週刊オックスフォード§5　メンタルが上昇傾向に。おいおい、勝手にワシのバターを食うんじゃないよ笑！

【33日目・リア幸30】11/3 (金)：ワシのバターを勝手に食うな…！！！

イギリスの祝日

11/3は文化の日。自由と平和を愛する大和民族の健全な精神を醸成するための日。ただし、それは日本だけの話。イギリスに文化の日などなく、今日も元気にみんな朝から様々な場所で働いている。日本は年間9日の祝日が。①元旦、②成人の日、③春分の日、④天皇誕生日、⑤憲法記念日、⑥こどもの日、⑦秋分の日、⑧文化の日、そして⑨新嘗祭である。イギリスの今年の祝日も9日。2023年における祝日を箇条書きすると、

1. 新年 (1/1)
2. グッドフライデー (4/7)
3. イースターマンデー (4/10)
4. アーリー・メイ・バンクホリデー (5/1)
5. チャールズ三世戴冠式 (5/8, 2023年のみ)
6. スプリング・バンク・ホリデー (5/29)
7. サマー・バンク・ホリデー (8/28)
8. クリスマス (12/25)
9. ボクシングデー (12/26)

このような形になる。ちなみにクリスマス翌日の『ボクシングデー』は、街中でバトルロワイヤルが繰り広げられる日ではない。”クリスマスにドンチャン騒ぎを演じるご主人様に使えた召使いが休むための日”として端を発し、今では庶民がクリスマスパーティーによる疲労を回復するための日となった。日本と比べてイギリスの祝日のスケジュールは割とまとまっているように映る。私の場合、散発的に祝日がやってくる方が嬉しいので日本の方が好き。まぁ、平日だろうが祝日だろうが研究室へ行くのに変わりはない。全てを忘れてオフになれるのは博士課程を出て企業に勤め始めてからだろう。

イギリスの祝日で困っているのがバスの運行が止まる点だ。特にボクシングデーや新年はバスが終日運行されないらしく、どうやって10km離れたオックスフォードのラボへ行こうか頭を悩ませている。

ワシのバターを勝手に食うな…！！！

ホームステイ先でホストにチーズを勝手に食われてめちゃめちゃ不愉快になった[週刊オックスフォード§4]。”家に置いていた自分も悪いな”と反省しラボの冷蔵庫に食材を移した。バターにチーズ、ハムにアボカド。冷蔵保存すべき食材をラボまですべて運び込み収納した。占有したのは冷蔵庫の1/6程度のスペース。まぁ、ラボへ毎日真面目に来る人などメンバーの中で私しかいないから、1/6のスペースぐらいは堂々と使用する権利はあるだろう。そもそも私、オックスフォードへ学費として毎月￡767 (約14万円)支払っている。博士学生やポスドクがお金を”貰って”在籍しているし、”払っている”側が冷蔵庫をちょっと広めに使おうがバチは当たらないはず。

ラボの居室で18時まで黙々と作業。太陽がすっかり顔を隠してラボ周辺は真っ暗闇だ。午後から珍しく学生がもう一人来た。何やらひどく真面目な顔でデスクの前にてカタカタとプログラミング。

”そろそろ帰ろうかな”と私は起立し、ぐいっと思い切り背伸びをした。後ろで作業していたプログラミング学生に「先帰るから」と告げようとした。挨拶がためらわれたのは、何やら”ザッ、ザッ”と奇妙でおぞましい音が彼の手元から立てられていたから。彼の手にはパンが握られている。どうやらパンから発された音らしい。 (いったい何の音だ？)と訝しむ。パンの「食わないでくれぇ！」という断末魔だろうか？…なわけがない。じゃあ何だろうか？彼の手元を静かに凝視すると見覚えのある容器が隣に置かれていた。

…ちいと待ってくれ。そりゃあワシがTESCOでなけなしのお金を払うて買うた大切なバターや。何でアンタが使うとると？一体アンタに何の権利があってワシのバターをパンに塗りよるんや？容器にでっかくワシの名前を書いとるやろが、ちゃんと見ろや笑。おのれ、オックスフォード大学の学生のクセにアルファベットも読めへんのか。先週のチーズ失踪事件で募らしたイライラがまだまだちぃとも収まっとらん。あぁ、ブチ切れそうじゃ。日本人に食べ物の恨みを募らしたらどうなるか教えちゃろうか…！！

「おのれ、何やっとるんじゃい！」と叫ぶ寸前で”待って待って！”と自制心が働いた。この学生にいま広島弁でキレ散らかしても良いのだが、ソレをやると私の今後の研究室での居心地が超悪くなる。ここは抑えろ…悔しくても抑えろ。奴らの誇る騎士道がどれだけ汚れたものかを目に焼き付けるんだ。人の食い物を人目を忍んでコソコソ盗んで食べる”紳士 (笑)”の姿を。ふん、こんなのワシらの誇り高き武士道を叩き込むまでもないわ。日本刀で挑まずともデコピン一発で紳士 (笑)を倒せる気がしてきたぞ。学生に「じゃあね」と挨拶をし、ヤツに聞こえるほど大きな声で高笑いをしてラボを後にした。