博士の先輩が凄そうに見える後輩へ博士サイドから現実を伝える【99%は凡人】

北大博士課程を早期修了した化学系大学院生かめ(D2)です。来年度から地元の民間企業で技術開発職に従事します。

博士課程で研究していたとき、修士や学士の後輩からこんなことをよく言われていました。
「かめさん、凄いですねっ!どうしてそんなに論文をたくさん書けるんですか?」
「自分なんかはかめさんのようにはなれっこないですよ…」

決して自画自賛したいわけではありません。学士・修士課程の学生目線に立ったとき、博士の先輩がいかにも凄そうに見えることを示しています。周りから”すごい、すごい”と褒められる私も、国研所属の研究者を眺める際は同様の感想を抱きます。「あの人、凄いよな。毎月論文出してるやん」「いったい何を食べたらあんなに頭が良くなるの?」などと職員の実力に舌を巻いてばかり。

確かに年下の後輩から見れば博士学生は凄いかもしれません。目の前に屹立する、頂上が見えない摩天楼のように映るでしょう。しかし、博士学生は本当に凄いのでしょうか? 実際に私は凄かったのでしょうか? 超人なのか、それとも凡人なのか。

この記事では、博士の先輩が凄そうに見える後輩に向けて、博士学生の側から「真実」をお伝えします。博士学生が偉大に見えて博士進学へ二の足を踏んでいらっしゃる方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。

それでは早速始めましょう!

博士課程の先輩はたいして凄くない

博士学生の中にもすごいヤツは居ます。在学中にNatureクラスの成果を何報も軽々と出してしまう人。研究と実業をリンクさせ、学生時代にビジネスを起こしてしまう人。専攻内のどの教員よりも多くの論文を出版している人。挙げだせばキリがありません。すごいヤツは凄い。どこの分野へ行っても突き抜けた連中は一定数存在します。

その他大勢の博士学生に目を向けてみましょう。
彼らはどうでしょうか?客観的に見て凄いですか?博士学生の多くはそれほど目立った業績がありません。学術論文や博士論文を仕上げるのでヒーヒー言っているはず。起業している人などほとんどいない。自身の肉体と精神の限界スレスレで戦っている人たちばかりでしょう。

ハッキリ言います。博士学生の大半は凡人です。それほど凄い人たちではありません。

博士学生が書く上に見えるのは、彼らが『いま』の自分と比べて実力が数段上だから。『いま』の自分が『いま』の先輩と比べて力が劣っているのは当たり前。研究室の中で過ごしてきた時間の長さがあまりに違いすぎるから。真に比較すべきは『未来』の自分と『いま』の先輩の姿。M2やD1の自分が『いま』の先輩と比べてどうなのかを考えてみましょう。

安心してください。皆さんも博士課程へ進む頃には先輩と同等のパフォーマンスを発揮できています。(本当…?)と思ったそこのあなた!理由はあとで述べるので楽しみにしておいてください。

【真実】凄そうに見える博士の先輩も昔はポンコツだった

学士・修士学生の目には、博士学生が凄い先輩に映っているでしょう。あの人に聞けば何でも教えてくれる。知らないものはないんじゃないか。歩く百科事典。ChatGPTの中の人。あるいは動く歩道…それは違うか。いずれにせよ、全知全能を誇る神のように見えているはずです。

真実を記します。今では凄そうに見える博士の先輩も昔はただのポンコツでした
実験をやるたびに失敗の嵐。スライド作成ではミスのオンパレード。ゼミへ寝坊してきた強者な先輩だっているかもしれません。私なんてB4の卒論発表会では、緊張しすぎて質疑応答で言葉を発せませんでしたから。一年後に全国学会で学生講演賞を取りました。今では質疑応答に難がなくなった自分も、かつてはこのような悲惨な体たらくだったのです。

