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【68日目・リア幸0】12/8 (金)：ラボが全面水浸しに…
自席でムシャムシャと昼飯を食べる。パンにハムとチーズを挟み、塩を振りかけて作ったサンドイッチだ。特段美味しくは感じない。かといってめちゃくちゃ不味くもない。安く、手軽にお腹を満たすには自家製サンドイッチを拵えるのが一番。本当は野菜や果物も挟んでカラフルな装いにしたい所だが、そんな高価な品々を買えるお金が無いのだから致し方ない。
美味くも不味くもない飯を無表情でゆっくりと胃の中に注ぎ込んだ。すると、チャイナ人ポスドクの女性が血相を変え部屋に駆け込んできた。「食事中ごめん！ラボがプールみたいなんだけど助けてくれない？」と早口でまくし立てる。ラボ？プール？助けて…？果たしてこの方はいったい何を懸命に私へ伝えようとしているのだろうか。チョットナニイッテルカワカラナイ。「あ、あぁ！分かったよっ👍 (分からん)」と軽く生返事。「今からお昼ご飯を食べるの。30分後から掃除手伝って！」とのこと。血相を変えて駆け込んできた割には随分とゆったりしているじゃないか。どうせ大したプールじゃないだろう。所詮、猪苗代湖程度の小さくて可愛い水たまりなはず。
30分後、チャイナ人女性と2人でラボに向かう。扉を開けると床が全面水浸し。”プール”とは言い得て妙である。さすが、李白や杜甫といった傑物を生み出したチャイナ出身というだけのことはある。猪苗代湖では小さすぎる。琵琶湖、いやバイカル湖ぐらいの迫力はあった。膝を打って感心していると、チャイナ人女性から「はいコレ使って」と一辺20cmほどのスポンジとバケツを渡された。今から二人でラボ一面に広がったプールを吸水するらしい。チョットナニヲイッテルカワカラナイ。お風呂一杯分はありそうかというほどの水を二人で？しかもスポンジで…？
チャイナ人女性が水たまりの中心地に颯爽と足を突っ込んでいく。私も渋々足を突っ込みスポンジで給水作業を開始。やれどもやれども終わらない。どんどん水が増えていっている気さえする。水源はどこだ…？蒸留水の精製タンクだ。道理でどれだけ頑張って吸い取っても水が無限に供給され続けているワケだ。まずは水源の根を絶たなくては。精製停止ボタンを押す。供給が止まり、バイカル湖の水深がようやく保たれた。あとは水を吸い取るだけ。二人で力を合わせて1.5時間ほどかけてようやく全ての水を吸い終えられた。
にしても、だ。よくぞ漏電事故が起こらなかったな。これだけ水が溜まったらコンセントが水に浸かってしまっていてもおかしくはない。奇跡的に浸水しないで機械の一命が取り留められた形である。あぁ、よかった。私が日頃積み上げてきた善行がこんな場面で報いられた。コレで実験をスタートできそう…いや、ダメかもしれない。全壊とまではいかなかったが、やはり大量の水の影響を受けてか、装置のセンサーや膜など重要なパーツがまたもや損傷していた。私が実験を始められるのは果たして何時になるのだろうか？留学へやっと前向きになってきた矢先、出鼻をくじかれて本当に不愉快だ。
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