早期修了と聞くと、たいていの人は天才の話だと思うんですよね。私も進学する前はそう思っていました。博士課程は標準で3年と決まっていて、それを短くするなんて、地頭が桁外れな人だけに許された芸当だろうと。
ところが、やってみたら違いました。才能ではなく、作業の効率と時間の使い方で差がつきました。地頭より手際のよさ。なんとも夢のある話でしょう。条件さえ満たせば誰でも早期修了を申請できますし、その条件は普通の人でも満たせます。
私は北大博士課程を一年短縮して飛び級修了しました。この記事では、博士課程早期修了を目指すなかで身についた4つの力を、ひとつずつ話していきます。これから博士課程に進む人には準備の参考に、いま締め切りに追われている人には乗り切るヒントになるはずです。
かめそれでは、いきますね。
作業改善力


早期修了をもぎ取るには、3年で出る人より多くの業績が要ります。限られた時間で研究をどれだけ進められるかで成否が決まるため、要するに時間との勝負になります。
博士課程を早期修了するにあたって、仕事のどこに無駄があるかを見つけ、無駄を削る作業改善力が培われました。うまいやり方が見つかってもさらに追求して、もっと速い方法を探し続ける、改善の鬼みたいな状態になりました。洗濯物の干し方まで最適化し始めたときは、さすがに自分でも引きましたけれども。
数字で言うと、博士課程進学の前後で、論文執筆速度は三倍になりました。もちろん、文章力が上がったのもありますが、生成AIを使いこなせるようになったのが大きいでしょうか。スライドづくりも半分の時間で済むようになりました。
効率化をどこまでも積み上げた結果、早期修了できました。無駄な作業を削って、必要なところに時間を集中させたのです。
タイムマネジメントスキル


博士課程は、提出期限とのにらめっこです。学振DCの申請書もあれば、学位に絡む書類もあるし、論文の査読への返答も求められます。何かしらの締め切りがいつも迫っていて、常に集中を求められる環境でした。
早期修了を選ぶと、忙しさがもう一段増します。学位取得の内定が出るまで、年中無休でフル稼働です。データセンターの蓄電池よりも稼働率は高いのではないでしょうか。
締め切りに追われまくるうちに、タイムマネジメントの力が伸びました。抱えている仕事に時間を割り振って、ひとつずつ片づけていく方法が身についたんです。仕事が降ってきたら、終わるまでに何時間かかるかを見積もる。締め切りに間に合わせるにはいつ着手すべきかを逆算する。そこまで決めれば、手と頭を動かす。
やる気や気合いには、なるべく頼らないようにしました。やるべきだからやる、それだけですね。気分を判断材料にしたら、人間はすぐサボってしまいますよ。少なくとも私はサボります。だから、自分の気分は信用しない方針でやっていました。
時間を意識して使い続けたから、早期修了にたどり着けたのだと思います。早期修了を狙うなら、まず時間の使い方を見直すところからかもしれません。
リスクマネジメントスキル


博士課程にトラブルはつきものです。研究計画が崩れたり、論文がリジェクトされたり、体調を崩して実験できない週が出たりと、問題ごとは次から次へと出てきます。しかも、問題に対処している間にも学位審査会は近づいてきて、こちら側の事情とは関係なく、スケジュールは進み続けます。
だからこそ、トラブルを未然に防げるようケアしなければなりません。リスクとなりうる障壁が目の前をふさがぬよう、将来を見据える大局観が要ります。万が一、それでも問題が起きたときには、計画を組み替え方針転換する要領のよさも大事ですね。
私の場合、立ちはだかりそうな危険は、研究と健康のふたつでした。どちらで時間を失っても致命傷になるので、何が起こりうるか、どう避けるか、起きたらどう立て直すかまで、先回りして考える癖をつけました。生まれつきの心配性が、スキルとして前向きに役立つ日が来るとは思いませんでした。
リスクとは、現実化する前に潰すべきものです。万が一、地表にリスクの”リ”の字が顔をのぞかせたたら、その瞬間、ハンマーを振りかぶって叩き壊す必要があります。もしリスクが顕在化したら、対応に追われ、そのぶん研究時間が削られますからね。
問題が生じぬよう気を付けるのも大事ですが、トラブルが起きた後の解決策まで前もって用意しておくと安心です。研究計画はプランAからEまで練り、論文のテーマ案は、必要な数の二倍考えておく。ここまで備えると、たいていの不測の事態は、用意したプランのどれかで受け止められます。
最後までがむしゃらに頑張りぬく力


早期修了は、思っていたより険しかったです。夜遅くまで実験台に張りついた日も、休日を返上してデータ解析に追われた時期もありました。標準でもハードな博士課程を、さらに短い期間でこなすのですから、もちろん相当な覚悟が要ります。
苦しい時期を乗り越えられるかは、理屈抜きで頑張り次第です。
私、D1の後期にイギリスへ留学したんですよ。ところが、訪問先の研究室では実験装置が軒並み壊れていて、滞在期間中はデータがひとつも取れませんでした。わざわざ海を渡って、壊れた装置を眺めに行ったわけです。とてつもなく無駄な時間だったなと感じます。
帰国してからは、失った時間を取り戻そうと、研究にのめり込みました。どれだけ遅れても挽回すればいい。死ぬ気でやろう、どうせ死にはしないのだからと、半分やけくそで突っ走りました。その結果、なんとか予定どおりに要件をそろえられました。間に合うとは思っていなかっただけに、一年飛び級が決まったとき、嬉しさよりも先に拍子抜け感がきました。
もちろん、計画的な努力も大切です。ただ、ときには理屈を脇に置いて突っ走る根性も要ります。考えすぎて立ち止まるより、進んでしまったほうが近道だった、と思える場面は意外とあるものですよ。
「できないかもしれない」と不安になるより、「絶対にやり遂げてやる」と自分に言い聞かせて押し切りましょう。最後まで自分を信じ続け、早期修了のフィニッシュテープを切ってください。





















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