北大応用マテリアル工学コース・大学院入試あるある8選【オススメ参考書紹介付き】

北大の応用マテリアル工学コース(応マテ)は、知る人ぞ知る穴場コース。就職は強いのに人気がそこまで高くないという、まるで駅から徒歩15分なのに家賃激安の超優良物件みたいなポジションにいます。不動産でいえば掘り出し物、飲食店でいえば隠れた名店でしょうか。

そんな応マテの大学院入試には、他の工学系専攻とはちょっと違った独特のクセがあります。私は応マテの学部から博士課程まで在籍していたので、その経験をもとに、院試にまつわる「あるある」を8つお届けします。これから院試を受ける内部生はもちろん、外部から受験を考えている方も参考にしてください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

①工学部なのに、数学がない

工学系の大学院入試といえば、数学と専門科目の組み合わせが定番ではないでしょうか。工学をやるうえで数学は不可欠な道具ですから、院試で問われるのは当たり前といえば当たり前でしょう。

ところが、応マテの大学院試には、数学がありません。「え、工学部なのに?」と思われるかもしれませんが、本当にないのです。

材料学という学問は、数学そのものよりも、物理と化学のあいだに位置しています。数学の要素がゼロというわけではないのですが、他の工学系ほど前面には出てきません。実際、応マテのカリキュラムでも、応用数学の講義はB2前期にちょこっとやる程度。その後の講義で応用数学の知識をガッツリ使う場面はほとんどないのです。前期に習って、夏休みが明けても使わないから、B3になる頃にはもう完全に忘れてしまっています。数学が苦手な大学生にとっては朗報かもしれません。

ただし、数学がないからといって院試が簡単かというと、そんなことは全くないんですよ。数学がないぶん、専門科目でガッツリ頭を使います。楽できるポイントが移動しただけで、苦労の総量は変わらないと思ってください。

それから、研究室によっては数学をバリバリ使うテーマもあるので注意が必要です。私の研究テーマではフーリエ変換やラプラス変換が頻繁に登場したのですが、B2で習ってからすっかり忘れていたので、研究を始める前にイチからやり直しました。教科書を開いたら、自分が書いた過去のメモが異国の言語に見え、軽く絶望したのを覚えています。

「院試に出ないから勉強しなくていい」と「研究で使わない」はまったくの別問題です。油断していると、配属直後に痛い目を見るかもしれません。要注意。

②コース上位3割が筆記試験免除になる

応マテの大学院試験は、事前に取得したTOEICスコアの提出、専門科目の筆記試験、そして面接の3本立てで行われます。

ここでひとつ、TOEICにまつわる謎のルールをお伝えしておきましょう。スコアを提出する際、スコアが入った封筒を開封してはいけません。もし開封してしまったら、未開封の原本を取り寄せ直す必要があります。つまり、自分のスコアシートがちゃんと封筒の中に入っているかどうか確認できないまま提出するということです。

冷静に考えてみてください。人生を左右する大学院入試の書類を、中身を確認せずに提出するのです。「本当にスコアシート入ってるよね?」「まさか別の人のスコアが入ってたりしないよね?」という不安が脳内をぐるぐる駆け巡ります。封筒を光に透かして中身を確認しようとした人は、おそらく私だけではないはずです。院試の筆記試験とはまた違った種類の恐怖がここにあります。

そんな恐怖のTOEICスコア提出を乗り越えたら、いよいよお待ちかねの筆記試験対策。とはいえ、成績優秀者は筆記試験の受験が免除になります。私の代では、コース全体の上位3割ぐらいが免除になっていました。私も免除をいただいたのですが、正直なところギリギリだったと思うので、免除にならない前提でしっかり勉強していました。

免除狙いで講義で好成績を狙う戦略は合理的だと思います。ただ、普段の講義を真面目に受けて良い成績を取り続ける労力と、院試対策で一気に追い込む労力と、どちらが大変かは人によるかもしれません。コツコツ型の人は免除狙いのほうが精神的に楽だと思います。一夜漬けが得意な人は、筆記で勝負すればいいでしょう。しかし、院試は一夜漬けでどうにかなるレベルではないので、結局コツコツやるしかありません。

③免除になるかは試験3週間前まで分からない

筆記試験が免除になるかどうかは、院試の受験票が届くまで分かりません。

免除の場合、受験票と一緒に「筆記試験受験免除のお知らせ」が同封されています。そして受験票が届くのは、試験のおよそ3週間前。つまり、夏休みの最初を院試勉強に費やしたあと、ようやく結果が判明するわけです。

しかも、先生方の気まぐれで突然「今年から免除制度やめます」となる可能性もゼロではありません。これまで免除制度が続いてきたとしても、今年から消滅するかもしれない。ひょっとしたら今まで通り免除制度があるかもしれないけれども、なくなる可能性だってゼロとは言えませんよね。だから、仮にどれだけ成績が良かろうが、受験票で免除を確認するまでは勉強をやめるわけにいかないのです。これはおそらく、先生方による巧妙な教育的策略でしょう。

