【逆張り厳禁】研究好きの博士が開発職を選んだらめっちゃ後悔した話

博士課程を修了した学生の多くは研究職に就きます。まぁ、そりゃそうですよね。博士課程まで進むぐらいですから、そもそも研究が好きなわけだし。

博士号は研究者としての免許みたいなものです。企業に進むなら研究職に就いておかないと、正直もったいないですよ。開発職は博士号がなくても勤まりますから。実際、私が所属する数百人規模の部署で、博士号持ちは片手で数えられるほどしかいません。

私も研究が好きでした。学生時代は朝から晩まで実験室にこもっていても苦にならなかったし、データを眺めながら「なぜこうなるんだろう」と考えている時間が何より楽しかった。

就活をしているとき、当初は研究職を考えていました。ですが、あえて開発職を志望し、いまの会社から内定を得ました。モノづくりの現場に近いところで仕事をしてみたかったのです。自分の仕事を製品に直結させたい、それがやり甲斐につながるはずだと信じていました。研究も好きだけど、それ以上に自分の手で世の中に届くモノを作りたい気持ちが勝ったんです。

ところが、開発職を選んだ結果、苦しい毎日を送ることになりました辛すぎて目を充血させながら帰る日もあるぐらいです。

この記事では、研究好きな博士学生の私が就活で開発職を選び、一年働いた感想をお話しします。

目次

開発職は思考の余白を奪う

開発現場は本当に慌ただしい。もう、笑ってしまうぐらい慌ただしい。次から次へと仕様変更が降ってきて、そのたびにドタバタとトラブル対応に追われます。昨日までの仕様が今日にはひっくり返っているだなんてことも珍しくありません。落ち着いて物事を考える暇など、どこにも存在しないんですよ

研究職と違い、開発職はとにかく納期が厳しいです。量産開始までに開発目標を達成しなければならないので、大量の業務をひたすら処理していきます。そこに思考は介在しません。感情を殺して、ロボットのように処理していくだけ。いえ、ロボットに失礼ですね。最近のロボットはちゃんと学習して賢く動きますから。私はただ目の前のタスクを右から左へ流す有機物。

開発職を一年やってみて、博士課程で鍛えた論理的思考力や深い専門知識はほとんど活きませんでした。「博士号を取った意味とは?」と週に三回は自問しています。

開発現場に居ると、残業時間も増えてしまいます。家に帰るのは21時以降。帰ってご飯を食べてひと息ついたら、もう何もやる気が起こりません。スマホをいじる気にもならない。布団を敷いて電気を消して、翌日の使役に備えるのです。せっかくの休日さえも、疲弊した心身を休ませているうちに過ぎ去ります。趣味に費やす時間も、じっくり本を読む余裕もありません。

まだ博士課程時代の方がよほど人間らしい生活をしていました。あの頃は(会社員になったら今よりかは楽になるだろう)なんて思っていたのですが、甘かったです。研究室の方が一億倍マシでした。

正直に言います、こんなはずではありませんでした。モノづくりの現場に近いところで、やり甲斐のある仕事がしたかっただけなのに。手元に残ったのは、やり甲斐ではなく、慢性的な疲労でした。この一年で視力がガクッと落ちました。心臓も不整脈気味になったし、よく蕁麻疹も出るようになった。おそらく開発職に向いていないんでしょうね。

就活で逆張りしてはダメだった

思えば、私は昔から逆張りが好きでした。大学受験では広島から北海道に行ったし、大学では部活やサークルに入らず一人でランニングに没頭しました。どうやら、他の人と違うことをするのにアイデンティティーを見出す性癖があるらしい。人が右なら私は左が基本セオリーだったのです。博士課程に進んだのも、常人とは違う自分であり続けたい気持ちがどこかにあったのかな。

当然、就活でも逆張りしました。北大飛び級博士ということで、平均年収1,000万円オーバーの超一流企業にも行けるなか、あえて地元の中堅企業を選びました。「この会社を業界一番手までのし上げてやる」と、根拠のない自信に満ち溢れていたのです。他大学の同期博士学生が大手メーカーや研究所の内定を手にしていくなか、一人だけ違う方向に突き進む自分が、正直かっこいいとすら思っていました。さらに、博士といえば研究職なのに、あえて開発部署を志望しました。逆張りのフルコースです。前菜からデザートまで、全品逆張り。

大学を離れるまでは逆張り主義で割と上手くやってこれました。人と違う道を選ぶたびに面白い景色が見えたし、希少な経験を重ねてきたのが強みとして活きていました。逆張りするたび、世界が広がる感覚があって、気持ちよかったんですよね。しかし、就職は逆張りしてはダメでした。ここだけは王道を行くべきだった。

私が入ったのは中堅企業。一流企業と違い、中堅企業は研究開発資金が限られています。勤め先では、製品リリースに必要なだけの十分な実験を行えないことがよくあります。設備もオンボロだし、装置が壊れても修理してもらえないケースが多数。こういう状態だから、仕方がなく机上検討に頼ることになるのです。

入社当初は「開発部署に進んでバリバリ実験するぞ!」と意気込んでいました。いざ蓋を開けてみれば、オフィスでシミュレーションソフトを回し、承認書類を作ってばかりの毎日です。私の定位置は、実験室からディスプレイの前になりました。博士課程で毎日のように実験していた自分が、今やExcelとパワポの住人になっています。パワーポッターですよ、本当に。笑えます。いや、笑えない。

あれだけ気持ちよく逆張りしてきたのに、最後の最後で盛大に裏目に出ました。人生、上手くいかないものですね。

研究が好きなら研究職一択

もし私が2年前に戻って就活をやり直すなら、間違いなく研究職を選びます。一ミリの迷いもなく、研究職を選ぶでしょう。博士課程はやり直したくありませんが、就活はゼロからリセットしてやり直したいぐらい、自身の決断を後悔しています。

研究職であれば、腰を据えて物事を考えられます。ドタバタに巻き込まれることなく、落ち着いて仕事に取り組めるでしょう。博士人材の多くは考えることが好きですから、企業に進むなら開発職よりも研究職を選んだ方が幸せになれるに違いありません。『考える』を仕事にできるのは、研究職ならではの特権です。研究職に就けば、博士課程で磨いてきた力を存分に発揮できるでしょう。

あえて人と違う選択をする自分に酔いたくなる気持ちは分かります。周囲と違う道を選ぶことで自分の存在意義を確認したくなる気持ちもよく分かる。なぜなら、私自身が、ずっとそうでしたから。しかし、就職で逆張りすると、入社後に底知れない苦しさを味わうことになります。現に私がいま、吐きそうなほど悶え苦しんでいる。

もしも研究が好きならば、自ら研究を手放すべきではありません。研究できる権利を死守して、命懸けでホールドしてください。逆張りなんかする必要ない。変にかっこつけなくていい。何かを好きだと思う己の衝動に、どうか素直に従ってください。好きなことを好きだと認めて、そこに真っすぐ進む方がずっと素敵なんですから。

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