【世界道草紀行#12】なぜ、人は暴走バスに乗りたがるのか

アムステルダムは、空港野宿とホステル泊の2泊で後にする。時間とお金さえあれば国内を巡ってみたかったが、お生憎さま、そこまでの余裕はなく、短期滞在にとどめておいた。

今回の旅では、オランダ以外にも行きたい場所がある。アムスはあくまで旅の経由地であって、目的地はバルセロナとオックスフォードである。アムスではハイネケンツアーを満喫できたし、もう充分楽しんだ。

悔やむとすれば、真珠の耳飾りの少女を見られなかったことだろうか。耳飾りの少女を観に行ったところ、まさか同時期に大阪の特別展で展示されているだなんて思わないじゃない。大阪に居るなら居るって教えてくれよな。あと、フェルメールが過ごしたデルフトにて、デルフトの眺望を生で見てみたかった。ちょっと悔しい。

ウダウダ言っても始まらない。気持ちを切り替えて旅を続けよう。早朝5時にホステルをチェックアウトし、宿から歩いて10分、ほふく前進なら50分のところにあるバス停に向かった。

昨日、空港から移動するときは知らなかったのだが、アムスの中央駅とスキポール空港はバスで結ばれているらしい。そのバスには、アムス市内の一日乗車券を使って乗車できるのだそう。空港-中央駅間の電車の運賃は€7.5で、一日乗車券は€10である。

昨日はトラムに何十回も乗り、すでに乗車券の元は回収している。そのうえ空港バスまで使えば、利用者の私の方が相当得する計算になる。本当にこんなに乗っていいのか、一種の搾取ではないかと心配になるレベルである。アムスはどんだけ太っ腹なのだろうか。角界入りする日は近い。

アムス市街と空港を結ぶ245系統バスは、早朝のみ数本走っているとのこと。私はそれを知っていたから、このバス停に近いホステルを取ったのだ。そんなことはちっとも無くて、チャッピーに「その乗車券を使って空港に行く**筋がいい**方法があるよ!」と昨夜教えてもらったおかげで、空港バスに乗ることができた。

バス停では何名か旅行者が立っていた。みなアムス空港に行くらしく、大きなリュックサックやスーツケースを持っている。近所の公園へピクニックに行ってきまーす♪ と言わんばかりな小さいリュックを背負う人は私しかいない。たった15Lのリュックでよく10泊の海外旅行に出たな。恐れ知らずにもほどがあるわ。

乗車口で一日乗車券を読み込み、空いている座席に座った。全員が座ったのを確認し、運転手が出発した。

電気駆動のバスはキュイーン!! と高いモーター音を発して急加速した。さすがに速すぎやろと思い、遠目にスピードメーターを眺めたら、出発から4秒で100キロになっていて三度見した。路線バスが市道で100キロっておかしいやろ笑。

100キロぐらいにしておけばいいのに、110、120とまだまだ上がっていく。Gが強すぎて背もたれに押しつけられ、胸が苦しくなった。怖いって。ハリーポッターに登場する真っ赤な暴走バスもこんな感じだったのか。ハリーはさぞ恐ろしかったろうな。

私が怖いぐらいだから、他の方もさぞ怖がっているだろうと思い、周りの乗客の表情を伺った。皆さん、え、何がおかしいの、普通っしょと言わんばかりにケロッとしていた。オランダではコレが”普通”なのか。私が如何に温室育ちだったか思い知らされた。周りを見渡す挙動不審な私を見て、首をかしげる乗客もいた。

バスに乗ってしまった以上、私とバスは一蓮托生である。般若心境を唱え、空港に無事着くよう祈るしかない。バスは高速に乗るとさらに速度を上げた。おそらく160キロは出ていたのではないか。アベレージ160キロなんて大谷翔平でも無理なんよ。さすがに1広末(180キロ)までは届かなかったが、とにかくものすごいスピードが出ていた。

手すりにしがみつき、「頼む、無事着いてくれ…」と祈った。私の日頃の行いが良いおかげで、五体満足のままスキポール空港に着いた。何か所か大回りで寄り道したはずなのに、走破時間は20分だった。昨日、ほとんど同じ道を特急電車は寄り道無しで15分で走破した。特急列車より速いバスって何なんよ、本当に。ひょっとして、運転手さんはトイレに行きたかったんかな。

オランダとスペインはともにEU圏内であり、出入国手続きはない。ほとんど国内線と同じ要領で飛行機に乗れてしまう。飛行機の出発ギリギリに行ってもよかったのだが、空港内を探検したくて早めに着いておいた。

昨日の野宿でスキポール空港の中はだいたい見て回った。どこにトイレやウォーターサーバーがあり、どのコンセントが充電できるかも把握したが、唯一、屋上の展望デッキだけはまだ行けていなかった。展望デッキは夜間に封鎖されるため、アムス出発時に見ようと思っていた。

暴走バスの加速度が身体に残っているらしく、視界がフワフワ揺れている。本当に気持ち悪くて、外の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、気分を一新した。寒い。

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あたりが明るくなってきた。空はうろこ雲に覆われ、青空は見えず、太陽の姿も伺えなかった。太陽の方向は霧に包まれているのか、薄くぼんやりとしていた。

駐機場にはKLMオランダ航空の青い機体が目立つ。KLM以外の便はほとんど見当たらない。さて、私が乗るブエリング航空の機体はどこにあるのだろうか…

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