夏休みに放っておいたら、学生が遊びほうけるのは間違いありません。7月の試験が終わった瞬間、脳みそがバカンスモードに切り替わるのが北大生の習性ですから。その点、院試で釘付けにしておけば、少なくとも受験票が届くまでは、学生らを机に向かわせることができます。「免除かもしれないけど、免除じゃないかもしれない」という絶妙な不確実性が、学生を勉強に駆り立てるのです。友達以上、恋人未満ということ。

④筆記試験は講義の期末試験の10倍は難しい

院試の筆記試験は、ハッキリ言ってかなり難しいです。私は免除が決まってから過去問を眺めたのですが、ちょっと何が書いてあるのかよく分からず、サッと閉じて見なかったことにしました。同じ日本語で書かれているはずなのに、まるで古文書を読んでいるような気分。講義の期末試験前にやる過去問とはレベルが違いすぎます。期末試験の難度を1とすれば、院試の筆記試験は10ぐらいあるのではないでしょうか。

期末試験というのは、講義で扱った内容をちゃんと理解しているか確認するためのもの。講義ノートや配布資料をしっかり復習すれば、それなりに対応できます。

しかし院試は違います。講義内容を理解しているだけでは足りなくて、理解したうえで応用できるレベルが求められるのです。知識を詰め込むだけでなく、それを使いこなす力が試される。

B4にもなると、我々は22~23歳。大学受験を乗り越えた10代後半と比べて、長時間机に向かって勉強し続ける体力がだいぶ衰えています。研究室でダラダラしながら作業するのに慣れてしまっている以上、朝から晩まで知識のインプット/アウトプットをするのは相当しんどいはずです。

しかも、院試は人生がかかっています。落ちたら院試浪人です。就活をしていない理系のB4が院試に落ちるとどうなるかというと、行き先がありません。ニートよりも社会的立場が曖昧な存在になります。内定もなければ進学先もなく、人生のエアポケットに落ちるわけです。受験にかかるプレッシャーは相当なものでしょう。

私の同期たちは、そんな難問を各々の人生をかけて解いていたわけです。免除をもらった自分が言うのもアレですが、本当に尊敬しています。率直に、すごいなと思いました。むしろ筆記試験を突破して合格した人のほうが、免除組より実力が高いのではないかとすら思います。免除組なんて、学部で習ったことなど、ほとんど忘れてしまっていますからね。

⑤筆記試験は3時間×2の長丁場

応マテの大学院試は、8月下旬に二日かけて行われます。一日目が筆記試験で、二日目の午前中が面接です。

ここで注目していただきたいのが、筆記試験の試験時間です。午前と午後に分かれて実施されるのですが、それぞれの試験時間が3時間あります。あわせて3時間、ではありません。午前3時間、午後3時間の合計6時間です。もはやフルタイム勤務ではないでしょうか。しかも、あの難易度の問題を6時間、です。体力的にも精神的にも極限状態になるのは想像に難くありません。

3時間×2の試験がどういうものか想像しにくい方は、長い映画を昼休みを挟んで2本続けて観ることを思い浮かべてください。映画ならポップコーンを食べながらリラックスしていればいいですが、院試は頭をフル回転させ続けなければなりません。しかも映画と違って、エンドロールが流れたあとに「面白かった」という感想は出てきません。出てくるのは疲労感と、解けなかった問題に対する後悔だけ。なんと後味が悪い映画でしょうか。

ちなみに筆記試験は、解答が終わった・もう諦めた人から途中退室できるそうです。しかし、人生がかかった院試で途中退室する度胸の持ち主はそう多くないでしょう。

⑥筆記対策にピッタリな参考書がある

筆記試験の対策は基本的に、講義の期末試験過去問や演習プリントから着手します。まずは講義で扱った基礎をしっかり固め、ある程度実力がついてきたら、院試の過去問で腕試しをして、専門知識の理解を深めていく流れです。

ただ、私が過去問を見た感じでは、期末試験や院試の過去問だけで対策が完結するとは思えません。既出の問題がそのまま出ることはまずないですし、基礎から概念を本当に理解していないと手も足も出ないようになっています。「この問題、去年と似たパターンだからこう解けばいい」といった小手先のテクニックが通用しないのです。材料工学の本質的な理解が問われているわけで、ある意味、とてもフェアな試験だと思います。フェアであるがゆえに、ごまかしが効かないという恐ろしさがありますけれども。

事実、毎年、内部生でも何名か不合格になっています。普段の講義を受けていたはずの内部生ですら落ちるのですから、院試の難しさがお分かりいただけるでしょう。

そこで参考書の活用をオススメします。この記事では、参考書をふたつご紹介させてください。

まずは一冊目、『解いてわかる材料工学』。残念ながら絶版になっていて、新品での入手は難しいかもしれません。

本書籍は、材料系の熱力学から金属組織論、状態図の読み方まで、演習を通じて深く理解できる内容です。北大の工学部図書館を徘徊中に偶然見つけたのを思い出し、記載しました。内部生の皆さんは、ぜひ院試対策の際にご活用ください。全ページスキャンしてPDF保存しておけば、返却後もじっくり勉強に使えて便利ですよ👍

