博士課程を早期修了できるならしておいた方が良い理由

博士課程進学者のうち、三年以内に修了できる人の割合は7~8割と言われています。中途退学は珍しくありません。四年目に突入するオーバードクターもチラホラ現れる。標準年限以内に修了した者のうち、早期修了(飛び級)できた人の割合はごくわずか。修了者全体の5~10%しか手にできない称号なのです。

早期修了するにはたくさんの業績が必要です。私は休日と睡眠時間を返上して研究したおかげで成果を出せました。自分は努力タイプ。力業で短縮修了までこぎつけました。その一方、さして頑張らずとも難なく成果を出せる天才さんもいらっしゃるはず。天才さんの目の前には「早期修了するか/しないか」という二つの選択肢が待っています。さぁ、優秀な皆さんならどちらを選びますか?

この記事では、早期修了に手が届くなら早期修了しておくべき理由を解説します。天才の方、早期修了を目指している方、飛び級に関心のある方へピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

自らの優秀さの証明になるから

世間的には修士号を取るだけでもすごいです。博士号を取ったらもっとすごい。まして、博士課程の飛び級となったらとんでもなくすごい。会社では「この人、何者?」と一目置かれます。確かに博士号は足裏の米つぶかもしれません。役立つ場面は少ないでしょう。博士課程の早期修了は違います。まるで黄門様のご印籠のように自らの権威を示すものとなりうるのです。

先ほど、”早期修了できた人の割合はごくわずか”と述べました。大学院の飛び級修了は全体の5~10%しか手が届かない難関です。この数字は学振DC1の内定率よりも低い。早期修了を目指して頑張っても手が届くとは限らないでしょう。大半の方はそもそも目指そうとさえ思わないかもしれません。 (三年かけて修了すればいいや) と思っている人が大半。そんななか、わざわざ研究ペースを上げ、たくさんの業績を出す手間を面倒に感じる方が多いでしょう。

もしも早期修了したらどうなるか?早期修了したことでもって自らの優秀さを証明できます。我々早期修了者は『早期修了』を自らの武器の一つとできる。得られた武器を効果的に用いられれば、就活・転職やビジネスなど様々な場面で相手に信頼を与えられるでしょう。他の人材とは明確に異なる訴求ポイントでもって容易に差別化できるのです。人間関係は第一印象で9割決まるそう。最初に自らの経歴でもって権威性をアピールできれば強いですよね。

「飛び級できたけど、あえてしませんでした」は言い訳めいて聞こえるから

「できたけどあえてしなかった」は言い訳に聞こえる

三年かけて修了した方のなかには「二年で出ようと思えば出られた」という方が一定数いらっしゃるでしょう。業績的には要件を満たしていた。本当なら早期修了できた。けれども、この環境でもっと実力をつけてから修了したかった。わざわざ一年短縮して修了することにメリットを見出せなかった。

大変失礼なことを申し上げます。気分を害してしまわれたら申し訳ありません。

「飛び級できたけど、あえてしませんでした」。穿った見方をしてみると、コレって何だか言い訳めいて聞こえるんですよね。ではなぜ飛び級しなかったのですか?できたんでしょ?他の人よりも早く学位を取れたんでしょ?なのにどうして取らなかったの?本当は飛び級”しなかった”じゃなくて、飛び級”できなかった”んじゃないの?

飛び級を見送る様々な事情があるのは十分存じています。業績的には十分でも、健康面やポジションの空くタイミングによって標準年限での修了をお選びになる方がいらっしゃるでしょう。早期修了したからといって偉くも何ともありません。二年で出ても、三年で出ても、博士は博士。それに変わりはないでしょう。自分自身、業績は十分でした。ただ、ストレスで著しくメンタルヘルスを崩し、博士課程を早期修了できるかできぬかの瀬戸際まで追い込まれた経験があります。

メンタル不調に陥りながら踏ん張れた理由

私が心を壊しながらも早期修了を目指した理由は、過去に大学受験で似たような失敗をしていたから。

自分は高三の11月、京大実戦模試で農学部A判定を取りました。しかし、京大入試本番に数学で大ゴケ。6点差で落ちてしまったのです。京大へ雪辱を晴らすべく浪人開始。夏の京大オープン模試で農学部A判定&冊子掲載。誰が見ても京大へ通りそうな成績。しかし、自分はここで志望校を変えました。また落ちるのが怖くなってしまったのです。底知れない恐怖心に白旗を掲げて受験校を北大総合理系まで下げました。北大なんて余裕で受かります。トップと6点差の次席合格を果たしました。

