北大博士課程を早期修了した電気化学系企業研究者かめです。B4の三月に国際誌で筆頭論文を出版しました。
近年、生成型AIの普及により、言語の壁が急速に溶けつつあります。英語論文を記す労力が大幅に低減して執筆が楽になったのです。実際、修士学生の英語論文執筆例が増加しているように感じます。今後は学部生のうちに論文を出そうと目論む野心的な学生が顕れるでしょう。学部時代に出版業績を培っておくことは、修士課程以降の成長の伸び度合いに繋がります。また、学振DC1や将来のアカデミア研究職内定にも有利に働くでしょう。
この記事では、学部生が学部卒業までに査読付き主著英語論文を出版する方法について、実体験をふまえて解説します。少しでも早く論文を出版したい意欲的な学部生にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧いただければと思います。
かめそれでは早速始めましょう!
【研究テーマ】成果を多数出した実績のあるものを選ぶ


多くの国公立大学では学部四年次に研究室へ配属されます。学部時代に論文を出すには、専門分野の基礎や実験手順を最初の一年間で学び、そこで成果を出して投稿までこぎつけねばなりません。B4のうちに出版できるかは運次第。努力2割-運8割の世界。相当運が良くなければ出版できないでしょう。努力ではどうにもならない壁があります。
では、運はどのように関わってくるでしょうか。出版の成否を最も大きく左右するのが「研究テーマ」の運になります。
成果を出しやすいテーマを得られれば出版できる可能性が見えてくるでしょう。歴代の先輩が成果を多数出してきた実績があるため、実験やデータ考察の方法論が確立されていて、誰がやっても成果を出していける体制がすでに整っているのです。成果が出るけれども時間がかかるものや、成果の出にくく難しいテーマをあてがわれたら出版できないかもしれません。
B4のうちに論文を出すには血反吐の出るような努力が求められます。悲しいことに、先生からどのテーマを貰えるかは運次第。「B4のうちに論文を出したい」との希望を抱いて研究室に入れるかどうかも運。
学部卒業までに論文を出版したければ、成果が次々と出てくるのが見込まれる研究テーマを選ぶようにしてください。研究テーマへの関心も当然重要です。内容よりも成果創出難度の観点からテーマを見定めるべきです。研究室配属前に指導教員と一対一で話して研究テーマを相談してみるのをオススメします。B4のうちに論文を出したい野心を伝えれば、先生方は喜んで協力して下さるでしょう。
【実験】これ以上頑張ったら倒れるんじゃないかというほど頑張る


研究テーマとのマッチングをクリアしたら、次はいよいよ実験に取り掛かります。
論文を出すには、論文中に掲載する図表用のデータを集めねばなりません。一報の論文を作るにあたっては沢山のデータが必要です。一日や二日では到底出し終えられません。継続的に実験していく自発的努力が求められるでしょう。サボらず、コツコツ計画的にデータを取りためるのが近道です。裏ワザや隠しルートはありません。愚直に淡々と実験していくのが王道にして最短ルートです。
B4での論文出版に不足しがちなのが作業時間です。基礎学習や実験技術をおさえてから実験に着手する以上、B4のうちに実験を行える期間は限られてきます。使用可能な時間の密度をどれだけ高められるかの勝負になるでしょう。
時間の問題を解決するには、限界まで頑張るしかありません。倒れる寸前ぐらいまで追い込んで実験してデータ収集速度を高めましょう。もちろん、ゴミデータばかり集めても意味がありません。たとえどれだけ頑張ったとしても、それが成果に繋がらなければ論文は出せないですからね。先輩や指導教員とのミーティングを重ねて、実験精度や実験方針を適宜見直しながら進むようにしてください。丁寧かつ素早く。方向転換は迅速に。テキパキ行動すれば道が開けてきます。
視野が狭く、猪突猛進しがちな方は特に気を付けるようにしてください。頑張るだけで良いのは高校生まで。研究室配属以降は、成果が出るような形で頑張らねばならないのです。
【論文執筆】先輩が書いた論文の構造をマネて記す


めでたくデータを集め切りました。いよいよ肝心の論文執筆です。
最初は何から取り掛かればいいやら分からないかもしれません。図表をどのようにまとめればいいのか。データをどのように考察すればいいのか。要点をまとめるアブストラクトや結論部分はどう記すか。そもそもイントロへ盛り込むべき内容はいったい何だろうか。英語論文の具体的記し方については、巻末の関連記事をご覧ください。その要点だけ述べると、
- 図表を作る
- 図表を読み取って考察する
- 結論を記す
- 図表を論旨が最も明快になるよう並べ替える
- 実験方法を記す
- イントロとアブストラクトを記す
このような形になります。
学部生のうちの論文出版にこだわるなら、論文へ”強烈な”目新しさを求めてはいけません。
論文化にあたって、多少の新規性は必要です。しかし、世の中をガラリと変えるほどのハイインパクトな論文の作成は目指さないで下さい。オリジナリティ抜群な論文を記すにはものすごく時間がかかります。私自身、M2の10月にIF24の雑誌へアクセプトされた論文は、原稿執筆だけで半年以上も費やす超長期戦になりました。B4が執筆に半年も使ったらM1になってしまうでしょう。それだとB4での論文出版には至りません。
B4のうちに論文を出版するには、先輩の記した論文をマネするのが一番です。データの載せ方や考察の仕方などを参考にして論文を作って下さい。文章や内容を丸ごとパクったら研究不正ですから、先輩による先行文献を自分のアタマで咀嚼し、手持ちのデータを掲載するのに相応しい新たな形を考えましょう。内容ではなく「構造」をマネするのです。論文がどのような論理思考で成り立っているのかを徹底分析したら、自ずとヒントが浮かび上がってきます。
【査読対応】先生に泣きついて助けてもらう


出来上がった論文を学術雑誌に投稿すると、投稿論文の査読が行われます。
投稿された原稿は、まず雑誌編集者がざっと目を通して確認します。彼らが問題ないと判断したら、今度は原稿が査読者の元へ回され、専門家らの目によって、一か月ほどかけ内容が徹底的に精査されるのです。査読終了後、査読者から何らかのコメントが返ってくるでしょう。査読対応を終えることで論文がアクセプトされ、雑誌へ掲載されて出版に至ります。
査読者からのコメントは千差万別です。内容を称賛してくれるモノもあれば、ボロクソに、けちょんけちょんに批判してくるものも。一つ一つのコメントへ丁寧に返信しましょう。誠意をもって応待すれば大丈夫ですよ。相手も一人の人間ですから、自分のコメントに対応してもらえたら喜ぶし、アクセプトを支持してくれるでしょう。
査読者の指摘があまりに高度すぎて、彼らが何を言っているのか分からない場合があるかもしれません。そのような時は、先輩に、無理なら先生へ頼って解決を試みましょう。


















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