研究室内における博士学生の仕事とは【中間管理職】

研究室は独特の組織構造を持つ世界です。そこでは教員と学生の間に立って重要な役割を果たす「博士学生」がいます。

研究のプロフェッショナルとしての顔を持ちながら、若手人材の育成も担う。時には組織の要として舵取りも任される。その姿は、まさに小さな組織の中核を担う「ミドルマネージャー」と言えるでしょう。

今回は、博士課程の学生が研究室で果たす様々な役割について等身大の視点でお伝えしていきます。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

博士論文研究

博士学生の主たる仕事は自身の研究です。修士までと異なり、研究テーマの設定から実験計画の立案まで、全てを自分の裁量で進めていきます。指導教員はあくまで助言に徹する立場。細かな実験条件の決定から論文の構成までをほぼ全て自分で判断して決めていく必要が。時には教員の意図を先読みし、次の一手を打つことも求められます。研究の成否は全て自分の責任。半端ないプレッシャーを背負って日々研究しているのです。

実験に追われるのは当然のこと。しかし、それ以上に時間を費やすのが論文執筆。投稿から査読対応、リジェクト後の再投稿という長いプロセスを幾度も繰り返します。一報の論文を仕上げるまでに半年以上かかることも珍しくありません。学会発表準備も欠かせないでしょう。研究成果を世に発信するための重要な機会だからです。加えて、共同研究先とのやり取りも重要な職務。メールでの細かな実験条件の擦り合わせから、研究の方向性を決める重要なミーティングまで、教員の代理として対外的な研究活動も担います。

博士課程では時に複数の研究を同時並行で進めることも求められます。ある論文の査読結果を待つ間に別の論文を執筆する場合が。データ解析をしながら新たな実験系の構築を行う。時には三つ、あるいは四つのプロジェクトを掛け持ちするケースも。マルチタスク処理能力や研究進捗管理力が否応なく鍛えられていくでしょう。いずれのプロジェクトも中途半端な結果では許されません。自身の研究だけでなく、研究室全体のプロジェクトの進捗も把握し、必要に応じて軌道修正の提案も行います。

後輩指導

研究室には博士学生だけでなく、学部生や修士課程の学生も在籍しています。彼らの多くは研究の初心者。実験機器の使い方から論文の読み方まで、イチから教えていく必要が。これは指導教員から暗黙のうちに託された重要な職務。実験技術の基礎から最新の研究動向まで、幅広い知識を伝授していくのです。

後輩指導は博士学生の担う重要な役割の一つ。指導教員は多忙を極めており、細かな指導まで手が回らないのが実情です。そこで博士学生が実質的な指導者として機能します。時には後輩の実験データを見て方向性を示唆したり、研究の行き詰まりを解消するアドバイスを送ったり。教員の意図をかみ砕いて後輩に伝える通訳の役目も担うかもしれません。まさに中間管理職としての手腕が問われます。

後輩の卒論・修論研究の進捗管理も重要な仕事です。締切期限に間に合わせるべく、実験スケジュールの管理から論文の添削まで、きめ細かなサポートを行います。投稿論文の共著者として名を連ねる場合は、後輩の研究の質にも責任を負うことになるでしょう。

実験のコツやデータ解釈法を教えるのは基本中の基本。より重要なのは、研究に対する姿勢や考え方を伝えること。研究者としての土台となる部分を育てていくのです。困難に直面したときの対処法や論文執筆時の作法など、教科書には載っていない研究者としてのマナーを伝えていくのです。我々博士人材の負う責任は決して軽くありません。後輩の成長を間近で見守れることは博士学生ならではの醍醐味ですが、後輩の成長度合いが己の教育次第のため大変プレッシャーがかかります。

ゼミ運営

研究室で定期的に開催されるゼミは、研究の方向性を議論する重要な場。博士学生はここでも中心的な役割を担います。指導教員の意図を汲み取りながら、より建設的な議論の場を作り上げていくのです。時には教員に代わってゼミの司会進行を任されることも。限られた時間の中で全員が満足できる議論の場を作り上げる手腕が問われるでしょう。

ゼミでは後輩の発表に対してコメントする機会も多くあります。建設的な批判や前向きな提案ができるよう、自身の知識を常にアップデートしておかねばなりません。指導教員の鋭い指摘に補足を加えたり、時には教員の厳しすぎる意見を和らげたりといった繊細なバランス感覚も必要。発表者が萎縮せず、かつ有意義な議論が展開できるよう、常に気を配っておくのが重要です。

ゼミ後の議論のフォローアップも欠かせません。指導教員からの指摘を後輩が正しく理解できているか確認し、必要に応じて補足説明を行います。また、議論の中で生まれた新たな研究アイデアを具体化する手助けも行うのです。研究室全体の研究レベル向上のため、博士学生は常に気を配っていなければなりません。

後輩からのお悩み相談

研究の話に限らず、進路や人間関係など、様々な相談が後輩から持ち込まれます。博士学生は研究室の相談役としての一面も持ち合わせているのです。指導教員には相談しづらい内容でも、同じ学生の我々には話しやすいようです。研究室の先輩でありながら、教員とは異なる立場から助言できる存在として重宝されます。

特に多いのが進路に関する相談。就職するか進学するか。研究職を目指すべきか開発職にすべきか。こうした人生の岐路に立つ後輩たちの相談に、過去の自分の経験を踏まえながら真摯に向き合います。時には夜遅くまで話し込むこともあるかもしれません。教員の立場からは語れない企業の生情報も、OB・OGとのパイプを活かして提供できるでしょう。

研究室の人間関係に関する相談も少なくありません。同期との確執や教員との関係など、デリケートな問題も持ち込まれます。研究室という密室的な環境では、ちょっとした行き違いが大きな問題に発展することも。そんな時は双方の言い分を丁寧に聞き、第三者的な立場から解決策を模索します。研究室全体の雰囲気を損なわぬよう、慎重に対応していかねばなりません。

研究の行き詰まりから心を病んでしまうケースも多々起こりうるでしょう。時には博士学生が後輩にとっての精神的な支えになります。心を痛めた後輩の機微に寄り添い、適度な距離感を保ちながらメンタルケアを行うのも博士学生の任務の一つ。深刻な場合は、カウンセリングの受診を勧めることも。中間管理職として、組織の潤滑油の役割を果たしながら、後輩たちの成長を支えているのです。

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