私が簿記の勉強を始めたきっかけは就活でした。入社を考えていた企業がどんな会社なのか知りたくなって、決算書を開いてみたのです。
企業のIRページから決算書を開いてみたのですが、何が書いてあるのかさっぱり分かりませんでした。売上高と営業利益の違いも曖昧で、貸借対照表に至っては漢字の羅列にしか見えません。これまで論文を何千本も読んできた自分が、たかが数ページの財務諸表に完敗したのです。悔しいというより、もはや笑える。なんじゃこれ。
理系大学院生は研究中心の毎日を過ごしています。朝から実験に取りかかり、得られたデータを解析して、合間に論文を読み込む日々です。簿記なんて文系の人が取る資格だと思っていましたし、研究さえ頑張っていれば社会に出ても何とかなるだろうと、根拠のない自信に包まれて生きていました。決算書が読めないのは、当然の帰結だったわけです。
悔しさを燃料にして日商簿記2級の勉強を始め、なんとか合格しました。資格を取った後にもう一度あの決算書を開いてみたら、以前は暗号にしか見えなかった数字がメチャクチャしっかり読めるようになっていたのです。研究室の外の世界が、急にクリアになりました。
この記事では、理系大学院生がなぜ簿記を学ぶべきなのか実体験を交えながらお話しします。これから就活を控えている方や、研究よりも産業の方に興味がある人などはぜひ最後までご覧ください。
かめそれでは早速始めましょう!
企業の動きを数字で追えるようになった
理系の学生は、モノづくりや研究開発には強い一方で、会社がどうやってお金を回しているかにはあまり関心を持たない傾向があるのではないでしょうか。少なくとも私はそうで、企業というのは優れた技術や製品を持っていれば自然とうまくいくものだと、どこかで漠然と信じていたのです。大学院生あるあるかもしれません。
しかし、現実の企業は、すべてお金の流れのもとに動いています。売上がどれだけあって、コストがどれだけかかっていて、最終的にいくら利益が残るのか。いくら素晴らしい技術を持っていても、利益が出なければ会社は存続できませんし、お金を稼げてこそ生き残る。そんなの当たり前の話なのですが、研究室にいるとなかなか実感がわかないものです。
簿記を学ぶと、企業の財務諸表を読めるようになります。財務諸表というのは、企業の健康診断書のようなものです。売上高や営業利益といった数字の意味が分かるようになると、就活で企業を比較するときの判断基準が増えますし、入社後も自分の仕事が会社全体の中でどこに位置づけられているのかを把握しやすくなるでしょう。
理系は簿記と相性抜群
簿記に対して”文系の資格”とイメージされている方が多いかもしれません。私も最初はそう思っていましたし、正直に言えば少しナメていました。ところが実際にテキストを開いてみると、簿記は極めてロジカルな科目だと気づかされます。
簿記の基本は”仕訳”と呼ばれる作業で、取引を借方と貸方に分けて記録していきます。一定のルールに従って分類し、整合性を保ちながら帳簿をつけていくのです。仕訳は、実験データを所定のプロトコルに従って処理していく作業と、どこか似ている感じがしますね。
実際、理系学生が日常的に鍛えている数理的な思考力やルールベースの推論は、簿記の学習でアドバンテージになります。
簿記の勉強を始めてみると、暗記量の少なさに驚きました。ひとたび仕組みを理解してしまえば、あとは手を動かして問題を解くだけなのです。研究のほうがよほど頭を使いますよ。もし理系学生が簿記を難しいと感じるとしたら、勘定科目の名前を覚えるところくらいではないでしょうか。まあ、有機化学の反応機構を覚えることに比べれば、勘定科目なんて可愛いものですけどね。
せっかく研究で鍛えた論理的思考力を持っているのですから、研究以外のフィールドでも活かしましょう。簿記は、理系的頭脳を最も効率よく転用できる資格のひとつだと思っています。
技術も分かって経営も分かる人材は少ない
私は博士課程を修了し、企業の開発部門で働いています。R&D領域に身を置いていても、純粋に技術だけを追求していれば良い場面はほとんどなく、
- 開発した製品がどれだけのコストで製造できるのか
- 市場投入したときにどの程度の利益が見込めるのか
- 投資に対するリターンは妥当なのか
などと考える必要があります。そう、技術的判断と経営的判断は、常にセットで求められるのです。
ところが、技術と経営の両方を理解できる人材は驚くほど少ないです。技術者は技術のことは分かるけれどコスト感覚が弱く、経営側は数字には強いけれど技術の中身が分からない。両者の間に溝がある企業は珍しくありませんし、弊社でも技術と経営の断絶は日常的に感じます。
だからこそ、理系のバックグラウンドを持ちながら会計の知識も備えた人材は重宝されます。開発案件の採算性を自分で概算できる技術者がいれば、プロジェクトの意思決定はぐっとスムーズになるでしょう。将来的にマネジメントのポジションを目指す方にとって、技術×会計の組み合わせは極めて強力な武器になってくれるはずです。
まだ学生のうちに簿記を学んでおけば、社会に出た瞬間から技術と会計の二刀流を発揮できます。大谷翔平選手と一緒ですよ。「二刀流」って、かっこよくないですか? 少しやる気が出てきませんか? 出ませんか、そうですか。
就活でめっっっちゃくちゃ役立つ
大学院生の就職活動では、研究内容のアピールが中心になるでしょう。面接官は専門性をしっかり見てきますし、研究への取り組み方や論理的に説明する力は高く評価してもらえます。ただ、大学院生の候補者は当然ながら全員が研究をしているわけですから、研究の話だけでは差がつきにくい。
簿記の資格を持っていると、履歴書やエントリーシートの資格欄に簿記って書けるんですよ。資格欄に『日商簿記2級』と書いてあれば、理系大学院生にしては珍しいから、書類選考でけっこう目を引きますよ。
面接でも「なぜ簿記の資格を取ろうと思ったんですか?」と聞かれるでしょう。実際、私もいま勤めている企業の最終面接で尋ねられました。資格取得理由を志望動機やキャリアビジョンと絡めて話せれば、経営やビジネスへの関心を具体的な実績つきでアピールする絶好の機会になるわけです。
簿記は、独学でも十分に合格を狙えます。参考書と問題集を買って毎日少しずつ進めれば、研究の合間でも無理なく勉強を続けられるでしょう。簿記3級なら数週間、2級でも数ヶ月あれば十分に射程圏内です。
理系院生が簿記2級を持っていたら、面接官は間違いなく興味を持ちます。研究で培った専門性に、簿記をひとつトッピングすれば、キャリアは我々の想像以上に広がっていくものです。
まとめ
理系大学院生が簿記を学ぶというのは、研究で鍛えた力に、もうひとつ別の視点を加えるということです。
企業がどうやって利益を生んでいるのかが分かれば、自分の研究や技術が社会の中でどんな価値を持つのかも見えてきます。就職活動においても、研究内容だけでは伝えきれなかった自分自身の幅を示す手段になりますし、入社後のキャリア形成においても会計の知識は長く役立ち続けるでしょう。
簿記の勉強は、参考書一冊とやる気さえあれば今日からでも始められます。研究の息抜きに電卓を叩いてみるのも、なかなか乙なものですよ。研究で疲れた脳に仕訳問題を流し込むと、不思議とリフレッシュできたりもします。オススメです^ ^



















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