論文を記す際はいつも迷います。「データ集めをいつ切り上げようか」と。
いつまでも実験していては論文を書けません。どこかで実験を終え、執筆に取り掛からねば永遠に仕上がらないでしょう。実験を切り上げるタイミングの判断が迷わしい。自分自身、いつも(書き始めて大丈夫かなぁ)と首をかしげながら書き始めたものです。
この記事では、データ集めを終えて論文執筆を始めるべきタイミングについてお話しします。実験終了の目安について伝えられればと思っているので、執筆開始時期の判断でお困りの方はぜひご一読ください。
かめそれでは早速始めましょう!
【目安】手持ちのデータで論文のストーリーを組み立てられた瞬間


最初に結論を申し上げましょう。執筆開始の目安は、手持ちのデータでストーリーを組み立てられた瞬間です。
論文にはそれぞれ「筋(プロット)」があります。ある実験・解析手法を用いてデータを得て、様々なデータの総合的考察を行い、学術界では未だ明らかにされていない知見を得るという流れ。論文はSFではありません。新たな説を提唱するには何らかの科学的根拠が必要です。我々論文執筆者は、そうした科学的根拠を集めるために実験を行います。新発見の妥当性を裏付けるにあたって十分な証拠を収集するために。
新説を唱えるには根拠が要ります。逆に考えてみると、学術的根拠さえあれば人類の誰でも新説を唱えられるわけです。論文を書き始めるべきタイミングは、根拠がひととおり出揃った瞬間。過不足ないなと感じた時点ですぐに書き始めてしまいましょう。GOサインを点灯させるか否かでお困りでしたら、周囲の学生や指導教員などとディスカッションしてみましょう。注文をつけられたら幾らか追加実験を行います。問題がなさそうなら執筆に取り掛かかってください。
【盲点】論文を書き始めるタイミングは自分で決められる


論文執筆開始のタイミングは指導教員が決めるものだとお考えの方がいらっしゃるかも。違いますよ。書き始める時期を決めるのは、筆頭著者の我々学生です。学生は指導教員の奴隷ではありません。手先でもないし、命令に従順な犬でもない。論文が出版されずに困るのは学生側。修了要件や奨学金返還業績を満足に集められなくて泣きを見る。配下に何人もの学生がいる教員側は、論文が一報出版されなかろうが痛くもかゆくもありません。出版の有無によって将来が大きく変わる学生側が論文を書き始める時期を決めるべき。
大学教員はビッグジャーナルに投稿したいと思っています。海外の一流学術雑誌へ論文が掲載されれば自身の研究者としての格に箔が付くからです。一流誌への掲載には標準誌よりも多くのデータが求められます。教員サイドに任せていたら、いつまでも追加実験を続けさせられるでしょう。我々学生の至上命題は「業績を稼いで修了する」こと。JASSO第一種奨学金返還免除のために、あるいは大学院修了要件の充足のために。掲載されるのは一流誌でなくても構わない。学生にとっては雑誌の質より論文数が大事ですから。
論文をひと通り仕上げた後にちょっとゆっくりするのは一案。投稿前に考察パートを熟考すればより良い論文に仕上がるでしょうから。しかし、書き始めるのをゆっくりしてはいけません。ライバルチームが先に論文を出してしまったり、業績不足で学振DC1申請時に頭を抱えたりするかもしれないから。データが揃ったらなるべく早く書き始めるべき。できるだけ速やかに完成までこぎつけ、いつでも論文投稿できる状態を作って下さい。
先生から「もっと実験データを集めて良い雑誌を狙おうよ」と言われても無視して書き始めて下さい。先生は無責任です。美辞麗句で経験不足の学生をその気にさせる名人。自分のせいで学生の将来が破滅したところで学生に対し何ら責任を負いません。学生サイドには自衛の精神が必要。自分の将来や未来への安心感は自分自身で担保しなければならないのです。
【まとめ】論文を書き始める勇気を持って


研究者として真理を追究する熱意と、現実の厳しさとの狭間で揺れ動く—— それが論文執筆という営みの本質です。完璧なデータを求める気持ちは分かります。しかし、その追求に囚われすぎると、かけがえのない若手研究者としての成長機会を逃してしまうかもしれないのです。
私たち若手研究者にとって、論文執筆の開始時期を決める権利は、単なる「権利」以上の意味を持ちます。それは自分の研究者人生を切り開くための、そして将来への希望を守るための重要な判断なのです。確かに、経験豊富な指導教員からのアドバイスは貴重でしょう。しかし、修了要件や奨学金返還免除という切実な現実に直面しているのは、他でもない私たち学生自身。この現実を直視し、自らの手で道を切り開いていく勇気が必要です。
「まだデータが足りない」「もっと良い結果が出るはず」—— そんな完璧主義の罠に陥らないでください。研究の世界に「完璧な論文」など存在しません。むしろ、科学的な論理展開が可能になった時点で果敢に執筆を開始し、査読者とのディスカッションを通じて論文を磨き上げていくべき。その過程こそが、若手研究者としての成長を加速させると思います。
研究に懸ける情熱は誰にも負けてはいけません。その情熱を適切にコントロールし、戦略的に前進する賢さも忘れないでください。論文執筆は決して研究の終着点ではありません。それは次なる研究への、そして更なる真理の探究への力強い一歩となるのです。自分の研究に自信を持ち、適切なタイミングで執筆を始める勇気を持ちましょう。我々学生の研究者としての未来は、その決断から開かれていくはずです。


















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