【”まさか”に備えよ】持病を持つ指導教員の元で博士進学する前に考えておくべきこと

北大博士課程を一年短縮修了した技術開発エンジニアかめです。

博士課程にトラブルはつきもの。三年間を思い通りに過ごせる人はごくわずかでしょう。自分自身、投稿論文が四回連続でリジェクトされました。学部時代から貯めてきたお金を使って向かったイギリス留学では、訪問先ラボの実験装置が全て壊れていて何もできずに帰国。そもそも、D1の一年間、共同研究先の都合で一切の実験を行えなかった。これほど悲惨な目に遭う人は少ないでしょう。しかし、ラボで過ごしていれば何らかのトラブルに見舞われるのは確実です。

研究の屋台骨が壊れることがあるかもしれません。皆さんを日々ガイドしてくださっている指導教員が倒れる可能性も考えられます。彼らが戦闘不能に陥った途端、我々博士候補生の研究は止まるでしょう。研究方針を相談しようにもできない。論文添削をお願いしたくても無理。博士論文の主査さえ務まらないかも。博士課程の修了は絶望的。途方に暮れる未来を容易に描けます。

私の指導教員は持病をお持ちでした。今日はピンピンしていても、明日のコンディションはどうだか分かりません。普段より少し先生の通勤時間が遅れるだけで(大丈夫かな…)と心配になったものです。こういう人に限って無茶をする。周りの不安をよそに365連勤。そんな先生の姿を見てますます不安が募りました。「この人、自分の博士課程在籍中に倒れてしまわないか?」と懸念したわけです。先生に倒れられたら学位を取れません。万一、倒れられてもどうにかなるよう備えておく必要がありました。

この記事では、自身の実体験をふまえ、持病を持つ指導教員の元で博士進学する前に考えておくべきことを記しました。健康状態の懸念がある指導教員のもとへの進学を考えている方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

三年間、元気に研究指導していただけそうか

持病にも程度があります。日常生活に支障をきたさないレベル。薬があれば他の人と同様に生活できるレベル。自立して歩くのが難しいレベル。寝たきりになって他人の介助が必要なレベル。

皆さんの指導教員はどの段階でしょうか? おそらく、他の人と同じように生活できるレベルだと思います。私の先生もそうでした。傍から観察していれば何の問題もなく暮らしているように見える。”持病がある”と伝えられていなければ持病の存在にも気付かなかったはず。この調子でいけば大丈夫そう。三年間、元気にやってくれるだろう…

シミュレーションが甘いです。少々悲観的に考えてみましょう。

持病をお持ちの先生方が元気なのは、薬で症状を抑え込んでいるから。高血圧なら血圧を下げる薬を飲む。心臓がおかしいなら心臓に良い薬を摂取する。消化器官の不調は胃腸薬を服用する。このように、みな、薬を飲んで症状を何とかしているのです。

薬はだんだん効かなくなってくるもの。症状抑制のため、もっと強力な薬に変えるか、もっと多量の薬を飲むかの二択を迫られます。いずれにせよ、身体へのダメージは大きくなるでしょう。持病の症状を抑えこめても他の場所がおかしくなってくるのです。やがて、全身がボロボロに。最終的には先生方のお身体が研究したくてもできぬ状態になります。

ただでさえ人間は加齢に伴い身体機能が劣化していきます。まして、薬の常用で身体への損傷を増幅させている先生方のお身体は加速度的に壊れていくでしょう。大学教員は多忙。休む時間がほとんどありません。身体がおかしくなっていくのを知りながら休めぬ苦しい状況に陥っているのです。自分の先生もかなり老け込みました。配属直前に拝見した五年前のお姿とはまるで別人のよう。

博士進学前に考えておくべきは、「先生は三年間、元気にいてくださるだろうか」というもの。加齢と薬の影響を加味して少々悲観的に考えてみてください。三年経てば人間の身体は驚くほど動かなくなります。スタミナが落ち、気力が落ち、忘れっぽくなり、髪が抜け落ち、ゲッソリやつれ果てていくでしょう。自分自身は健康体。しかし、博士課程で加齢に伴い記憶力がガタ落ちしてショックを受けました。私でさえ衰えるのです。40~50代の指導教員が衰えないわけがありません。

