広島生活春夏秋冬vol.22 二年目・8月|社会貢献活動と炎色反応鑑賞によるニンニク転職ラーメン健康効果のメタ分析

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夏の夜の夢

今年は梅雨が長かった。梅雨前線が高気圧を抑え込んでくれ、去年よりも涼しい期間がすこし長く続いた。高気圧くんが「この紋所が目に入らぬか!」と印籠を突きつけたかと思えば、梅雨前線ちゃんが「んなデカいもん目に入るわけないじゃろうが!」と逆ギレして居座った。

私は梅雨前線ちゃんの味方である。噂では、梅雨前線の中身の人は広瀬すず以上満島ひかり未満だと言われていて、そうなったら本気で加勢するしかないだろう。梅雨前線さん、日本列島を心ゆくまで満喫してください。もしお時間があれば、広島でおくつろぎください。呉では冷麺が、宮島街道では揚げもみじがオススメですよ。ついでに、エディオンピースウイング広島でサッカーを観てくださいな。

暑いよりも涼しい方が過ごしやすい。暑い暑いも好きのうちというけれども、暑さにも限度というものがある。大さじ二杯程度の気温ならば、春はあけぼの・夏は夜の精神を味わえる。最近の夏は、暑すぎる。現に米倉涼子が楽天モバイルのCMで「日本のスマホ代は高すぎる!」と文句を言っている。

近所のスーパーではメンチカツが売られている。揚げたてのメンチカツが陳列されるやいなや、皆が集まって「うわぁ~、美味しそうだなぁ!」とよだれを垂らし、メンチカツがよだれまみれになる。人間にもメンツというものがある。特に男はメンツを気にして生きている。これだけ梅雨前線ちゃんが歓迎されたら、高気圧くんもたまったもんじゃない。

高気圧くんはジャカルタでチョコザップに入り、臥薪嘗胆の精神で虎視眈々と質実剛健に筋トレを重ねた。表情の険しきこと般若のごとく、サボることコアラのごとしだったという。高気圧は満を持して、7月上旬に日本列島へ上陸した。パワーアップした高気圧くんを前に梅雨前線ちゃんは圧倒され、「もう、いいでしょう」と主役の座を明け渡した。こうして、今年も夏がやってきた。

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夏とは何か。札幌・北大植物園内で日夜喧々諤々の議論が交わされている。夏はあまりに多義的な存在なので、神さまからのささやかな嫌がらせとか、フライドチキンのチキン抜きとか、港区女子の顎の角度は30度とか、そんなものはないとか、様々言われている。

夏といったら、である。夏には青がよく似合う。日本晴れの蒼穹のもと、波打ち際で真っ青なカルピスウォーターを飲むと抜群にウマい。やめられないし、止まらなくなる。夏には青色のかっぱえびせんも販売される。

とはいえ、夏は暑くて許しがたい。春や秋を見習って、もうちょっと涼しくしなさいよ。札幌の夏は涼しくて気持ちがいいのだが、広島の夏は最悪である。ジメジメしていて息苦しく、どっきりどっきりDON DON!! 不思議なチカラがわいたら どうしようかなぁといった次第である。憲法25条の生存権を揺るがすものとして裁判にかけるべきである。

だいたいね、夏ごときが主役面してシャシャリ出てこないんで欲しいわ。あんたのせいで暑いだろうが。マジでふっざけんななのだ。道頓堀で関西お好み焼きでも食っとけって。あんなもん、どっから見ても小麦爆弾でしょ。麺が入ってないお好み焼きとか論外なんだわ。

高気圧くんにはね、一度広島のお好み焼き村で本家本元・真打極道ファンタスティック広島スペシャルぽんぽこりんお好み焼きを食べてほしいんですよ。八昌で一口食べたら、次の日には広島へ住民票を移してますよ。え~っとですね、ぜひですね、広島の転出超過問題を解決してください。いや、やっぱり来ないでください。あなたに来られたら暑くなりますからね。一歩でも広島の敷居を跨いだら、お好みソースをぶっかけるぞ。

