北大博士課程を早期修了した化学系大学院生かめ(D2)です。来年度から地元の民間企業で技術開発職に従事します。
修士課程は運命の岐路。企業就職を選ぶか博士進学を選ぶかで二十代中盤の人生が変わります。9割近い方は企業就職を選ぶようです。やりたいことがある、お金を稼ぎたい、ブラック研究室から一日でも早く離れたい、などの理由で。博士進学を選ぶ方はごく僅か。修士学生全体の1割程度。専攻別に見ればD進者ゼロ名の代も珍しくありません。
メジャーな選択肢は修士就職。しかし、修士就職した方はみな博士進学したくなかったのでしょうか? おそらく違いますよね。博士進学にも興味があった。行ってもいいかなとは思っていた。大学の内側でよりも外側で得られる経験に価値を見出した。それゆえに就職を選んだのでしょう。
企業就職を選んだ方の中には、博士進学への想いを押し殺して働き始めた方が居られます。何らかの事情で「進学」ではなく「就職」を決断した人が。もしも私がその当人だったら辛い思いを抱えて過ごしているはず。名刺交換で相手の名刺に”博士”と記されているのを見るたび心の傷がうずく。(あぁ、博士課程へ行っておけば/行きたかったなぁ)と意気消沈するでしょう。
この記事を通して、就職と進学とで迷っている人に伝えたいメッセージがあります。博士課程は辛いけれども、進学への想いにフタをして修士就職したらもっと辛いですよ、と。当記事は博士課程進学を検討中の方にピッタリな内容です。進学への想いを圧殺して就職した方にも役立つでしょう。ぜひ最後までご覧ください。

それでは早速始めましょう!
【実体験】ハッキリ言う。博士課程は辛い!


博士課程を修了した私から実体験をふまえて申し上げます。ハッキリ言って博士課程は辛いですよ。ネット上のいたる所に転がっている『博士課程・辛い説』は真実でした。
思い通りに進まぬ研究で成果を必ず出さねばならぬプレッシャーとの戦い。修了時期が迫ってきているのに、投稿論文が連続リジェクトされて業績を上積みできない。下級生と教員陣との間で板挟みになって身動きを取れない。”落ちたら最初からやり直し”な学位審査会を乗り越えていく労力。博士課程は、今まで経験したどの学校生活よりも苦しかったです。辛さと焦りの度合いは大学受験浪人生活よりも酷かったかもしれません。
博士課程はどれぐらい辛いか。傷口に塩を塗りたくられ、上から電動ドリルでゴリゴリ穴をあけられる状況を想像してください。辛いを通り越して”痛い”んですよね。心が痛む。心のきしむ音がする。崩壊していくメンタルを持ち直そうにも難しい。試練を乗り越えた翌日に次の試練がやってくる。自分自身、「この辛さがいつまで続くのだろう…」と絶望してしまいました。博士課程最終盤にはうつ病の半歩手前な危機的状況に陥ったのです。
博士課程へ行きたかった人が修士就職したらもっと辛いはず


博士課程が辛いのは自明です。私を含め、ネット上の有象無象の体験談がそれを証明しているでしょう。博士課程へは生半可な覚悟では進まぬように。「何があっても必ず学位を取る」「自分には博士課程で成し遂げるべきことがある」などと強い気持ちや使命感を持って進学するのを推奨します。
博士課程よりも辛いものがあります。それは、博士課程へ行きたい気持ちを押し殺して企業就職した場合です。行きたいのに行かなかった人は、就職後、様々な場面で「博士課程へ行っておけば良かったな…」と後悔するのではないでしょうか。先述した名刺交換のシーン。商談で修士人材たる自分の意見が相手の博士人材から軽く扱われる場面。学位の壁に直面して役職昇進できないケース。学位があれば感じずに済んだやるせなさや不満を日々感じさせられるのです。
会社員博士制度があるといっても、ね。制度に採用されるためにまずは会社内の選考を勝ち抜く必要があります。会社のお金で博士課程へ行くなら、博士在籍中の研究は会社の利益に資するものとなるでしょう。何のしがらみもなく自由気ままに研究するのは難しいかもしれません。会社を辞めて博士進学するには途轍もない勇気が必要。修了後はどう生きる? 学位を取れなかったらどうする? 将来設計は大丈夫? 懸念点を挙げだせばキリがありません。
博士進学への想いにフタをして就職したが最後、博士進学の道を歩むのは現実的に難しいでしょう。博士号が欲しい。博士課程へチャレンジしたい。行ってみたい。でも、行けない… 壮絶な心の葛藤に苦しむであろう陰惨たる未来を容易に描けます。博士進学したいけれどもせずに味わう心の痛みは博士課程での辛さの比ではありません。博士課程は努力すれば辛さを終わらせられる。企業へ行った人は、いくら頑張って働いたところで博士進学への道が開けない。
博士進学と修士就職で迷ったら博士進学した方がいい


自分自身もM1のころ、進学と就職とで迷いに迷いました。どちらを選べば後悔しないか。どっちを選んでも「あっちにしておけば良かった」と悔やみそう。ならば、いずれの進路が後悔を抑えられるか。進学? 就職? どちらだろうか。
どちらにしようか考えました。もともと優柔不断な性格です。一日おきどころか、数時間ごとに「D進だ!」「いや、就職だ!」と心が激しく揺れ動いていたのです。検討に検討を重ね、検討を加速して、最終的には博士進学を選ぶことに。博士課程の辛さは許容できる。就職後に「あのとき博士進学しておけば良かった」と頭を抱える人生は受け入れがたかった。
博士進学と修士就職でお悩み中の方にメッセージを伝えます。
迷っているなら進学してください。悩みを抱えていること自体が『博士課程』や『博士号』に惹かれている証であります。確かに進学すれば辛いです。辛さは博士候補生の宿命。進学したが最後、苦しみからは免れられません。しかし、修士就職後に博士進学への想いを殺して働く辛さと比べれば遥かにマシ。博士課程で辛さを味わえるの自体が幸せなことだと感じられるでしょう。
皆さんの前には二つの道が伸びています。我々が立っているのは運命の分岐点。進学して辛さの嵐をやり過ごし、将来にわたって幸せな人生を歩むか。博士課程への想いにフタをして就職し、解決しようにも困難なモヤモヤを抱えながら働いていくか。どちらを選んでも構いません。正解も不正解もない。博士号を取っても偉くもなんともない。皆さんが進みたい道を歩めば良いのです。どちらに進んでも大丈夫。一点、今の選択で今後の人生が大きく変わる旨をお忘れなく。
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