81. 応用マテリアル工学コースがある
ここで唐突に、私の出身専攻を宣伝させてください。
北大工学部には応用マテリアル工学コースがあります。名前だけ聞くと「何それ」だと思いますが、ひとことで言えば材料の科学です。金属、セラミックス、半導体など、世の中のあらゆるモノを支える素材について幅広く学べます。
私はここで電気化学を専攻し、リチウム金属の電析挙動を研究していました。電池の中で金属がどんなふうに析出するかをひたすら観察する、かなりマニアックな世界に身を置いていたのです。顕微鏡の中でリチウムが枝状に伸びていく様子を、何時間でも眺めていられました。これが研究の原動力なのか、それとも単なる性癖なのか、未だに判断がつきません。
材料工学は学問の交差点にあり、物理と化学の両方の要素を兼ね備えた、絶妙な立ち位置のサイエンス。材料に興味がある受験生は、総合理系で入学したあと、移行先にぜひご検討ください。
82. 水産学部は函館キャンパス
北大の水産学部は函館にキャンパスがあります。二年次までは札幌キャンパスで講義を受け、三年次に上がるタイミングで函館に引っ越すのです。余談ですが、水産学部の先生方は、水産学部二年生のために毎週札幌まで行って講義するらしいです。めちゃくちゃタフですよね。尊敬します。
函館は海の街です。朝市で食べる海鮮丼は格別だし、五稜郭の桜も見事。函館山から見下ろす夜景の美しさは言うまでもありません。コンパクトな街に見どころがぎゅっと詰まっています。水産学部の講義では船に乗って海で行われる実習もあるそうで、札幌キャンパスとは完全に別世界の学生生活ですね。
ちなみにまたまた余談ですが、水産学部のとある学科の某研究室だけは、函館ではなく札幌にラボがあるようです。どうしても札幌から離れたくない、函館に住んだけどやっぱり札幌がいいという方がよく志望するみたいですよ。札幌の沼の深さは、将来の専門領域をも左右するのです。
83. 科研費の獲得規模が国内上位
科研費というのは国から研究者に交付される研究資金のことで、北大は採択件数・金額ともに全国トップクラスの実績を持っています。
「研究費の話なんて学生には関係ないのでは?」と思うかもしれません。実は、めちゃくちゃ関係あります。研究室に資金が潤沢にあれば、必要な試薬も装置も買えるし、学会出張の旅費も出る。逆にお金がないと、実験したいのに材料が買えないとか、国際学会に自腹で行くはめになるとか、なかなか切ない状況が発生します。
私のいた研究室では幸い金銭面での苦労はほとんどなく、学会で他大学の院生から「予算がなくて測定できない」と聞いたときは申し訳ない気持ちになりました。研究にお金は要ります。夢と情熱だけでは済まされず、現実を直視しなければなりません。これは研究に限った話ではないのですが、研究の世界ではとりわけ身に染みます。私は試薬の値段を見るたびに、なぜ文系を選ばなかったのかと一瞬だけ思います。一瞬だけです。一瞬だけ。
84. 理系を中心に大学院進学率が高い
北大の理系学部では、卒業後に大学院へ進む学生が多数派です。工学部に限れば、学部卒で就職するほうが少数派と言ってもいい。修士課程に進むことが特別な決断ではなく、自然な流れとして受け入れられています。
大学によっては、理系でも学部就職する人の方が多い所もあります。そういう大学では「大学院、行きたいのに、言っても大丈夫かな…」と悩むことになるでしょう。
北大理系に関しては、周囲がほぼ全員進学するため、あとは流れに身を任せるだけ。主体性がないと言われればその通りかもしれません。ですが、人生の大きな選択における精神的ハードルが低いのは、結果的に多くの学生をプラスの方向へ導いていると思います。周囲に流されて大学院に進んだ結果、博士号まで取ってしまった人間がここにいます。流されるのも悪くありません。流された先が、良い場所ならば。
85. 大学院の研究環境が整っている
大学院に進学すると、研究の世界が開けてきます。北大の院は研究設備の充実度が高く、やりたい実験があるのに装置がないといった悲しい事態に遭遇する確率は低いです。
私がいた工学院には共用施設があって、学部生の頃は存在すら知らなかった高価な分析装置がずらりと並んでいました。初めて見たときは、小さな子どもがおもちゃ屋に入ったような気分でした。全部触りたい。全部使ってみたい。もちろん使いこなすには相応の知識と訓練が必要ですが、たくさんの選択肢があるというのは、研究者にとって何よりの贅沢なのです。
指導教員との距離が近いのもありがたかった。毎週のゼミで進捗を共有し、困ったときはすぐに相談できる環境がありました。放置されすぎず、監視されすぎず。大学院生にとって理想的な距離感だったと思います。たまに詰められましたが、それは自分が悪いので。先生、厳しく指導してくださり、ありがとうございました。
86. 留学プログラムの選択肢が豊富にある
北大には、交換留学や短期プログラムをはじめ、海外へ飛び出すチャンスがたくさん用意されています。協定校の数は多く、行き先に困ることはまずないでしょう。
…と偉そうに書いている私には、博士課程に入るまで留学経験がありませんでした。大学が留学プログラムを用意してくれているのを知らなかったのです。もったいないことをしたなぁと後悔しています。