そんな我々がいかにして”凄く”なったか。日々地道に努力してきたのです。
実験は試行錯誤を繰り返して上達していきました。ミスから学び、失敗するたび実験プロセスを見直して確度を向上させていったのです。スライド作成は、数をこなしていくうちに経験値がたまって上達していきます。私のようにデザインの理論本を買って勉強した人だっているかもしれません。質疑応答対策では想定質問を数多く用意しました。考えうる全ての質問に答えられる用意をし、万全の態勢でもって質問を迎え撃つ。

博士学生の95%は凡人です。凡人が非凡な努力を積み重ねた末に今の”凄い”と言ってもらえる博士学生が出来上がりました。

実力は指数関数的に伸びる

皆さんは実力の伸び方をどのようにお考えでしょうか?線形?放物線?三次関数? 私の場合はどうだったか。実力が指数関数的に伸びました。

研究室配属直前のB3終了時における実力を「0」としましょう。B4終了時には「5」ぐらいにまで上がっています。M1終了時には「10」。M2では「20」まで伸びました。私が最も成長したのは博士時代。D1終了時には「50」まで上がりました。早期修了したD2には最高到達点の「100」に跳ね上がっております。

B4終了時の私 (Level.5) がD2終了時の自分 (Level.100) を眺めたとしましょう。凄いと思うか?たいしたことないなと思うか。おそらく「凄いな」と感じるはず。なんせ、実力が20倍も違いますから。研究の進捗速度も受け答えの質も何もかもがケタ違い。”この人みたいになれないな”と感じて当然です。

先ほどサラッと申し上げました。『いま』の自分と『いま』の先輩の実力を比較してはならない、と。なぜだかもうお分かりになりますよね。実力がかけ離れていて当たり前だから。仮に比べても絶望感や劣等感を生むだけでしょう。

実力の伸びは、学生生活が終盤に差し掛かるにつれ飛躍的に増大します。特に博士課程での成長は顕著です。

修士課程までは研究で成果を出さずとも修了できます。一方で、博士課程は成果を出せた人だけが修了できます。修士までと博士以降とでは研究に対する必死さが段違いです。博士課程では研究に将来が懸かっているからやるしかない。プレゼンが苦手なら克服するしかない。文章を書くのが苦手でも、文章術を勉強でもして書いていくしかない。やる気云々を言っていられません。やらなきゃ終わらない。だからやる、ただそれだけ。

毎日懸命に努力していけば、人間の実力はおのずと高まっていくもの。力を上げたくなくても勝手に上がっていきますよ。自分自身、最後の一年間に殻を突き破った実感が。脳味噌が数段グレードアップしたんですよ。寝ている間に中身を入れ替えられたのかと勘ぐるほど思考が深く・速くなった。質疑応答で返答をほぼノータイムで用意できるように。おかげで最後の学位審査会もラクラク乗り越えられました。

学士・修士学生へ伝えたいこと

学士・修士学生へ伝えたいことがあります。
皆さんはまだ発達途上。実力が萌芽した段階に過ぎません。本格的成長のフェーズに入ってすらいない。皆さんの力はこれからグングン伸びていくんですよ。経験値で劣る『いま』の自分が『いま』の先輩に敵わなくて当たり前。努力と経験を重ねていけば、成長段階へ突入し、やがて『いま』の先輩へ追いつく瞬間が訪れるでしょう。

実力とは、伸びる要素(努力と経験)が十分備わったときに爆伸びするもの。努力も必要。経験も大切。これら二つの蓄積量が一定レベルに達したときに飛躍的な伸びを期待できます。成長を焦らないでください。成長!、成長!と鼻息を荒くしすぎないように。

実力カーブの変曲点を前倒ししたければどうすればいいか。日頃の鍛錬を行うのが大切です。皆さんはご自身の長所と短所を把握していますか?長所を伸ばしつつ、弱点を少しでも克服しようとする試みを行っていますか?もしも行っている方は続けてください。行っていない方は今日から始めましょう。

実力向上に効く魔法はありません。自身の成長可能性を信じ、ゆっくりマイペースでやるべきことに取り組んでいくのが重要です。

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