広島生活春夏秋冬vol.3|クヤクショランドで転入手続き!浮きぼりになった広島の弱点とは

広島市民になるには

広島市民になるには所定の手続きがある。学術論文が査読を経て掲載されるように、広島市民になるのにも正式な過程がある。それは、どのような生命体だろうが例外はない。ローマ法王にも、ビル・ゲイツにも、おたる水族館のゴマフアザラシにも同じ手続きをふんでもらう。

まずは市電で八丁堀のお好み焼き村までご足労願う。お好み焼き村には、お好み焼き界最強の神々が鎮座している。オタフクソースで手を清めよう。衣服か髪の毛かおしぼりでソースを拭い、「私は命にかけても広島”風”お好み焼きとは呼びません」と宣誓していただく。「もし”風”を付けて呼んだりしたら、口の中に一生口内炎ができ続けても文句を言いません」と続ける。神々は「そうかそうか、そこまで言うならおぬしの心意気を認めてやろう」とニンマリ笑顔で頷くだろう。

次に、カープかサンフレッチェのユニフォームを買う。どちらもスポーツショップで手に入る。立ったり座ったりするのが好きならカープのユニがオススメ。叫んだり飛び跳ねたりするのが好きならサンフレッチェの方がいい。私はサンフレ派。大学生になってからサンフレッチェが好きになった。2025シーズンチケットを買うほどの熱中ぶり。札幌から広島へのUターン就職を決意させた最も大きな理由がサンフレッチェ観戦だった。

最後に役所で手続きをしよう。転入届やマイナンバーカードの住所変更、印鑑登録などをサクッとこなしていただく。この記事では、区役所での転入手続きの模様をお届けする。

クヤクショランドへ

役所手続きは対面で行う。居住地の最寄り区役所へ行っていただきたい。転出届はマイナポータルで出せるようになった。しかし、転入届は窓口でしか提出できない。自分でもちょっと何を言っているのか分からない。両方ともオンラインで済ませられるようになればいいのにね。

10時ごろ、区役所へ向かった。窓口にはすでに10人以上の待機者が。役所内はピンポーン、ピンポーンと騒々しい。まるでクイズ大会でもやっているみたいだ。「暗証番号は?」「37564!」「ピンポーン!」「やったー(*≧∀≦*)」なんとも恐ろしい会話である。

幸い、自分はマイナポータルから来所を予約済み。転入手続き者の行列をすり抜け、直ちに手続きしていただけた。それでも書類完成には時間がかかった。役所を出たのは午後1時半。区役所の中に3時間半も居た。それだけ時間があったら、広島から新横浜までのぞみで行ける。これでは並びに行ったようなもの。まるでディズニーランドみたいじゃないか。『広島の舞浜』とでも呼ばせてもらおうか。いや、浦安か?いやいや、分かりにくいか。今後、当シリーズ・広島生活春夏秋冬では、区役所のことを『クヤクショランド』と呼ばせていただく。クヤクショランドの”クルー”は老人の対応で忙しそうだった。

クヤクショランドには食事する場所がない。舞浜にはある。クヤクショランドにはない。クルーの皆さんはどこでご飯を食べているのだろう。もしや光合成でもしているのか。蛍光灯で昼食レベルのカロリーを産み出すとは!なんというエネルギー効率!さては熱力学の法則をぶち壊しにきたか。

トヨタさん、NIMSさん、産総研さん!一度クヤクショランドを訪れてみて欲しい。皆さんがいま懸命に開発中のペロブスカイト電池を効率面でぶち抜いてきたぞ。今後はクヤクショランドのクルーを自動車のルーフ(天井)へ貼り付けて走行する方式が流行るだろう。ペロブスカイト電池は環境に悪い。廃棄時の環境リスクが甚大だ。クルーは環境にとてもやさしい。何といっても、埋めれば数年で土に跡形もなく還ってくれるから。

私は博士課程で二次電池材料の研究をしてきた。本当にすべきはクルーの生態観察だったのかもしれない。今からでも博士号授与を取り下げてもらおうか。クルー電池の研究をし直そう。何のために蓄電池の研究をしてきたのだか分からない。クルー電池は電気自動車普及に向けたゲームチェンジャーとなりうるだろう。日本車メーカーの復活、待ったなし。クルーの早期補充も待ったなし。