私は博士課程に入ってからイギリス留学しましたが、留学を通じてモノの見方や発想の枠が広がりました。人間としてのスケール感が一段も二段も高まったような気もします。脳みその中身が強制アップデートされたような感覚で、大変有意義な経験でした。
北海道はあまりに快適すぎて、外に出る動機が薄れがち。札幌で不自由なく暮らせてしまうからこそ、大学が制度として海外への扉を開いてくれているのはありがたい仕掛けだと思います。これを読んでいる北大生がいたら、留学は行けるうちに行ってください。行けたら行くではもったいない。行く気がなくても行っておいた方がいい。そう言っておきながら、博士に入るまで行かなかった人間の言葉ですので、説得力については各自でご判断ください。
87. 博士課程の経済的支援が充実してきた
博士課程の学生は貧乏で、大変な思いをして日々研究しています。つい最近まで学費も免除にならず、JASSOから奨学金を借りながらひもじい暮らしをしていた方が多くおられるのです。
近年、北大でも博士学生への経済的支援が充実しつつあります。フェローシップ制度や日本学術振興会特別研究員DCの採用実績も増えていきました。北大では、フェローシップや学振DCに採用されれば学費免除になるシステムまで誕生し、旧来の博士=貧乏といったイメージが過去のものになりつつあります。
私は幸い学振DC1に採用されたおかげで、博士課程の生活費を確保することができました。国からいただいた研究費を使って在籍中にイギリス留学もできました。北大は博士人材を大切に育てる大学なので、博士課程進学まで視野に入っている学生は北大を検討してみてはいかがでしょうか。
88. 就職実績がしっかりしている
北海道の大学は就職で不利なのでは…? と心配する声をときどき聞きます。大丈夫です、杞憂ですから。
北大のキャリアセンターには毎年、全国から企業が説明会や個別相談に訪れます。旧帝大の看板はやはり強くて、道外の大手メーカーや総合商社もわざわざ札幌まで足を運んでくれるのです。企業の方から「ぜひ弊社に来てください」とアピールしてくれる世界ですから、心配は要りません。
特に理系修士は就活で困ることがまずありません。推薦制度も充実していて、推薦枠を使えば選考プロセスが短縮されることもあります。自由応募で挑むもよし、推薦で手早く決めるもよし。同期も先輩も、名の通った企業にどんどん決まっていきます。文系でも北大ブランドは健在で、道内の金融や公務員はもちろん、道外の大手企業にも北大文系出身者は数多く進んでいます。
「でも面接のたびに東京まで飛行機で…」と心配するかもしれません。最近はオンライン面接が主流になったおかげで、地理的なハンデは一昔前よりもかなり小さくなりました。最終面接だけは道外の本社で受ける場合もありますが、交通費は企業が負担してくれるのが一般的です。立て替えが必要になるので、就活前にある程度まとまったお金をためておくと安心でしょう。
89. 就活面接で「北海道の冬を乗り越えた」がウケる
就活の面接には”学生時代に頑張ったこと”を聞かれるフェーズがあります。いわゆるガクチカですね。サークルのリーダー経験やアルバイトの工夫を語る学生が大半ですが、北大生には隠し技があります。『北海道の冬を生き延びた』です。
マイナス10度の中を自転車で通学した話、吹雪の日にホワイトアウトして帰り道がわからなくなった話、凍結した路面で派手に転倒してリュックの中の卵が全滅した話。面接官が本州の人であれば、だいたい食いついてくれます。冬のエピソードは聞いている側にとって新鮮で、場の空気が和らぐのです。
もちろん面接はエピソードトークの面白さで決まるものではありません。しかし、「この学生、タフそうだな」という印象を自然に残せるのは悪くありません。極寒の地で数年間サバイブした事実が、ストレス耐性のさりげないアピールになるのです。就活生のみなさん、冬の苦労はちゃんとストックしておきましょう。ネタの宝庫ですから。
90. 冷めて聞いていた「都ぞ弥生」に、いつの間にか泣かされる
北大には都ぞ弥生なる歌があります。もともとは恵迪寮(後述)の寮歌として生まれた歌ですが、今では北大全体の象徴的な存在になっています。
初めて聞いたのは、入学式のとき。そのときの感想は「なんだか古風な歌だなぁ」といったものでした。メロディも歌詞も明治の香りが全開で、正直なところ、現代を生きる自分の感覚とはだいぶ距離がある。”なぜみんなそんなに盛り上がれるんだ”と冷めた目で見ていた時期すらあります。
都ぞ弥生には、北海道の豊かな情景を想起させる魔力が秘められています。北大祭や記念行事で大勢が肩を組んで歌う光景に何度か立ち会ううちに、不覚にもグッときてしまう自分がいました。博士課程の頃にはすっかり口ずさめるようになっていて、博士の学位授与式では自分が一番大きな声で歌っていましたよ。
北大を離れた後も、大学時代を思い出したい時はボソッと口ずさんでいます。
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