試験前になると、やたらとラムネを買い込む大学生が出現します。あの行動、実は理にかなっています。脳はブドウ糖を大量に消費する臓器ですから、糖分を補給したくなるのは本能として正しいのです。
せっかくドーピングするなら、徹底的にやりませんか。
スポーツの世界では禁止薬物リストなるものが存在します。うっかり風邪薬を飲んだだけでメダルを剥奪されることもある世界。一方、勉強の世界は完全な自由です。何を食べても、何を飲んでも、試験に受かればそれが正義です。ルール自体が存在しない無法地帯です。
今回は、そんな無法状態を全力で活用するため、勉強に効く食べ物やサプリを7つ厳選しました。コンビニで買える身近なものから、細胞レベルで脳を改造するサプリまで、すべて科学的な根拠に基づいて選んでいます。
かめそれでは早速始めましょう
バナナ


まず最初にご紹介するのは、バナナです。勉強における最大の敵は、途中で集中力が途切れること。バナナは脳に必要な糖質を途切れさせずに補給できます。
バナナにはブドウ糖・果糖・ショ糖という3種類の糖質が含まれています。ブドウ糖は摂取後すぐにエネルギーとして使われ、果糖とショ糖は少し遅れて届く仕組みです。バナナを1本食べるだけで、即効性と持続性を同時に手に入れられるわけですから、短距離走と長距離走を1本でカバーする贅沢なエネルギー源と言っていいでしょう。
さらに、バナナにはビタミンB6も豊富に含まれています。ビタミンB6はセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の合成に欠かせない栄養素で、脳がきちんと働くための裏方として地味ながら重要な役割を担っているのです。
価格は1本あたり数十円。コンビニでもスーパーでもどこでも手に入り、皮をむくだけで食べられます。試験会場にも持ち込めますし、食べた後のゴミはコンパクトにまとまる。栄養面でも実用面でも隙がなさすぎて、弱点を探すほうが難しい食品です。勉強のお供に迷ったら、とりあえずバナナを買ってください。
- NIH Office of Dietary Supplements. “Vitamin B6 – Health Professional Fact Sheet.” (NIH ODS)
- Mergenthaler, P. et al. “Sugar for the brain: the role of glucose in physiological and pathological brain function.” Trends in Neurosciences, 2013. (PMC)
卵


卵が体に良いことは誰でも知っています。ただし、卵の真価は記憶の定着力向上にあります。
卵に含まれるコリンが、覚えたことを頭に残すための神経伝達物質の材料になるからです。コリンは体内でアセチルコリンに変わり、新しい情報を覚えて定着させる効率をぐっと高めてくれます。コリンが足りていない状態で参考書を読むのは、穴の空いたバケツで水を汲んでいるようなものではないでしょうか。
卵1個に含まれるコリンはおよそ150mg。成人が1日に必要とする量は400〜550mg程度とされているので、昼食に卵を2個食べれば半分以上をカバーできる計算になります。ゆで卵なら作り置きもできますし、コンビニでも売っているので手軽さは申し分ありません。
加えて、卵にはタンパク質やビタミンD、ビタミンB12など、脳と体の両方に必要な栄養素がぎっしり詰まっています。かつて広まっていた1日1個までという都市伝説は、近年の研究で覆されました。安心してどんどん食べましょう。
バナナがエネルギーの供給係だとすれば、卵は脳の配線を整備する技術者のような存在。身体にエネルギーを送り込むだけでは足りません。回路そのものを良好に保つことが大切です。
- Poly, C. et al. “The relation of dietary choline to cognitive performance and white-matter hyperintensity in the Framingham Offspring Cohort.” Am J Clin Nutr, 2011. (PMC)
- Nakano, M. et al. “Effects of egg yolk choline intake on cognitive functions and plasma choline levels in healthy middle-aged and older Japanese.” Lipids Health Dis, 2023. (PMC)
緑茶


勉強のお供にカフェインを摂る人は多いですが、大半の人がコーヒーを選びがちです。コーヒーも優秀な選択肢ですが、手の震え、心拍数の上昇、切れた後の脱力感がセットでやってくるのが難点です。
目は覚めたい、でも副作用は要らない。そんな方には緑茶を推させてください。
緑茶にもカフェインは含まれていますが、同時に入っているL-テアニンというアミノ酸がカフェインの副作用を穏やかに整えてくれます。アクセルを踏みながらも車体が安定しているような感覚、と言えば伝わるでしょうか。覚醒しつつも落ち着いている理想的な状態に導いてくれるのが緑茶の強み。
カフェインとL-テアニンの組み合わせが注意力や作業精度を高めることは、複数の研究で裏付けられています。日本人が古来から飲んできたお茶に、これほど合理的な仕組みが備わっていたというのは、なんだか誇らしい気持ちになります。
- Owen, G.N. et al. “The combined effects of L-theanine and caffeine on cognitive performance and mood.” Nutr Neurosci, 2008. (PubMed)
- Dietz, C. & Dekker, M. “Effects of Tea or its Bioactive Compounds on Cognition, Sleep, and Mood: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Nutr Rev, 2024. (Oxford Academic)
ダークチョコレート