転出超過数が多い理由は、クヤクショランドへ入った瞬間に分かった

広島県は転出超過数が全国で一番多い自治体。毎年4万人が転入してきて、5万人が転出していく。この四年間、一万人以上の転出超過状態が続いている。このままいけばあと270年弱で広島の人口がゼロ人になる。広島が消滅する可能性がある。愛する地元が廃れていくのを見過ごせなくてUターン就職を決めた。

札幌で長く過ごしていくにつれ、徐々に地元の良さが思い出されてきた。豊かな自然。温暖な気候。程よい混雑具合。おいしい食べ物。悪い所などなさそうに思える。どうしてみな広島から出ていってしまうのか。自分もかつて広島から離れた者の一人。だから決して偉そうな口はたたけない。しかし、私は広島へ戻ることを選んだ。広島に帰らず、別の地で生きる道を選ぶ方も相当数いらっしゃるよう。

広島の転出超過数が多い理由。それはクヤクショランドへ足を運んですぐ明らかになった。

クヤクショランドは老人ばかり。若い人の姿は数えるほどしか見かけない。ロビーの雰囲気がドヨンとしている。まるで病院の待合室へ足を踏み入れたようだった。
「クヤクショランドなんてそんなものだろう」と思うかもしれない。実際、舞浜のTDLもジジババばかりと野良ネズミに聞いた。しかし、札幌市の北クヤクショランドはもう少し活気があった。自分と同じ20代の学生や子供連れの家族を見かけた。広島のクヤクショランドには若者が皆無だった。まるで生気が感じられない。冷蔵庫から出されて三日経った もやし と同じぐらい萎れている。

広島の特徴を再度思い返してみよう。豊かな自然。温暖な気候。程よい混雑具合。おいしい食べ物。よく考えれば、これらはみな、老人が好みそうなものばかり。若者が好むイベントやイベント施設は数えるほどしかない。名古屋飛ばしならぬ「広島飛ばし」も盛んに行われている。若者が広島で過ごしていて面白さを感じないのかもしれない。

広島の良さは歳を取ってから分かる。私も年齢以上に感性が歳を取り、中年レベルの脳みそが形成されてようやく広島の良さを知った。歳を重ねる前に広島から離れられてしまってはどうしようもない。広島の魅力が分かる頃には別の都市でよろしくやっているというわけだ。
ただでさえ広島県民には進取の気性がある。フロンティア精神が強すぎて、明治時代に北海道の北広島まで開拓へ行ったぐらいだ。私なんかは大学院在籍中に地球の裏側・イギリスまで留学に行った。広島県民は、地元がつまらないと感じたら躊躇なく他の大都市へ出ていく。私もそう。他の人もそう。老人に優しい都市設計をしたツケがいま回ってきているのではなかろうか。

人口動態調査

転出超過数の多さを気にしてだろうか。転入手続きを終えたとき、窓口の方から人口動態調査アンケート用紙を配られた。

広島市南区から札幌市北区へ移住。札幌から再び広島市へ転入する。いたずらで書いたんじゃないかと思われてしまいそう。自分がアンケート処理係だったら、間違いなく外れ値として処理するデータだ。どうして札幌へ移住した?どうして札幌から帰ってきた?憶測が憶測を呼び、検討に検討を重ね、検討を加速して、「やはり外れ値にしよう」と決めるだろう。ここ広島は遣唐使の出づる国。検討の本家本元。検討の切れ味には定評がある。クヤクショランドのクルー全員が遣唐使。国会で何度も観測されたあの切れ味で検討されてしまっては外れ値に分類されるのも致し方ない。

五年後もこの街へ住んでいるか問われた。「わからない」に丸を付けておいた。急に札幌へ飛んでいくようなヤツから「五年後も住んでいます!」と言われても信じないだろう。「分からない」と言っておきながら住む。「住むとは言ったが住むとは言っていない」などと進次郎みたいなことを言わないで済ませたい。わからないとは言ったが、きっと五年後も住んでいるだろう。広島を住むに値する街に変えるのが自分たちの世代へ課せられた使命なのだから。

クヤクショランドで老人の大群を眺めたとき、「広島をどうにかしたい」との思いが湧き上がってきた。このままじゃいけない。何とかしないとマズい。行政が動いてくれないなら市民レベルで何とかしなくちゃ。私の使命はブログを書き続けること。記事を通して私が広島生活を堪能する姿を伝える。20代や30代の青年や盛年へ「オレも/私もこの街へ住んでみようかな」と感じていただくために綴る。滑稽で結構。コケコッコー。まずは広島に興味を持ってくれる人を少しでも増やしたい。

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