こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大工学系大学院生のかめ (D1)です。日本学術振興会特別研究員DC1としていただいている給与と科研費をフル活用し、D1の10月から半年間ほど英国・オックスフォード大学に私費留学します。
「留学」と皆さんの頭の中では『交換留学』や『正規留学』を思い浮かべるかもしれません。私の場合、そのどちらでもなく、『私費留学』という手段を使ってオックスフォードへ長期滞在します。
この記事では
- そもそも私費留学とは?(1ページ目)
- 私費留学のメリット (2ページ目)
- 私費留学のデメリット (3ページ目)
これら2つについて解説します。留学に関心のある方にピッタリな内容なので是非最後までご覧ください。

それでは早速始めましょう!
そもそも私費留学とは?
私費留学というのはその名の通り、自分のお金を使って海外の大学へ留学することです。渡航費用や宿泊費、機関在籍料など必要な出費をポケットマネーから全額捻出します。交換留学では渡航費用や在籍料がゼロになる (大学が負担してくれる)場合があります。海外で学位を取る正規留学だと、学生寮に入られれば宿泊費を限りなくゼロに抑えられるケースも。しかし私費留学の場合、渡航費や宿泊費はもちろん自腹。交換留学では支払わなくても良い在籍料まで取られます。私の場合、半年の留学で総支出額は200万円以上。膨大な額を支払って行くのが『私費留学』の大きな特徴です。



私費留学するメリットなんてホントにあるんですか?コレだけ聞いていたら (お金だけかかって全然うま味がないじゃん)って思っちゃいます……



あります!以下で3つのメリットについて記していきます
私費留学の3つのメリット
私費留学の3つの強みは以下の通り⇩
- 選択肢が無限大!世界のどこの大学にでも行ける!
- TOEFLやIELTSなどの語学力証明試験のスコアが不要
- 身銭を切っての留学ということで”絶対に学びを得るぞ!”という強烈なハングリー精神が働く
以下で一つずつ解説します。
行き先に縛られない!世界のどこの大学にでも行ける


私費留学の大きな強みは行き先の選択肢の多さ。世界中に存在するほぼ全ての大学が留学へ行ける対象になります。
交換留学だと皆さんが在籍する大学の”留学可能な大学リスト”から行き先を選ばねばなりません。もしその中に行きたい大学が無くてもリストに載った大学へしか行けない。仕方なく希望とは別の大学を選んだ場合、(本当はこんなはずじゃなかったのになぁ…)と留学が不本意なモノになってしまうかも。そんなのあまりに悲しいですよ。せっかく留学へ行くんだもの、行きたい大学へ行きたいじゃないですか?
その点、海外の大学院へ私費で留学しに行く場合、皆さんが希望するどの大学へでも行くことができます。交換留学では留学が叶わぬ意中の大学に行ける権利が。私の場合、所属する北大の『交換留学可能大学リスト』にオックスフォードの名はありませんでした (註:東大のリストにはあるらしいです)。交換留学では行けなかったものの、私費留学ならオックスフォードへ行けたワケです。受け入れ先の研究者が私に給与を払わねばならないのなら受け入れてもらうのは難しかったはず。逆に私が「頼むから学ばせて下さい!」とお金を払うなら相手方も「どうぞどうぞ♪」と喜んで受け入れてくれる。受け入れ側のラボとしては、意識の高い留学生が来てくれた方が研究室の士気が高まって良い。上手く行けば留学終了後、共同研究者として提携して連名で論文を出版できるかもしれませんし。



今回の長期留学先はオックスフォード大学でしたが、行き先の候補にはケンブリッジ大学やブリストル大学 (ともにUK)、カリフォルニア大学バークレー校 (USA)など様々な大学がありました。【お金さえあればどこへでも行ける】というのは大きな魅力です。やはり資本主義社会、「お金は正義」ということですね
TOEFLやIELTSなどの語学力証明試験でのスコアが不要


交換留学や正規留学をするにあたり大きな壁となるのがスコア。海外の一流大学院への留学を希望する場合、TOEFLなら100点以上、IELTSならoverall7.0以上 (ともに英検一級レベル相当)といった高いハードルを乗り越えねばならない。 (留学へ行きたい。行くぞ!)といくらモチベーションを高めたとしても、資格試験で所定のスコアを取れなければ渡航は叶いません。しかもこの試験、受検料が高い!円安も相まってか、一回の受験で3万円近く取られて素寒貧に。
私費で海外へ留学に行くなら資格試験のスコアが不要。やる気と勇気と度胸と研究力さえあれば渡航が叶います。もちろん外国語は話せなきゃいけない。人との意思疎通は全て外国語だから言葉を話せなきゃいけないのは当たり前。しかし、語学力の証明は不要。英検一級相当の異次元な言語力を有していなくてもOKなんです。私の場合、英語力は英検準一級レベル。B1の3月に準一級を取得したのち、一級を目指して4年間勉強を続けるも結局挫折しちゃいました。それでもオックスフォードには行けた。基本的な文章なら瞬時に作れる訓練をしたから生活も大丈夫。オックスフォードではご親切な方の家にホームステイさせてもらっています。24時間英語を使う機会があるから意図せず英語の力が爆伸び♪ もし帰国後、きちんと対策したのちIELTSを受けたら、おそらくoverall7.0ぐらいは越えられるのではないかと思います。コレはオックスフォードの大学院へ正規留学できるスコア。北大を辞めてオックスフォードへ行こうかちょっと迷ってしまいそう^ ^ (←ウソですよ)。
身銭を切っての留学ということで”絶対に学びを得るぞ!”という強烈なハングリー精神が働く


