こんにちは!札幌と筑波で電池材料研究をしている北大化学系大学院生のかめ (M2)です。つくばの国研に入り浸らせてもらって日々データを集めています。国研はすごい。北大と全然違う。外装や内装、実験設備など全てが2ランクぐらい上。北大も国研と同じぐらい設備が整えばいいのになぁと何となく妄想。
この記事では、私が研究時間の大半を過ごすドライルームをご紹介します。電池材料研究をしている方にピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

それでは早速始めましょう!
ドライルームとは、めちゃくちゃ乾燥した部屋のこと


ドライルームとは水分量が限りなくゼロに近い作業部屋のこと。ドライルームの露点は-50 ℃以下。水が一瞬で蒸発して無くなります。湿度はゼロ。梅雨でも真夏でも真冬でも同じ。ドライルーム内では電池材料を変質させずに扱えます。リチウムやナトリウム、有機電解液などへのダメージを極小に抑えて加工可能。
ドライルームとグローブボックスはどう違うか?両者の違いを表にまとめてみました⇩
ドライルーム [DR] | グローブボックス [GB] | |
手足の自由度 | ◎ | × |
露点 | △ (-50 ℃) | ◎ (-60~90 ℃) |
服装 | △ (つなぎ) | 〇 (何でも可) |
DRの方が手足の自由度が高い。手がグローブに拘束されてしまうGBに対し、つなぎを着て入るだけのDRでの作業は楽。イライラせずに済みます。とはいえ、水分は圧倒的にグローブボックス内の方が少ない。また、GB内は溶液の大敵・酸素がほぼ存在しません。よって、溶液調合だけはグローブボックス内で行います。コインセルやその他実験セルの組み立てはドライルーム内で実行。
ちなみに、ドライルームの運用費は年間数千万円もするそうです。高いですね… それだけ高性能な設備ということです。
ドライルームあるある5選
最初は20分でギブアップ。体中の水分を全部持って行かれて苦しい


ドライルームあるある一つ目は、体中の水分を全て持っていかれること。最初は20分耐えるのがやっと。苦しくて仕方がありません。目は完熟トマトの如く充血し、皮膚は茹ですぎた鶏むね肉の如くパッサパサになってしまいます。ドライルームの過酷さを増させているのは不織布マスク。呼気からの水分流出を極限まで防ぐため、二重にマスクを着用して入室しなければなりません。ただでさえ水分をとられて苦しい状況なのに、マスクによって新鮮な空気を吸い込む事さえままならない。脱水症状と酸素不足で倒れそうになりながら実験を進めていくしかありません。
徐々に水分を取られない体質に変わる。2~3時間ぶっ続けで作業できるように


ドライルームあるある2つ目は、体が徐々にドライルームへ慣れていく事。脱水や酸欠に耐えながら作業を続けていると、少しずつ目が乾きにくくなります。体から水分が失われにくくなるのです。体質が如実に変化します。いわば『ドライルーム体質』。毛穴が絞まって水分の喪失を抑止。体がドライルームへと適応したのでしょう。ひとたび慣れてしまえばドライルーム内にて2~3時間連続の実験をこなせるように。
冷や汗をかくと露点が一気に5 ℃上がる


ドライルームあるある3つ目は、冷や汗をかくわけにはいかない事。汗をかけば室内の露点が一気に5 ℃近く上昇して警報が鳴ってしまうためです。
皆さんは実験をしていると「あっ、やっちゃった…!」と冷や汗をかくことはありませんか?高価な試料をダメにしたとき、作るのが面倒な実験セルを壊したときなど。我々ドライルーム作業員はいかなる状況に見舞われても冷や汗をかいちゃダメ。かいたが最後アラートが鳴り、たちまちゲームオーバーに追い込まれます。露点の上昇は自分の実験だけでなく、他人の実験データにも悪影響が。同じ部屋の中で実験している限り、露点上昇の影響は他の人にも波及するのです。他の人に迷惑を掛けたら国研を出禁になるかもしれません。それだけはマズい。何としても露点を上げぬよう細心の注意を払って作業しています。
汗っかきの人が隣にいると電極のリチウムが黒ずんでいく…


ドライルームあるある4つ目は、汗っかきの人が傍で作業していたら実験試料が変質していく事。私のリチウム電極は汗っかきの人にしょっちゅう変質させられます。おかしくなった電極を用いて実験しても得られるデータはゴミ。使い物になりません。一生懸命作った実験セルを解体してもう一度作り直す必要が。リチウムは思春期の女子の如く水分に敏感。デリケートなリチウムをなるべく刺激しないよう、室内に人のいない早朝やお昼の時間を狙って一気呵成に実験。
夏場は最高に涼しく、冬場は暖かくて作業しやすい


ドライルームあるある5つ目は、温度以上に涼しく感じられる所。たとえ外がいくら暑かろうともドライルーム内はキンキンに冷えてやがる。梅雨の時期なんて最高。ドライルームの中は涼しくて仕方がない。夏も過ごしやすいですよ。ジメジメとは無縁ですから。ドライルームは国研内の軽井沢。暑くて辛くなった時はドライルームへ涼を求めに行くのが宜しいかと。ちなみに、ドライルームは冬も快適。冬は外より暖かく感じられます。かじかんだ指先だってドライルームに入ればほぐれて動き出す。オールシーズン快適に実験できるドライルームは研究者の心強い味方👍
最後に
ドライルームに関する解説とドライルームあるあるはコレで以上。ドライルームは水分の無さに慣れるまでが大変。慣れるまでは水分の喪失を補うため頻繁に水分を補給して下さい。
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