皆さんの先生は元気にいてくれるでしょうか? 今までと変わりなく指導してくださるでしょうか? D進前によくお考えください。

先生がダウンしたときどうするか

指導教員が健康に何の支障もきたさず三年間過ごしてくださるのが理想的。健康であれば問題ありません。何も心配しなくて済むでしょう。しかし、我々の指導教員のお身体には時限爆弾が。平穏な日常がいつ崩壊するか予断を許さぬ状況です。

物事をとらえるときは二つの観点から考えましょう。すなわち、「最良のシナリオ」「最悪なシナリオ」です。

当記事で述べる最良のシナリオとは、先生のお身体に何のトラブルも起こらず自身の博士課程を終えられるケース。こちらの場合へは特に対策する必要はありません。順風満帆で結構でしょう。修了式で先生を胴上げしてもいいかもしれませんね。最悪のシナリオとは、先生のご持病が悪化してダウンする可能性。指導を受けたくても受けられない。論文投稿に支障をきたす。そのとき、皆さんならどうしますか? 研究を続けますか? それとも、やめますか?

せっかく博士課程まで行ったのです。何とかして学位取得までこぎつけたいですよね。指導教員がダウンしても研究を続ける方法はあります。同じ研究室にいる別の先生や、同専攻内における他研究室の先生へ指導教員になってもらいましょう。

今まで指導教員から受けていた丁寧な研究指導を期待するのは難しいかもしれません。なんせ、相手は皆さんの研究の門外漢なのですから。今まで以上に自力で何とかする姿勢が求められます。もはや甘えは通用しません。一人で道を切り拓いていく決心と強い意志が求められます。新たに指導教員を見つけられれば論文投稿が可能になるでしょう。査読対応を一人で行うのは大変かもしれません。どうにかしてアクセプトまでこぎつけ、業績を積み上げ博士論文提出要件をクリアしてください。

研究を続けられなくなったらどう転身するか

心配性な方は、悲観的なシナリオの悲観的シナリオまで考えておくと良いかもしれません。

私は”超”が付くほどの心配性。石橋をたたいて叩き割り、自分で橋をかけ直すぐらいの用心深さ。指導教員のダウン後、新たな指導教員を見つけられぬ事態まで考えていました。本当にそんなことが起こりうるのか? おそらく起こらないでしょう。起こらぬかもしれないけれども、一考する価値を感じて脳内シミュレーションしていました。

指導教員がダウンした。新たな指導教員も見つけられなかった。我々はみなし子。あるいは戦争孤児。研究を続けたくても続けられません。博士課程を辞めざるを得ないでしょう

大学院中退後はどうするか。いかにして身銭を稼いでいくか。どこかで働くしかありません。それには民間企業が適しています。仮に最悪中の最悪の事態が起こった場合、企業への就職活動をしていました。学位は修士。修士人材としての採用を希望していたでしょう。『20代後半』の修士人材。会社からの需要はそこまで高くありません。自由応募での勝率は低いかも。所属専攻の推薦枠を使わせていただいて企業への滑り込み就職を狙っていたはず。

本当は先生がダウンしても博士課程を最後まで完遂したいですよ。学位を取り切るのが先生への恩返しになると思うから。けれども、研究を続けられぬ場合は仕方がありません。気持ちや想いの強さだけではどうにもならない。皆さんも、博士課程が頓挫した場合に備えてシミュレーションしておくと良いかもしれません。頓挫時に気持ちを整理して落ち着ける準備までお忘れなく。

最後に

持病を持つ指導教員の元で博士進学する前に考えておくべきことをお伝えしました。「まさか」の事態は油断している時に訪れます。博士課程最大の危機が自身の身に起こっても対処できるよう準備しておきましょう。

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