱。月に一度や二度の出社なら十分対応できます。家賃は東京より圧倒的に安いので、同じ給料でも生活水準はぐっと上がるのではないでしょうか。広島県や広島市には、リモートワーカーを呼び込む施策を進めてほしい。企業を丸ごと誘致するより現実的で即効性があると思うのです。

ふたつ目の方向性は、製造業自体をもっと魅力的にすること。製造業が選ばれないなら、選ばれる製造業に変わればいい。私自身、メーカーで働いていて思うのですが、モノづくりの現場には他業界にはない面白さがあります。バラバラの部品が完成品に仕上がるまでの工程を見ると、感動しますよ。問題は、製造業の魅力が外に伝わっていないこと。工場の食堂で食べるカツカレーだって、あれはあれで最高なんですよ。一度社食に来てもらいたいぐらいです。

私自身、メーカー勤務でそこそこの給料をいただいています。広島でひとり暮らしをする分にはまず困りません。食べたいものを食べられるし、ちゃんと服を着て外に出られます。しかし、同業他社と比べると、年収は数百万円低い。SNSで他社の年収を見てしまった日には、正直しんどくなります。製造業の給与がすぐに爆上がりするとは思えませんが、少しずつでも改善していってほしいと切に願っています。

・・・・・・・

広島にはもう既に、働く場所以外の魅力がたくさんあります。

最近の広島市は再開発が進み、見違えるほど変わりました。広島駅は大規模リニューアルを経て、駅ビルから直接路面電車が発着するようになった。路面電車がビルから出てくるのを初めて見たとき、「うわぁ~!」と声が出ましたよ。昨年オープンした駅ビル・ミナモアは連日大盛況。平日夜や週末は買い物客でごった返しています。

市内中心部にはサッカースタジアム・エディオンピースウイング広島が開業しました。実を言うと、私、年間パスを購入して毎試合応援する熱狂的サンフレッチェサポーターでして、このスタジアムの素晴らしさを語り始めると止まらなくなってしまいます。ピッチとの距離が近いんです。選手の息遣いまで聞こえそうな臨場感があるんです。音響設計も一級品で、サポーターの声援がスタジアム全体に響き渡ります。世界でも屈指のスタジアムだと、世界一のスタジアムだと本気で思っています。

さらに、私が改めて言うまでもないことですが、広島には最高のお好み焼きがあります。関西”風”も美味しいとは思いますが、麺の入っていないお好み焼きは小麦爆弾だと思っています。ぜひ一度、薬研堀のお好み焼き村で本場の味を噛みしめてください。キャベツと麺とソースと卵のミルフィーユ構造が織りなすハーモニーに涙をこぼすことでしょう。広島のお好み焼きこそが本流であり、正統であり、至高なのです。八年間の札幌生活で恋しくて恋しくて仕方なかったあの味が、今では週末の楽しみになりました。

広島には居住地としての魅力が盛りだくさん。この街に欠けているのは、若者が求める職場と子育て環境だけなのです。

最後に

五年連続転出超過日本一は、不名誉の極みです。できることなら来年こそ返上したい。

でも私は、広島の未来を悲観していません。リモートワーカーが住みやすい街になり、製造業がもっと魅力的になり、子どもを安心して育てられる環境が整えば、人は必ず戻ってきますから。広島には、人を惹きつける魅力がたくさんある。街のそこかしこでお好み焼きの香りがし、ガタンゴトンと路面電車の音が聞こえて、週末にはピースウイングからサッカーファンの大声援が響いてくる。こんな街は広島だけです。東京にも大阪にもありません。

広島よ、もう少しだけ若者と子どもにやさしくなってください。公園をゲートボール場にするのはほどほどにして、遊具と遊び場を増やしてください。そして、製造業で働くことの魅力を、もっともっと発信してください。そうすれば、この街はきっと良くなります。

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