京大に通りそうだったけど、あえて受けなかった。模試成績を客観的に見ればそう言えるでしょう。けれども私は北大生です。断じて京大生ではありません。京大入試目前に敵前逃亡しておいて京大生を名乗れるわけがない。「通りそうだったけどあえて受けなかった」などと口が裂けても言ってはならないのです

D1の12月、メンタルが危機に瀕しました。研究を進めたくても研究所へ出入りできないから進められない。新たな武器を得るために海外留学したものの、留学先に人も装置も何もなくて時間と大金を無駄にしてしまった。おまけに論文は四回連続でリジェクト。早期修了チャレンジを投げ出したくなりました。本当に退学届まで用意していたんですよ。書ききって、指導教員の認可を経て、事務へ提出して全ておしまいにするつもりでした。

土壇場でやめずに踏ん張れたのは、過去の過ちを繰り返したくなかったから。早期修了に必要な業績量が揃うまではあと少し。論文をあとふたつ書けたら飛び級できる。目標まで手が届きかけているのにやめていいの?後悔しないの?自問自答を重ねた末に「もう少し頑張ってみようか」と決意したのです。再スタート後も苦しい日々が待っていました。”フィニッシュ目前で勝負を投げ出す不格好な真似はもうしたくない”と歯を食いしばって業績をねじり出した形。

早期修了できるならしておけ

世の中には変な人がたくさんいます。自分はたいした学歴も実力も持っていないのに、他人の論評だけは達者な連中が。

彼らは言いがかりをつける材料を目を皿にして探しています。こっちが少しミスしただけで「まだまだだねぇ~」といやみったらしく言ってくるのです。そういう人は学歴にもうるさいでしょう。「○○大学?そんな大学、日本にあったんだ~^ ^」と恥ずかしげもなく突っかかってくる。彼らに博士課程の知識が少しでもあれば、博士課程の在籍年数で嫌味を言われるかもしれません。標準年限で修了しても「あれ、三年もかかったんだね^ ^」と冷笑してくるはず。ハッキリ言って不愉快ですよ。一発ぶん殴ってもいいと思います(*絶対ダメですよ)

会社に入れば変な人が必ずいます。それはひょっとするとあなたの直属上司かもしれません。彼らにはなるべく隙を与えたくありませんね。

博士課程を二年で出られるなら出ておいてください。早期修了の経歴でもってうるさい奴らを黙らせられるでしょう。優秀な人間には別の形でネチネチ言われることと存じます。心の中で「アンタとは人生のレベルが違うんだよ」と冷笑しておけばOKです。争いは同じレベルの人間同士の間でしか起こりません。我々と批評家の皆さんとはレベルが段違いな以上、貴重な時間と労力を使って相手をしてあげる必要はないでしょう。

最後に

博士課程早期修了の意義と価値について、自身の経験を交えながら論じてきました。

早期修了は修了者全体の5〜10%しか手にできない称号。単なる期間短縮以上の意味を持つといえます。私自身、メンタルヘルスを崩しかけながらも、過去の後悔を繰り返すまいという強い意志で困難を克服してきました。

早期修了の本質的価値は、【自らの能力証明の揺るぎない武器となる点】に見出せるのではないでしょうか。「できたけどしなかった」という言葉だけでは伝えきれない、確かな実績としての重みが存在するのです。社会に出れば様々な場面で学歴や経歴を問われることでしょう。早期修了という実績は、そんな時に強い自信と説得力を与えてくれるでしょう。

博士課程を二年で修了できる力量があるなら、迷わずその道を選びましょう。体力的にも精神的にも厳しい挑戦が待ち構えます。だからこそ、その労力に見合う価値は絶大です。研究者や社会人として歩む未来で、早期修了の実績は他者との明確な違いを示す強力な武器となります。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 理系博士課程の者です。
    半年早期卒業でもなく、1年早く卒業は本当にすごすぎて言葉になりません、、
    本当に尊敬します。 様々な記事の内容がモチベになっております。ありがとうございます。

    • コメントいただきありがとうございます。

      嬉しいです。Yさんのコメントも記事執筆のモチベーションになります。
      今後も様々なアカデミア関連記事を投稿予定ですので、是非また札幌デンドライトにお越しください。

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