経営危機の会社に就職した新卒博士が一年目に体感したこと

私が就活で内定を承諾したとき、入社先の経営状況が芳しくないことを知っていました。IR資料にも目を通しましたし、業界内での存在感がそこまで大きくないのも把握していたつもりです。

それでも入社を決めたのは、地元で一番の会社だったのと、自分の専門性を活かせそうだと感じたから。経営が多少厳しくても、技術で貢献すればなんとかなるだろうと。若さゆえの楽観というか、根拠のない自信というか、要するに甘かったのです。

入社して分かったのは、個人の頑張りで覆せるものと覆せないものがあるということでした。経営状況の悪さは後者の代表格です。自分がどれだけいい仕事をしても、会社全体の財務体質が変わるわけではありません。川の流れに逆らって泳いでいるようなものですね。本人は必死に腕を動かしているのに、気づけば下流に流されている。

これから書くのは、経営の厳しい会社に一年在籍し、実際に体感したことです。後輩に話すつもりで書きましたので、就活中の方にはぜひ読んでいただきたいです。

目次

あらゆる仕事が後ろ向きになる

経営の厳しい会社でも、若手に仕事は回ってきます。むしろ多すぎるぐらいに回ってきます。会社が生き残りをかけて必死ですから、入社一年目だろうが容赦なく打席に立たされるのです。

一見チャンスに恵まれた環境に思えるでしょう。しかし、打席に立ってみると、バットが竹刀ぐらい細いと気づきます。事業への投資額がひとケタ足りていないんですよ。予算は限られているのに求められる成果は変わらず、開発スケジュールにも余裕がない。ひとつの案件を片付ける前に別案件の火消しが降ってきます。もはや消防団の新人ですね。ありがとうございます。

経営状況の悪い会社には、既に撤退戦のフェーズに入っているところもあります。新しい市場を取りに行くのではなく、既存事業の延命に全エネルギーを注いでいる。私の会社も延命モードでした。残念なことに、入社してから気が付いた。開発テーマの大半は既存製品の改良やコストダウンで、ゼロから立ち上げる案件はほぼ存在しません。もしあっても、すでに他社に先を行かれていて、特許回避のため莫大な努力が必要になります。

会社全体が延命モードでは、前向きな実績を積むのが難しい。攻めの開発案件がなく、気持ちがどうしても後ろ向きになってしまいます。当然、職務経歴書に書ける成果だって地味なモノばかりです。書けるものがあるならまだマシな方で、意識して仕事を取りにいかなければ、社外でも通じる実績を積み重ねるのはなかなか難しいかもしれません。

精神論に走りがち

経営に余裕のない会社には、地に足のついた長期経営戦略がありません。というか、経営戦略がしっかり機能していれば、そもそも経営に余裕がない状況にはなりにくいはずです。もし戦略があったとしても、数年ごとに方針が大転換し、現場がついていけません。会社は金銭的資源が乏しく、設備投資も難しい。もちろん、人員だって増やせない。

追い詰められた会社が最後に頼るものは、気合いです。「目の前の仕事を頑張れば会社が良くなる!」と皆が目の前の仕事に没頭しています。長時間残業が慢性化し、社内では危機感を持てという声が飛び交い、立ち止まって考える余裕もないまま、全員が濁流に巻き込まれていく。

冷静に考えてみてください。気合いでどうにかなるなら、もうとっくにどうにかなっているじゃないですか。経営が傾くどころか、昇竜拳なのではないでしょうか。気合いに気合いを上乗せしても、出力されるのは より濃い気合い だと思います。検討に検討を重ねても検討しか生まれない。気合いも同じ理論です。役員の皆さま方はお分かりのはずだと思うのですが……

精神論が蔓延した職場では、だいたいふたつの道に分かれます。順応するか、合理的な判断力が残っているうちに別の選択肢を探すか。私は後者のタイプでした。順応しようとしても思考を捨てきれず、博士課程仕込みの理性が顔を覗かせては「おかしいだろ」と言ってくる。理性が魂の叫び声をあげられなくなる前に会社員を卒業したいです。

働いていて惨めな気持ちになる

業界最大手企業は好機をうかがい、新技術に投資し、人員拡大していきます。一方、自分たちの会社は別世界のように景気が悪い。早期退職が呼びかけられ、賃上げされてもボーナスが減り、昇給は小学生のお年玉レベル。同じ業界にいて、同じ景気の波を受けているはずなのに、ここまで差がつくものなのかと驚かされます。

経営状況が悪いと知りながら入社を決めたのは、他でもない自分です。採用してくれた方も、上司や幹部のことも恨んではいません。周りは良い人ばかりです。人間関係は抜群に良い職場ですから。問題なのは、自分に会社の内情を見抜く目が欠けていたことの一点に尽きます。

経営が悪くなり、ネットキャッシュに余裕がなくなると、影響は日常業務にまで及びます。研究開発に必要な設備が壊れても、修理の予算がつかないんですよ。メーカーに勤めるエンジニアにとって、実験ができないのは相当こたえます。やりたいことがあるのに道具がない。仮説を立てても検証できない。おまけに論文購読料までカットされ、外部から情報を取り入れるのも難しい。実験用の保護手袋すら自費購入。

新規開発の提案を思いついても、「予算がないから通らないだろう」と頭の中で先に否決してしまいます。やがて、挑戦する意欲そのものが目減りしていくのです。経営の苦しい会社に勤めたこの一年間、首から社員証をぶら下げるたび、なんだか惨めな気持ちになっていました

ちなみに私の職場では、会議のための会議のための会議がたびたび行われています。経営報告会議に向けたすり合わせ会議の、アジェンダ確認のための事前打ち合わせ。会議の、会議による、会議のための会議。リンカーンのゲティスバーグ演説を思い出しますね。いっそ、会議どうしで会議をやらせてみたらどうでしょうか。案外うまくいくのではないでしょうか。

最後に

入社してから仕事を頑張れば、実務能力を鍛えることができます。しかし、会社の財務体質は、いち社員にはどうにもなりません。配られたカードで勝負するしかないのがサラリーマンですが、テーブルそのものが傾いていたら、どんな手札を持っていても厳しいです。

仕事内容に魅力を感じて、経営状況に目をつぶろうとしている方がいたら、過去の私と同じですから注意してください。会社に魅力を感じてしまう気持ちはすごくよく分かります。ただ現実には、やりたい仕事をやるための予算がつかないとか、やりたい仕事を担当する部署ごと縮小されるとか、想像していなかった角度から足をすくわれたりします。苦しいですよ。

就活の段階で経営状況の悪さに気づけているなら、あなたの目は正しいです。あとはその直感に素直に従ってください。

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