【キャリアプラン不要論】博士修了後の未来を見据えて進学しなくてもいい

北大博士課程を早期修了した化学系大学院生かめ(D2)です。来年度から地元の民間企業で技術開発職に従事します。

博士課程進学を考えている人にとって悩みのタネは「キャリアプラン」ではないでしょうか。学位取得後にどの道を歩むか考えるだけで頭がグチャグチャになってきそうです。

修士修了後に博士進学しない人は気楽。大半の学生と一緒に企業就職する道を歩めば不安はありません。博士進学する場合も、博士課程在籍中は研究へ集中していればいい。というか、在籍中は修了のための業績集めで必死になるはず。さて、修了した後はどうしましょうか。企業就職?アカデミアを目指す?それとも起業?色々な選択肢がありますね。選ぶに選べず、頭が混乱してパニックになるかもしれません。

皆さんに問いかけたいことがあります。そもそも、ですよ。博士進学前から博士修了後を見据える必要があるのでしょうか? 見据えられる人は見据えればいいかもしれません。しかし、見据えたくても見据えられない人が大半なはず。かつての私自身もそうでした。M1やM2のときは博士修了後のキャリアプランを想像したくてもできなかったのです。

博士進学したい。進学前からキャリアプランを描かいておかなきゃいけないと思っている。それでもキャリアプランを描けない。というか、ひとつの道を選ばせられることにプレッシャーを感じて辛い。この記事では、将来に関するお困りごとを抱えていらっしゃる方が楽になるメッセージを記しました。博士進学するか否かで逡巡している方はぜひ最後までご覧ください。

それでは早速始めましょう!

まさか自分が企業就職するとは思ってもみなかった

企業の開発職へ携わる私。博士進学前から企業就職を考えていたわけではありません。

実のところ、博士進学前は国研で研究者になろうと考えていました。共同研究の都合で筑波の某国研へ頻繁に出入りしていたのです。国研の雰囲気に魅了されました。設備は最新鋭。研究者は超一流。あちこちから飛び交う外国語。カッコよくて思わず鳥肌が立った。心の底から「国研の職員になりたい!」と感じて研究者を志望したわけです。

しかし、研究者への道を頓挫するに至りました。原因はD1後期のイギリス留学。300万円弱もの大金を費やして赴いた先では、実験設備がほぼすべて壊れており、訪問先ラボにも人は居ませんでした。ここでの経験からアカデミアそのものへ幻滅。イギリスから帰ってくる1週間前から民間企業への就活を始めたのでした。

博士進学前までの自分は、”将来は研究者になる”と信じて疑っていませんでした。研究者になって当然。自分が研究者にならなくて他に誰がなるっていうの?
私は学振DC1に採用されました。IF24の国際誌へ筆頭論文が掲載されてもいます。博士課程の一年短縮修了も狙っていた。この自分が研究者になれない未来が有り得るのだろうか……有り得ましたね笑。私は研究者になれませんでした。

未来がどうなるかなんて誰にも分かりません。皆さんは研究者になるかもしれません。ひょっとしたらならないかもしれません。私のように企業で開発職に従事する可能性だってある。博士人材が就きたがる研究職ではなく”開発”職に。あるいは、一念発起して難関資格を取って独立開業しているかもしれませんよ。司法試験。税理士試験。公認会計士試験。そうだ、弁理士になっている可能性もありますね。

キャリアプランは描けなくて当たり前

このように、未来とは本来不確実なものどれだけ懸命に考えたところで未来を遠く見通せるようにはなりません。皆さんは船の上から深海10,000mを泳ぐ海水魚を見ようとしています。見えるわけないですよね。そんなの、できるわけないじゃないですか。せめて海の中に潜らなきゃ何も見えない。博士課程も同じ。博士進学前から博士修了後の明確なキャリアプランを描けなくて当たり前です。

残念なお知らせがあります。たとえ博士課程に進んだとしても、博士修了後のキャリアプランを描けるようにはなりません。修了から2~3年後の未来なら見通せるでしょう。働く舞台は日本と海外のどちらを選ぶか。ポスドクをするか、正規職を得るか。大学や国研、政府に企業など、様々ある選択肢の中でどこに身を置いて働くか。この程度のことなら決められます。

