こんにちは。札幌と筑波で蓄電池材料研究を行う現役北大院生のかめ (M2)です。
B4当時の私はゼミで全く発言できず、

早くゼミ終わってくれないかなぁ…
とある種のむなしさを感じながら出席していたものでした。
しかし、大学院修士課程に進学し、指導教員や書籍などから質問するコツを知って以来、毎回のゼミ発表において数個質問できるようになりました。
この記事では、全然質問できなかった私がポンポン質問できるようになった方法を実体験からお伝えしていきます。
本記事のターゲット層は
- 質問したくてもどうやって質問をひねり出せばいいか分からない、現在絶賛お困り中の学生さん
- そんな学生さんを指導する立場にある上級生さん&教員様
こうした方々を想定しています。
この記事が一人でも多くの質問者を生み出すキッカケとなることを願い、本記事を始めていこうと思います。



それでは早速始めましょう!
質問をする意味って何だろうね?


質問できるようになった方法をお伝えする前に、そもそも質問する事にはどういう意味があるのかについて、私なりの解釈を記していきます。
研究は『問い』を設定する所から全てがスタートいたします。
- こういう常識がまかり通っているけれど、それって果たして本当なのだろうか?
- この側面から研究した例は多くあるが、別条件で実験してみたらどうなるのだろうか?
このように、”当たり前”とされていることを疑ってみて、そこを起点としてまだ人類の誰も知らない知見を獲得しに行くのが研究活動の真の姿なのです。
研究は行き当たりばったりになりがちですが、そのスタート地点は必ず自分で設定します。
たとえ卒論研究程度の小さなスケールの研究であろうとも、”この一年間で何を解決するか”を決めないと研究を始めることすらできないのです。
ゼミで質問をするのには、研究をするにあたって最も肝心な”問い”を打ち立てる力を身につける目的が秘められています。
質問すれば質問するだけ益々”問う力”が向上していきますし、たとえ学部生でもゼミで一年中質問し続けていれば独力で研究テーマを思いつく着想力を養うことだって可能なのです。
したがって、ゼミで先生が



○○君、何か質問ありますか?
と聞いてきたら、それはピンチどころか着想力を高める絶好機だと考えて下さい。
だから今後は質問するのを嫌がるのでなく、むしろドンドン積極的に質問に乗り出していって頂ければ先生も大喜びだと思います。
ゼミで質問できるようになった5つの方法
とはいっても、この記事を読んで下さっている方の中には



そんな簡単に質問が思いつかないからこの記事に辿り着いたんじゃないですか…!!
とお考えになった人がいらっしゃるはずです。
そこで以下では、私がゼミで質問魔になるにあたり習得した5つの考え方についてお話しします。
一時の恥などかき捨てろ!


もしかすると、質問が苦手なそこの貴方は、質問するのがなんとなく恥ずかしいから質問をためらっていらっしゃるのではないでしょうか?
そんなあなたに伝えたいのは、そんな恥じらいなんて捨てちゃいなさいというメッセージです。
あなたが仮にゼミでピント外れの質問をしても明日になれば皆忘れていますし、もしその場で笑われても(覚えておけよ、絶対見返してやるからな…!)と反骨心をエネルギーに変えれば良いんです。
恥じらいなんて研究力を高める妨げにしかなりませんから、そんなものはさっさと拭い去るか鉄鋼所の高炉に投げ込んでしまうべきですよ。



でもなぁ、最上級生にもなってこんな基本的な質問をしていたら後輩に笑われちゃうだろうしなぁ…
こうお考えの上級生さんもいらっしゃるかもしれません。
ですが、上級生さんだからこそ、簡単な質問でもためらわずガンガン手を挙げて欲しいんです。
上級生が質問をためらうと後輩はゼミ内に漂う”気軽に質問できない雰囲気”を敏感にキャッチして質問できなくなっちゃいますし、その後輩の質問力が低いとその翌年に入ってくる後輩も基本的な質問をためらうようになりかねません。
このように、したい質問があるのに質問を躊躇するのは悪影響しかもたらしません。
ですので、貴方に少しでも研究室や日本の科学界の将来を想うお心がございましたら、恥を恐れずどんどん質問をしていただきたいんです。
基本的な質問をされた場合、発表者の立場としてもありがたく感じます。
小難しい質問をされるより遥かに答えやすい上、自分の理解があやふやな点についてハッと気付かされることがあるからです。
ただ、枕詞として「素人質問で恐縮ですが…」と付けられると、それに答える側としては超厄介です笑
それが稀に素人質問ではなく、研究の核心をストレートに突く鋭い質問のケースがありまして、”素人質問”に答えられなかった発表者は公衆の面前で赤っ恥をかかされてしまいますから、質問する方はなるべく「素人質問ですみませんが…」と言わずに疑問を投げかけてくれると発表者側は大いに助かります。
分からない事を分かるために専門分野をある程度勉強する


次に、先ほどのケースとはうって変わり、”何が分からないか”も分からない場合の方策を伝授します。
何が分からないかを言語化するには、その分野に関してある程度の知識が必要となります。
私は電気化学を専門としており、毎日1報ペースで電池研究の論文を読んでいるから電池関連の話題にはおおよそついていけるのですけれども、いきなり数学者に



