学部生レベル
英語の前に、まず日本語の論文を読む

英語論文に手をつける前に、まずは日本語の論文を読みましょう。
英語でいきなり読もうとしても、知らない単語ばかりで話が頭に入ってきません。研究の背景を知らないと、単語の意味が分かったところで、全体として何の話なのか見えてこないんです。先に、研究テーマに近い日本語の論文を何本か読んで、背景と課題を頭に入れておくと、英語論文を開いたときの見通しがぐっと良くなります。
私も最初は英語論文にまるで歯が立たず、先に日本語論文を十本ほど読みました。読むときは、出てくる測定装置の仕組みと、著者がなぜそのやり方を選んだのかを、いつも頭に置いていました。十本読み終えて英語論文に戻ったら、前より格段に読めるようになっていました。日本語で仕入れた知識のおかげで、英語があやふやでも話の中身を想像できたんだと思います。
日本語の論文はGoogle Scholarで探せます。読んだものは保存ボタンを押してためておくと、卒論を書くときに探し直さずに済んで楽です。
翻訳ツールに頼らず自力で読み通す。グラフやグラフの軸の意味合いについても要チェック!

本語で足場ができたら、いよいよ英語論文です。ひとつお願いがあって、最初からAIに頼らず、まずは英語のまま最後まで読み通してみてください。分からない単語には印をつけながら、とにかく終わりまで読みます。きつい作業ですが、踏ん張るうちに英語を読む力がついてきます。
最後まで読み終えたら、ようやくAIの出番です。印をつけた箇所を貼り付けて訳してもらうと、ああここはこういう意味だったのか、と答え合わせができて、けっこう気持ちいいものです。読み終わったあとは、AIを好きなだけ使ってかまいません。全文をすらすら訳せるくらいまで読み込むと、論文で使われている英語の言い回しが自分のものになります。いざ自分が論文を書くとき、そのまま使えて助かります。
グラフも、ただ眺めるだけでは足りません。何を示したデータなのか、理系の高校生に説明できるくらいまで噛み砕いておきましょう。
特に軸は要注意です。意味があやふやなまま雑誌会に出ると、この軸は何を表しているの、と突っ込まれた瞬間に何も言えなくなります。経験者は語る。軸を読むヒントは単位にあります。単位を見れば、その軸がどんな量を表しているのか、だいたい見当がつきますよ。
読んだ論文を一文で要約する

読み終えた論文を、どんな課題にどんな方法で挑んで何が分かったのか、一文でまとめてみてください。すっとまとめられたら、ちゃんと読めた証拠です。詰まるようなら、もう一度読み直しましょう。
要約ができていると、発表で時間が押したときにも慌てません。論文の芯を分かっていれば、どの図を見せてどのデータを削るか、その場で判断できます。要約のやり方は、落合陽一さん(筑波大准教授)の方法が参考になります。[先端技術とメディア表現1 #FTMA15 (slideshare.net)]
修士レベル
どこが新しいのかを探す

論文を読むのに慣れてきたら、次は読んでいる論文のどこが新しいのかを考えながら読んでみてください。論文として世に出ている以上、どこかに必ず新しさがあります。新しい材料を使っていたり、珍しい装置で測っていたり、計算のやり方が独特だったり。形はいろいろですが、何か一つ、ここが新しいというポイントを見つけてみましょう。
私のいた電池の分野は、材料の新しさで攻める論文が多めでした。私自身は、装置と実験条件の珍しさで勝負していました。
新しさを探しながら読む癖がつくと、自分の研究を立ち上げるときに、人がまだ手をつけていない角度を見つけやすくなります。同じテーマを追う研究者は山ほどいるので、人と違う切り口を出せるかどうかが勝負どころです。読んだ論文の新しさを一つずつ覚えていけば、自分の番が来たときに使えるネタがたまっていきます。
なぜその研究が始まったのかを読む

もう一つ、著者がなぜその研究を始めたのかにも目を向けてください。分野のどんな課題を、なぜ解く必要があると考えて研究を始めたのか。そこまで読み取れると、論文の見え方が一段深くなります。
何を研究するか、テーマを決める作業がいちばんしんどいんです。実験は手を動かせば前に進みますが、テーマばかりは自分の頭から絞り出すしかありません。ほかの人がどこに目をつけて始めたのかを知っておくと、自分がテーマを練るときのヒントになります。できるでしょう。たとえ論文の内容をよく理解できずとも、研究の目の付け所だけは論文を読む際に脳みそへ刻み込んで下さい。
読んだ論文の引用先を調べてみる

修士の総仕上げとして、読んだ論文がそのあとどの論文に引用されたかを調べてみてください。自分が読んだ一本が、誰のどんな研究の土台になったのかが見えてきます。
引用先をたどっていくと、その分野で今どこが熱いのか、逆にどこがまだ空いているのかが分かります。自分の論文だって、いつか誰かに引用されます。どう引用されたいかを思い描きながら書くと、書きぶりが変わってきますよ。
引用の数が多い論文ほどえらい、とよく言われます。ただ、数が少なくても価値のある論文はたくさんあります。時代の先を行きすぎた論文は、周りが追いつくまで引用が伸びないものです。何年も経ってから、別の分野で急に脚光を浴びることもあります。
博士課程レベル
図を自分で読んで、主張とのズレを探す
博士になると、読み方が大きく変わります。
修士までは、論文から学ぶために読んでいました。博士になると、自分も論文を書いて、審査される側に回ります。論文を、書く側の目で読むようになるんです。自分の論文を投稿すると、査読者から細かい弱点を次々に指摘されますから。一度その立場を経験すれば、他人の論文の粗も自然と目につくようになります。
具体的には、まず図を自分で見て、自分なりの結論を出します。次に、それを著者の主張と突き合わせてみてください。Abstractで大きく言い切っているのに、図をよく見ると効果はごくわずか、ということもよくあります。エラーバーの大きさや、測定を何回やったのかも見ておきましょう。一度きりの測定なのに、さも一般的な結果のように書いている論文は珍しくありません。反面教師。
自分の研究をどこに置くか考えながら読む
博士課程に進むと、読み手である自分も論文発表します。だから他人の論文を読むときも、つい自分の研究と比べてしまうんです。
特に序論と関連研究の部分は、注意して読んでみましょう。著者がその分野の課題をどう捉え、自分の研究をどこに置いたのかが、序論の書き方によく表れています。読んでいる論文が過去の研究の何を引き継ぎ、どこを新しくしたのかが分かれば、自分の研究の新しさをどこで主張すればいいかも見えてくるでしょう。
”新しい”と書いてある論文が、よく見れば既存研究の焼き直しだった、なんてこともあります。逆に、目立たない書き方なのに、中身は大きく進んでいる論文もあるでしょう。たくさん読んで分野全体が頭に入っているほど、一本一本の本当の価値を正しく見抜けるのではないでしょうか。




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