しかし、10年後の未来までは見えません。どこで何をしているやら想像もつかないでしょう。
皆さんは大学受験へ合格したとき、ご自身が博士進学する未来を描けましたか?私は見えませんでした。絶っっっっっ対に修士就職すると思っていた。どれだけ先が見えても5年後ぐらいまで。大局観のある人なら何十年先も見えるのかな。凡人の私には5年先を見るので限界でした。

仮に5年先を見ていても、ですよ。何らかの外的要因がキャリアプランを崩壊させる可能性は十二分にあります。私が英国留学で失敗した例をご覧ください。わざわざイギリスまで行った挙句、研究も人脈形成も収穫ゼロで帰ってきたのですから。こんな未来は留学前に描けませんでした。もし描けていたならイギリスには渡航しなかったでしょう。

未来とは、『今』を積み重ねた末に各々のもとへやってくる新世界のこと

博士修了後の未来を見通せるようになるのは博士修了後。五年後の未来は五年後の自分が知っている。十年後の未来は十年後に明らかになる。

最近、世の中はますます不確実さを増してきました。流行の最先端を走っていたテクノロジーがたちまち陳腐化するようになったのです。今後、未来はもっと見通せなくなるでしょう。どこにも未来予想図はありません。未来社会の設計図は誰も持っていない。仮に苦心してキャリアプランを描いたとします。それは数か月後にただの空想と化して意味をなさなくなるはずです。

このように記すと、未来の到来が何だか怖くなってきますよね。

未来か。やべぇな…

私、将来どうなっちゃうのだろう…

安心してください。大丈夫です。未来を恐れる必要はありません。

未来とは何か。『今』を積み重ねた末に各々のもとへやってくる新世界のこと、です。未来は『今』の延長線上にあります。自分の過去に裏付けられた人生の方向性に則っておのずと決まるのです。未来の方向性は自分で決められます。しかし、未来の顛末までは決められません。研究者になりたくても技術開発者にならざるを得ないことだってあります。未来を決めるのは我々ではない。生まれたときに持って生まれた運命(さだめ)が未来を決めてくれるでしょう。

自分の希望通りの未来を手繰り寄せたければ努力するしかありません。しかし、努力すれば報われるほど単純で優しい社会ではないことは皆さんがご存知でしょう。努力すれば報われるとは限らない。成功したければ努力するしかない。報われるかどうか不明瞭なまま走り続けていなきゃいけない。人生って、本当に苦しいですよね。

メッセージ

キャリアプラン設計でお悩み中の方にメッセージをお送りします。

迷いを捨てたければ『今』に集中しましょう。迷いから解き放たれたければ、スッキリとした人生を送りたければ、『今』を踊り切ってください。過去を気にしてはいけません。未来を恐れる必要もない。『今』へスポットライトを浴びせて作業へ没頭するのです。

将来を悩んだって事態は変わらないでしょう。見えないものを見ようとしても見えないままなはず。であれば『今』を充実させてください。『今』を生き切る。『今』の濃度を高める。『今』の積み重ねで未来はやってきます。どのような『今』を過ごしたかによって未来の質は劇的に変わってくるでしょう。どのような未来が訪れても大丈夫。『今』を目いっぱい生きていく皆さんには幸せな未来が待っています

将来設計したくなる気持ちは理解できます。日本社会は余裕がなくなってきました。失敗がますます許容されにくくなってきたのです。一度きりのチャンスを確実に活かさなきゃいけない。敷かれたレールに乗り遅れるのは許されない。成功するために前々から準備が必要。キャリアプラン設計へ着手する人の焦りは私にも分かります。

焦っているときほど腰を据えて取り掛からねばなりません。いつか成功を収めるために必要なのは『今』を充実させることではないでしょうか。キャリアプランを叶えるために準備していっても良いでしょう。テクノロジーの進化でキャリアプランがたちまち空想と化す危険性を先述しました。未来など考えず『今』を充実させた方がかえって良い未来が待っていそうです。信じるか信じないかはあなた次第。私は『今』を積み重ねる人生を選びます。

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