世界三大料理とは、トルコ・イタリア・スペイン料理である。
トルコは、ガラタ橋下で食べられるサバサンドが抜群に美味しい。魚缶3000日連続摂取ギネス記録を持つ私でも認める旨さである。イタリアはパスタやピザが良い。行ったことはないが、サイゼリヤで食べた感じから察するに最高である。スペインは、オランダの次に行く国なのだが、きっとパエリアが美味しいであろう。お米の下にギッシリ敷き詰められた黒鍋は抜群の噛み応えである。
それではオランダ料理はどうか。世界からの評価は、可もなく不可もなくといったところである。名物らしい名物が無いので、評価の使用がないというワケであろう。私もオランダの料理と聞いてハッと思い浮かぶのは、ミニチュアダックスとダッチーズぐらい。オランダならではの料理なんて一つも挙げられない。

チャッピーにオランダ名物を教えてくれと頼んだら、「スタンポットを食べるのが**筋がいい**」と返ってきた。スタンポットってなんやと尋ねると「行けば分かるから」と返ってきた。質問されすぎて答えるのが面倒になっとるやないか。おい、しっかりしてくれよ。月1.7万円も払ってんだから、マシな返事を頼むぞ。
筋がいいオランダ料理屋をチャッピーに探させた。アムスといったら ココ というほど有名なお店があるそうで、電車乗り放題券で急行した。残念ながらもう大行列ができていた。列というか人の群れができていて、行列値を求められないほどの混雑だった。無念。
私は行列が大の苦手である。何かサービスを受けるために待つだなんておぞましいのだ。こんな性格だからディズニーなどまやかしだと思っているし、夢の国なんかないと考えている。そうはいってもスタンポットを食べたい。お店はないかなとあたりを見渡したら、人気点のすぐ向かい側にあった。開店時間直後とあってガラガラだった。


海外でひとりレストランに行くのは初めてである。基本的にスーパーで何か買って食べていただけに、入店するのは緊張した。店内は落ち着いた雰囲気で、店員さんが優しく、肩の力がすぐフッと抜けた。
スタンポットはお店の看板メニューらしい。んで、スタンポットにも色々種類があるようで、野菜たっぷりのスタンポットや、肉を混ぜたスタンポットもあり、そもそもスタンポットって何なんだろう、何にでもなれるメタモンみたいなヤツかと思いながら店員さんを呼んだ。
「スタンポットを食べたいんだけど」
「いいねぇ、どれにする?」
「そもそもスタンポットって、なんなん笑?」
「食べてみればわかるよ、美味しいよ」
「それじゃあ、一番トラディショナルなスタンポットを持ってきてよ」
「よしきた。美味しいのを作って来るから、待っててね!」

何が出てくるのかハラハラして座っていた。20分待って、料理が出てきた。「ねぇ、コレっていったい…」「楽しんでね!」行っちゃったよ。
何かの上にウインナーが載っていて、デミグラスソースがかかっている。問題は、”何か”が何かである。果たして正体は何なのか。チャッピーも店員さんも口を閉ざしている。何というか、これは、その、えっと、もう、何なんだろう。まぁ、黙って食えということであろう。
ナイフを入れると、抵抗感なく柔らかに切れた。注意深く断面観察すると、ジャガイモの欠片とみじん切りされたキャベツが見えた。あ、スタンポットってポテトサラダのことなのか。なんだ、最初からそう言ってくれよ。羊の脳みそをつぶしたやつかなとか、変な妄想したじゃないか。怖かった~。
口に含むと強い酸味がした。酸っぱいエキスが鼻を抜けて表に出、味わったことのない味覚に包まれた。なんかチーズっぽいし、辛子っぽいし、友達以上恋人未満みたいな味がする。格別美味いかといったらそんなこともない。日本のスーパーの総菜コーナーで売られているポテサラに味の素をかけて食べた方が美味しいわ。
じゃあソーセージにも何か秘密があるのか。おそるおそるかじってみると、こっちは普通のソーセージだった。ソーセージはソーセージでも極太なソーセージで、どんだけあるんやというほど大きかった。ポテサラ様の白い生地とソーセージを交互に食べた。8割ほど食べたあたりで、飽きてしまった。残したらもったいないし、頑張って食べきった。
これで€20(約3700円)だった。ちょっと高い。

さて、お待ちかねの叡智タイムである。アムスは風俗産業が発達しており、世界じゅうの夢見る男たちがアムス美女を抱くべくこの街に集結する。カーテンが開いた丸窓の建物でサービスが行われていることが多いらしい。ただし、夜の街が本格化するのは22時以降。明るいうちはまだ賢者タイムである。
叡智タイムまでアムス市内の博物館を見て回ろうかと思っていた。未明に発見した拷問博物館とか、叡智の歴史を学べるミュージアムとかへ行こうと考えていた。歩くたびに腹の中でスタンポットが揺れる。腹の中のリトルスタンポットが「ちょっと休もうや」と待ったをかけてくる。おいおい、アムスまで行ってなんで休まなきゃいけないんだよ。さあ行こうぜ、どこまでも。
腹をなだめて歩き出す。今度は、腹の中のリトルスタンポットが暴れ出し、口から出ていこうとした。素晴らしいマッシュルームの店にも行きたいし、叡智タイムを満喫したいのに、身体が指示に従ってくれない。はよ宿に帰って休めとのメッセージなのか。いやぁ~、口惜しいな。行きたいのに。
アムスの運河を眺めながら検討に検討を重ねていくにつれ、お腹の調子が落ち着いてきた。身体が楽になったと思ったら、今度は眠気が襲ってきた。ハイネケンでごまかしていた眠さがここにきて顕現した。まぁ、出国してから全然寝てないしな。機内では隣に座ったおばちゃんの読書灯で眠れず、野宿は野宿で厳しいものがあった。仕方がない、か。叡智はバルセロナに行っても楽しめるしな。最悪、帰国したその足でススキノに行けばいいし。
ならばせめて素晴らしいマッシュルームのお店に行こうと、街中を探し回った。あった。緑のネオンが煌々と輝き、素晴らしい香りがプンプン漂っている。お店の中では白煙が舞っているようで、すごい効果が期待できそうだと胸を膨らませた。
入るか入るまいか逡巡していたとき、中から男性客の「ウォァー!」というものすごい声がした。表情が見えたので観察すると、どうやら絶頂に至ったらしい。プルプル震えているその様子からも、相当気持ち良いのが伺える。ならば私も、と思った途端、男性が立ったまま身体をよじり出した。右にぐにゃっと曲がったかと思えば、その次は左へ、また右へ曲がっている。仲間も心配そうな様子で、「おい、大丈夫か!」と絶頂男性のほっぺたをピチピチ叩いていた。
クスリは気持ち良くなれる所までは良いが、副作用で身体がおかしくなる。使い過ぎればひとりで立てなくなる。私の中にも正気が残っていたらしく、”やっぱやめとこうかな”と引き返した。
クスリの副流煙の効果か、ホステルでは泥のように眠った。



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