解いてわかる材料工学が手に入らない場合、二冊目の『京都大学大学院 材料工学専攻過去問題集』を入手して解いてみましょう。他大学の院試問題を解けば自分の理解の穴が見えてきますし、異なる切り口からの出題に慣れることで応用力も鍛えられるでしょう。

京大の問題だからと身構えないでください。大学院レベルだと北大も京大も問題レベルはほとんど同じですから。本書籍は北大図書館にも蔵書がありますが、手元に自分専用の一冊を置いておきたい方は、最終ページ下部のリンクからお買い求めください。

⑦面接は超オーソドックス

筆記試験がなかなかの曲者である一方、面接はいたってオーソドックス。志望動機や、進学後にどんな研究をしたいかなど、どこの大学院の面接でも聞かれそうなことが中心となっています。「あなたを材料に例えると何ですか?」みたいな変化球が飛んでくることはまずないので、基本的な受け答えを準備しておけば問題ありません。

服装はスーツが通例ですが、私服でも大丈夫です。私の同期には、寝癖ボサボサでほぼパジャマのような格好で試験に臨んだ猛者がいました。前日の筆記試験で燃え尽きたのか、あるいは元からそういうスタイルなのかは分かりませんが、彼も問題なく合格していたので、服装で落ちるということはまずないのではないでしょうか。面接官も工学部の先生方ですから、学生の服装にそこまで厳しくないのでしょう。研究室にスーツで来る学生のほうがよっぽど珍しいわけですし。

ただし、筆記試験の出来がイマイチで合否の当落線上にいる自覚がある方は、念のため身なりを整えて臨んだほうが精神衛生的に良いかもしれません。合格発表のあとで「落ちた原因、もしかしてパジャマだったからでは……?」と悩むのもバカバカしいですからね。

ちなみに、面接には知られざる恐怖があります。学生が面接で受け答えする姿を、その学生の指導教員が同じ教室の後ろのほうで見ているのです。普段は研究室でフランクに話している先生が、面接会場の後方席から「コイツ、めっちゃ緊張してるわ」と言わんばかりにニヤニヤしながら自分を眺めている。想像しただけで緊張が倍増します。なんで同じ部屋にいるんですかね。勘弁していただきたいものです。

しかも先生がたは記憶力が良いので、面接で変なことを口走ってしまったら、卒業するまで一生いじられます。「あのとき面接で〇〇って言ってたよね」と、事あるごとに蒸し返されるのです。面接では指導教員の存在を念頭に置いて、一問ずつ時間をかけて丁寧に答えると良いでしょう。

⑧穴場すぎて、よく後期募集がかかる

これからの時代、国際的な技術競争は加速の一途をたどるでしょう。最先端の製品が数年で陳腐化して、次々と新たな技術が生まれていくのです。そこで、企業各社は、製品の高付加価値化に取り組んでいます。

製品の性能を左右するのは、突き詰めれば材料です。どれだけ優れた設計やソフトウェアがあっても、それを支える材料があってこそ実現します。より軽く、より強く、より耐熱性に優れた材料を開発できるかどうかが、企業の競争力を左右するのです。半導体にしろ自動車にしろ航空機にしろ、材料の進化なくして成り立たない分野ばかり。当然、材料のプロフェッショナルに対する企業の需要は高く、おかげで応マテ学生の就職実績は最高です。

しかし、なぜか応マテの人気は控えめです。総合理系の進路振り分けでも応マテは穴場ポジションを維持しつづけていますし、大学院もまた然りです。

おそらく「材料」という言葉の地味さが原因ではないかと思います。いま流行りの情報科学に比べると、”材料工学”ではどうしてもキャッチーさに欠けますよね。やっていることは最先端なのに、名前で損をしているのです。宇宙航空先端無重力超伝導材料コース、とかならキラキラしているんですけどね。どうでしょうか。(ダサい?)

応マテの大学院である材料科学専攻は、毎年、定員が充足するかしないかのギリギリ状態で推移しています。もちろん、定員割れしたからといって誰でも受かるわけではなく、院試の総得点が6割未満なら不合格です。たとえ定員に空きがあっても、人材の質を確保するための合格基準は揺るぎません。ここは大学としての矜持なのでしょう。

とはいえ、人が足りなさすぎるのも困りものということで、材料科学専攻はときどき後期募集をかけて、追加の受験者を募っています。前期で他専攻に落ちてしまい行き場を失った方は、最後の望みを託して後期の院試に挑戦してみてはいかがでしょうか。

就職が強くて、しかも後期募集もある。穴場のなかの穴場が、あなたを待っているかもしれません。人生、どこに活路があるか分からないものです。

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