夏をしのぐには素麺がいい。素麺なんて簡単に作れるからなぁ。スーパーで揖保乃糸を買ってきて、家でかじればもう抜群に涼しい。冷やせばなお美味しくいただけるし、麺つゆまであれば広末涼子ぐらい涼しい。あの人、180キロ出すからね。今度カープの試合で3点差の9回裏に登板していただきたい。

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最高裁で法の裁きを受けるべき夏だが、夏にもひとつだけ良い側面がある。夏の夜空には花火が映える。春でも秋でも冬でもない、育毛でも植毛でもない、夏こそが花火に相応しい季節といえる。

夏は夜が長く、深夜まで人が外を出歩いている。実際、広島では暴走族が真夜中まで元気にブンブンやっている。昨日の夜もメチャクチャうるさかった。夏は暑い。暑いからこそ、人は活気に満ちて元気に過ごせる。実際、私も夏がほふく前進速度が最も速く、身体の状態がすこぶる良いように感じる。

うだるような暑さをしのぐと、夜になれば身体から ふっ と力が抜ける。今日も会社で酷いことがあったなぁ、なんであの人はあんな言い方をするんだろうと思いながら、夕日を眺めてぼーっとする。

無心で広島湾の水面を眺めていたら、時々有志が大尺玉を打ち上げてくれる。青が開いて、散り際に赤へ変わる。水面にも遅れて同じ色が落ちてきて、そうそう、これこれ、と一人で頷く。ただの炎色反応のはずなのに、なぜこんなにも美しいのか。破裂音に鼓膜を震わせながら、目を細めてニッカウィスキーを飲む。うまい。

7月最終週の日曜日、広島港で花火大会があった。去年は唐揚げ社宅最上階の自室から眺めた。広島イチのタワマンということもあり、周りには遮るものがなく、ベランダから花火を鑑賞できるのだ。

今年は非常階段から眺めた。三脚にデジカメをセットし、長時間露光でベストショットを撮った。虫に刺されまくって無視できないほど痒かったけれども、広島で見られる最後の花火ということで、一発目から最後まで見届けた。

昨年、同じ時期に花火を眺めたとき、来年は誰かと一緒に見たいなと思っていた。花火大会の会場まで行き、「暑いね~」「めっちゃ混んでるねぇ~」とか言い合って、手をつなぎながら見られたらと願っていた。彼女作りのためマチアプを9ヶ月行い、理容室まで行って求愛活動した。だがM&Aは成立しなかった。お金と時間と気力と愛と勇気と希望を失って終戦した。

高二の8月に彼女ができた。初めてのデートで、宮島の花火大会に行った。ふたりとも緊張していたのか、互いにめっちゃ頓珍漢なことを言って、「僕ら、何を言っているんだろうね」「よく分からないねっ」と笑い合った。はぐれたらいけないからと、手をつないだ。女の子の手って、こんなにやわらかくてきれいなのかと感動した。もう12年前のことなのだけれども、昨日の出来事のように思い出せる。

Uターン就職は大失敗だと思っていた。北大博士課程を短縮修了した自分が、まさか一社目まで短縮修了するなど予想外だった。でも、広島に帰ってきて以来、青春時代の残像が手触りと色彩を伴って蘇った。美魔女だらけの乗馬クラブでは国体に懸けた青春時代を思い出し、花火からは当時の彼女と過ごした甘酸っぱい記憶が戻ってきた。もし結末を知りながら就活をやり直すとしても、広島就職を選ぶに違いない

これから先も、おそらく一人で花火を眺めるだろう。昔みたいな感受性や可愛い彼女はもう居ないけれども、遠い昔に眺めた夏の夜の夢を思い返せば、なんとか前に進めるのかもしれない。

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