北大工学部には、応用マテリアル工学コースという、名前だけは今風でカッコいいコースがあります。通称、応マテ。私が学部から博士課程までの七年間を過ごした場所です。
応マテと聞いて、なにそれ? と思った方、正常です。ありがとうございます。実際、学内でも「応マテって何やってるの?」と聞かれることがしょっちゅうでした。影が薄いのは認めますが、中身まで薄いわけではありません。
この記事では、応マテに関するあるあるを、卒業生の立場でお届けします。進路振り分けを控えている総合理系の方や、AO入試で応マテを目指している方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください!
かめそれでは早速始めましょう!
①「マテリアル」の名に騙される
応用マテリアル工学コースという名前を聞くと、材料全般について幅広く学べるコースだと思いませんか。実は、私もそう思っていました。
私はもともと炭素繊維の研究がしたくて応マテを志望しました。「応用マテリアル」というぐらいだから、きっといろんな材料を扱えるのだろうと。炭素繊維の網に引っ掛かってこんがらがるのを夢見ていたわけです。
ところが、いざ講義が始まってみると、講師がするのは金属の話ばかり。熱力学や材料力学はまだ汎用的な内容なので良いのですが、金属組織学、相変態論と、どこまでいっても金属、金属、また金属。いつになったら炭素繊維が出てくるのだろうと待ち続けましたが、その日は永遠に来ませんでした。
おかしいなと思って学科のパンフレットをよく読んでみました。すると、応マテのルーツが金属工学科にあることを知り、愕然としました。つまり、応マテは金属専修コースだったのです。ちなみに、私がやりたかった炭素繊維の研究は、応用化学コースでできるらしいです。どうやら志望先を間違えたみたい。
これから進路振り分けを控えている総合理系の皆さんには、コース名の雰囲気だけで志望先を決めないよう、お願いします。自分のやりたい研究がどのコースに属しているのか、入念に調べておいてください。私のように「マテリアル」の響きに釣られると、四年間金属を磨き続ける羽目になります。これは比喩ではなく、文字通りの意味です。詳しくは後述します。
なお、応マテではいま話題の半導体についても学ぶことができます。将来、半導体エンジニアになりたい方は、ぜひ応マテにお越しください。金属の講義も、もれなくセットでついてきます。
②材料学は物理と化学のハイブリッド
材料学は、物理と化学の境界に位置する学問。力学、熱力学、電磁気学、原子物理といった物理的な要素もあれば、電解精錬や無機化学のような化学的素養も求められます。「物理だけ」「化学だけ」ではなく、両方をバランスよく使いたいという方に、応マテはぴったりのコースです。
正直に言うと、学部で講義を受けている間はあまり面白くないかもしれません。金属組織学の教科書を開いて、ワクワクするぞという方は少ないでしょう。しかし、研究室に入って実際に研究を始めると、材料学の面白さに必ず開眼します。自分の手で材料を作り、その特性を測定し、なぜそうなるのかを物理と化学の両面から考察する。謎が解けたときの快感を、皆さんにもぜひ味わっていただきたい。
研究室によって、物理寄りか化学寄りかはかなり異なります。計算科学でシミュレーションをゴリゴリ回すラボもあれば、ウェットな実験で化学反応をひたすら追いかけるラボもあります。自分がどちら側に軸足を置きたいのか、よく考えてから研究室を選ぶと後悔しなくて済むはずです。
③MC棟って、どこ?
応マテの講義は、材料系と化学系の研究室が集積された材料化学棟(MC棟)で行われます。MC棟は工学部棟と渡り廊下で接続されていて、工学部の入り口から歩いて5分ぐらいのところにあるそうです。「あるそうです」と書いたのは、初めて訪れた時に自力でたどり着けなかったから。
B2に上がって初回講義を受けにMC棟を目指すのですが、これがまったく見つかりません。一応、工学部棟の廊下には、MC棟への道順を示す張り紙が貼ってあります。それを律儀にたどっていっても、なぜか見当違いの場所に行きついてしまう。工学部棟の内部構造がそもそもダンジョンなので、張り紙があっても攻略できないのです。私のような方向音痴には辛い展開ではないでしょうか。
私も初めてMC棟に向かった時は、場所が全然わかりませんでした。友人と二人でそこらじゅうを走り回って、MC棟の標識を探したものです。「こっちじゃない」「あっちでもない」と右往左往した末に、講義開始の数秒前にようやく教室に滑り込めました。
応マテ生活の最初の試練は、講義の内容ではなく、講義室にたどり着くことです。

















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