ねぇねぇ、岡潔先生の多変数函数論についてなんだけどさ…
と議論を吹っ掛けられても、いかんせん全く背景知識がないので全く対話できないのです。
このように、ゼミで何が議論されているかすらつかめない場合、その分野に関する知識量が不足している可能性がすごく高いです。
なので、まずは図解シリーズや簡単な教科書を読み込み、頭の中で知識の種を蒔き育ててあげると良いでしょう。
用語が全く分からない場合、しばらくゼミで話を聴き流していると、自ずと時間が解決してくれます。
要は専門用語を聞き慣れていない(経験値不足)だけでありまして、ある程度専門分野に馴染んでくれば、単語の拾い聴きだけで話の大筋を掴めるようになってきます。
私の場合、B4最初期のゼミはまるで外国語を聞いているかのように完全に理解不能でした。
専門用語を一切知らなかったので上級生の皆さんが何を一生懸命議論しているか見当すらつきませんでしたし、あまりにも分からなさ過ぎて匙を投げ、メモをとるのも諦めたぐらいです。
しかし、分からないままでは悔しかったので、電気化学分野の図解本と教科書の計2冊を熟読してみました。
その結果、ゼミで聞いたことのある専門用語の意味を知り、B4の7月に行われた中間報告では大学院の先輩に対してプレゼンを聞いていて抱いた疑問点をぶつけられるまでになったのです。
ゼミで質問できるようになるためには、研究室配属後のなるべく早い時期に、専門分野の概観を頭に詰め込んでしまうのが最も効率的だと感じます。そうすれば初回のゼミから最低限プレゼンの話の流れだけでも理解できますし、(オレでも/私でも理解できた!)という小さな喜びがその後の学習を著しく進捗させてくれるのです。


好奇心を意図的に解放する


大学受験生時代を思い出してみると、我々は余計な事を考えるのを禁止され、最短距離で正解にたどり着く訓練ばかり繰り返し行ってていましたね。
なぜならば、わき道に逸れてしまえば問題を時間内に解ききれないし、取るべき点を取らなければ定員から漏れて不合格となるため、否が応でも最もシンプルかつ手間のかからない経路で問題に挑まざるを得なかったからです。
しかし、そのような訓練ばかりした結果、我々は小さい頃に育まれた
- なんで?
- どうして?
- どうやったらそうなるの?
といった素朴な好奇心をいつの間にか失ってしまいました。
もっと正確な言い方をすると、せっかく育まれた好奇心を胸の内に埋没させてしまったのであります。
今後ゼミで質問を積極的にしようと思えば、胸にしまわれた好奇心を発掘し、意図的にさらけ出してやる必要があるのです。
好奇心の表面を覆うサビを取り去り、刺激を与えて活性化してあげなくてはならないのです。
好奇心を表に出すためには、誰かの発表中に(どうしてこう主張できるの?)とか(本当にそうかな?)と考え続けるのが効果的です。
たとえそのプレゼンがどんな内容であろうとも、不思議なことに、なんで?どうして?と考えているうちに少しずつワクワクしてきちゃうのです。
”自分で考えても分からない事を聞く”のが質問ですから、少しでも疑問に思った点を「すみませーん」と手を挙げて解決するだけでOKであります。
この訓練を繰り返していくうちに好奇心に磨きがかかってきて、質問力が養われるのも時間の問題となってきます。
自分事で聴く&何かを質問する前提で発表を聴く


発表を聴く時、あなたはそれを他人事であるかのように聴講してはいませんか?
もし(どうでもいいや)(さっさと終わってよ)と内心思いながらゼミに出ていたら、おそらく何年経っても質問力は上がらないままだと思います。
ゼミを自分にプラスな時間にしたければ、他人事ではなく自分事で聴く必要があるのです。
分からない事が出てきたらその点について質問するという受け身の姿勢ではなく、そもそも何か質問する前提で話を聞くという能動的な姿勢で参加するのです。
私の場合、このマインドセットを手に入れて以来、質問せずに終わった回は過去に一度もありません。
もしかすると、”質問しなきゃ殺される”と自身にプレッシャーをかけているのも、質問をひねり出せる一因かもしれませんね笑
攻めの姿勢だと(研究力を高める絶好のチャンスだ!)とアグレッシブにゼミに挑めるため、質問をした際のディスカッションが実のあるものになりやすいです。
『質問する前提で話を聴く』、ぜひ今度のゼミでトライしてみては如何でしょうか?
どうしても質問できなくて困った時は「何が分からないか分かりません」と素直に言う


ここまで4つの考え方を紹介してきましたが、それでもどうしても質問が思いつかない方がいらっしゃるかもしれません。
また、そういう時に限って「○○君、何か質問して」と、心を見透かされたかのように司会役から当てられてしまいがちです。
私にも全く質問がひねり出せなかった時期があり、一度指名された時は滝のような冷や汗が出たものですが、私はその苦境を



大変恐縮ですが、”何が分からないか”が分かりませんでした。○○理論についてもう一度詳しく教えてくれませんか?
と言って乗り切る事に成功しました。
正直な話、再度説明されても全く理解できませんでした笑
ですが、もし自分にとって大切な発表だと思って聴いていれば、もう少し本質的な質問ができたんじゃないかなぁと反省させられた次第です。
それ以降は心を入れ替えてゼミに出席し、平行して自習も進めていき、前述のように毎回のゼミで質問できるようになったのです。
最後に
私が質問できるようになった5つのマインドセットに関してはコレで以上となります。
おさらいすると、
- 一時の恥などかき捨てろ!
- 何が分からないかを分かるため、図解や教科書で最低限の知識を仕入れておこう
- 意図的に好奇心を解放しよう
- 自分事で聴く&質問する前提で話を聴こう
- もし当てられたら「何が分からないか分かりません」と素直に言っちゃえ
これらが本記事の要点となります。
仮に質問を思いついたとしても手を挙げる勇気が必要となるため、皆の見ている場で質問をするのはかなりハードルが高い行為なのではないでしょうか?
しかし、一度勇気を振り絞って質問してしまえばすぐに慣れてくるため、みなさんには是非最初の障壁を乗り越えていただき、ゼミを契機に問いを立てる力を育んでいって貰いたいです。
以上です。
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