受験生の定番と言えばチョコレートですが、集中力と認知機能を高める目的で食べるなら、ダークチョコレート一択です。カカオポリフェノールが脳への血流を増やし、頭の回転を良くしてくれるでしょう。ミルクチョコレートやホワイトチョコレートは甘くて美味しいものの、勉強ドーピングとしての性能はダークチョコレートに一歩及びません。
ダークチョコレートは、カカオ含有量70%以上を選んでください。味の好みよりも、性能で選ぶ時代です。
ダークチョコレートにはテオブロミンも入っていて、カフェインに似たマイルドな覚醒作用を発揮してくれます。また、ダークチョコレートは脳由来神経栄養因子・BDNFの発現を促すこと。BDNFは脳の神経細胞の成長や修復を助ける物質です。ダークチョコレートは脳を今この瞬間だけ働かせるためよりも、脳そのものを育てるために食べるものだとも言えます。
ただし、1日に必要な量はひとかけら程度で十分。食べすぎるとカロリー過多になりますし、何よりお腹を壊します。用法用量を守って正しくドーピングしましょう。
- Sokolov, A.N. et al. “Chocolate and the brain: neurobiological impact of cocoa flavanols on cognition and behavior.” Neurosci Biobehav Rev, 2013. (PubMed)
- Socci, V. et al. “Enhancing Human Cognition with Cocoa Flavonoids.” Front Nutr, 2017. (Frontiers)
青魚


ここまで紹介してきた食品は、脳にエネルギーを送ったり、脳の働きを助けたりするものでした。
青魚の役割はもう一段階深いところにあります。青魚に含まれるDHAは脳の神経細胞膜の材料そのもので、十分に摂ると膜が柔軟に保たれ、細胞同士の信号のやりとりがスムーズになる。結果として情報処理のスピードが上がります。パソコンで言えば、CPUの性能を活かすためにLANケーブルを高品質なものに交換するようなイメージです。
サバ、サンマ、イワシ、アジあたりが代表的な青魚です。特にサバの水煮缶は安くて調理も要らず保存も効くので、自炊をしない大学生にも取り入れやすい選択肢ではないでしょうか。ご飯の上に乗せて醤油をかけるだけで立派な一食になります。
私は青魚缶の偏食家で、大学入学から博士課程修了まで八年間、毎日サバ・イワシ缶を食べ続けました。おかげで20代後半になっても高い記憶力を維持できております。
バナナや卵やチョコレートと比べると、青魚にはちゃんとした食事としての気合いが求められます。ただ、勉強アスリートの皆さんは勉強のためにドーピングしようとしているのですから、食生活ぐらい何とかなりますよね。青魚を食べた瞬間、脳のアスリートを名乗る資格が手に入ります。
- Yassine, H.N. et al. “Omega-3 fatty acids and cognitive function.” Curr Opin Clin Nutr Metab Care, 2023. (PubMed)
- Dighriri, I.M. et al. “Effects of Omega-3 Polyunsaturated Fatty Acids on Brain Functions: A Systematic Review.” Cureus, 2022. (PMC)
クレアチン


ここから先は、食べ物の領域を超えてサプリメントの世界に入ります。
クレアチン。筋トレをしている方にはお馴染みのサプリメントですが、今回は筋肉よりも脳のために摂取します。
脳はATP(アデノシン三リン酸)を大量に消費する臓器で、クレアチンはそのATPの再合成を助けてくれます。特に睡眠不足で脳のエネルギーが枯渇しているときに効果が顕著で、徹夜明けでも認知機能を維持できるという研究報告があります。
摂取量の目安は1日3〜5gで、プロテインと同じように水に溶かして飲むのが一般的。味はほぼ無味で飲みやすさも優秀です。試験前夜に寝不足で迎えた朝の保険として、覚えておいて損はありません。
- Gordji-Nejad, A. et al. “Single dose creatine improves cognitive performance and induces changes in cerebral high energy phosphates during sleep deprivation.” Sci Rep, 2024. (Nature)
- Forbes, S.C. et al. “Effects of Creatine Supplementation on Brain Function and Health.” Nutrients, 2022. (PMC)
PQQ


最後にご紹介するのは、PQQ(ピロロキノリンキノン) 。サプリメント専門店でのみ手に入る、かなりマニアックな存在です。
PQQはビタミンに似た働きを持つ補酵素の一種で、最大の特徴はミトコンドリアの新生を促すこと。ミトコンドリアとは、細胞内でエネルギーを生み出す小器官のことで、中学の理科で「細胞の発電所」と習ったやつです。
ここまでの食品がエネルギーの質やタイミングを工夫するものだったのに対し、PQQは発電所そのものを増設して脳のエネルギー生産力を底上げするという発想。もはや勉強の域を超えて、自分の細胞をカスタムしている感覚に近いかもしれません。せっかくドーピングするのですから、やるからには徹底してやりましょう。
PQQは納豆やピーマン、パセリなど一部の食品にごく微量含まれていますが、効果を実感できる量を食事だけで摂るのは難しく、基本的にはサプリメントでの摂取になります。1日あたり10〜20mgが目安で、Amazonなど通販サイトで購入可能です。
- Chowanadisai, W. et al. “Pyrroloquinoline quinone stimulates mitochondrial biogenesis through cAMP response element-binding protein phosphorylation and increased PGC-1α expression.” J Biol Chem, 2010.
- Nakano, M. et al. “Pyrroloquinoline quinone disodium salt improves brain function in both younger and older adults.” Food Funct, 2023. (RSC)
最後に
バナナから始まり、最後はミトコンドリアの増設にたどり着きました。大学の試験に受かるために細胞内の発電所を増やす。これもまた、立派な勉強法のひとつです。
スポーツにはドーピング検査がありますが、勉強の世界は完全に自由。合格通知に使用サプリメント一覧の提出も求められません。使えるものは全部使って、全力で脳をブーストしていきましょう。あなたの努力を、栄養が後押ししてくれるはずです。

















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