身銭を切って学んだ対象には強い覚悟が芽生えます。 (これだけ払ったんだ。お金を無駄にしてたまるか!)とハングリー精神が働くのです。本は人や図書館からタダで借りるより書店で自腹で買った方が良い。一行たりとも飛ばし読みせず”全てを吸収しよう”と頭が働くから。習い事でも事情は同じ。人にお金を払ってもらうより自分で払ってやった方が続く。人にお金を出してもらうと、何かあった際、責任を出資者になすり付けてしまいます。 ”あの人に「やれ」と言われたから…”等とポロポロ言い訳をこぼすわけです。
交換留学を選んだ場合、責任を他所に押し付ける隙がある。「本当はこの大学には行きたくなかったのに…」と辛さから逃れられる空隙があります。支払うお金の額が少ないが故に心へ甘えが生じやすい。 最悪、(あと数か月で帰れるし♪)と辛くても事態を打開しようとせずに残りの期間を自堕落に過ごす可能性も。私費留学に甘えが生じる余裕は全くない、コレは断言できます。自分の望む行き先を選び、しかも身銭を切って行くワケだから。自分で稼いだ貴重なお金をドブに捨てられる学生など皆無。『絶対に何らかの学びを得るぞ!』と強い決意を持って毎日を過ごせるのです。
私費留学の3つの弱み
私費留学の3つのデメリットは以下の通り⇩
- 半年で200万円以上もの出費。膨大な額の貯金が必要
- 学生寮は入寮不可。宿泊先を自分で探さねばならない (←私の事例だけかも)
- 事務手続きがかなりややこしい。派遣側/受け入れ側の両方ともが扱いに慣れていない
以下で一つずつ解説します。
半年間で200万円以上もの出費。膨大な額の貯金が必要


私費留学とはその名の通り、渡航費や宿泊費、大学への在籍料など全ての出費を自分で賄うスタイルの留学。交換留学なら渡航費や在籍料が、正規留学なら宿泊費を浮かせられるケースがあるも、基本的に私費留学は (トビタテなどの奨学金にでも当たらない限り) 出費の全てが自腹となります。私の場合、オックスフォード大学へ半年間私費留学するにあたって200万円近い出費となりました。
- 【渡航費】羽田空港⇔ヒースロー空港:往復27万円
- 【宿泊費】ホームステイ:月々£675 (180円/£だと12万円)→総額72万円
- オックスフォード大学への在籍料:月々£767 (180円/£だと14万円)→総額84万円
と、食費や娯楽費を除いても既に183万円ほどかかっております。生活に必要なお金を合わせたらどれだけ少なく見積もっても200万円は超える。これだけの金額を支払うためには膨大な額の貯金が必要。
オックスフォード大学への私費留学に必要なお金には、①学振DC1の給与と科研費、および②修士課程在籍中に借りていたJASSO第一種奨学金の返済免除分の全額 (100万円)を充てます。もし奨学金が返済免除じゃなければおそらく留学が赤字になっていたことでしょう。ちなみにJASSOの奨学金は、つみたてNISAで2年半育てて17万円のプラスになっていました♪ 留学前に株を全て手放し利益分をも資金に追加。コレだけ資金をかき集めてようやく半年間滞在できるかな…?といった所。私費留学はとにかくお金がかかるので、私費留学を希望する方は前々から計画的に資金集めに励んで下さい。



親や指導教員など、他人からは一円も借りません。「あのときお金を貸してやっただろう?」と手足を縛られるのが嫌だからです。
学生寮は入寮不可。宿泊先を自分で探さねばならない


もしかしたら私の留学事例だけかもしれませんが、オックスフォードへの滞在中に学生寮へ住まわせてもらえませんでした。学生寮なら食費や宿泊費をいくらか削って節約できた。学生寮には数百年もの伝統があるから住んでみたかった。しかし、学生寮に私費留学生を受け入れるキャパがなかったらしく、半年間の滞在先を自分で探す必要に迫られたのです。
初めて赴く場所ということで全く土地勘がありません。スーパーはどこ?バス停はどこ?散髪屋は?そもそも大学はどこ…?どのエリアに住めばいいのか皆目見当がつかないのです。北大の指導教員は「現地へ行ってから探しなよ♪」と他人事だから簡単に言う。でもそのような危ない橋を渡って万が一、ホームレスにでもなったら笑い事じゃ済まされない。被害を被るのは結局、私。自分の住処を自分で見つけて腰を落ち着けなくてはならない。
そこで、現地のシェアハウス検索サイトSpareRoomを使って家を探すことに。オックスフォード大学近郊の物件 (Flat)の相場を検索してみました。ボロボロそうなFlatだったら£400/monthで住めそうな感じ。ちゃんとした小ぎれいなFlatだったら少なくとも£600/monthは出さなくちゃならぬ。SpareRoomのチャット機能で様々な家主に「頼むから半年間住まわせてくれ!」と機関銃の如く連絡。しかし、ほとんど返事が来ない。返信をしてくれた方さえ「ごめんな、いま家がいっぱいなんだ…」とお断わりのチャットを寄こすばかり。
オックスフォードでの野宿を覚悟したころ、全く思いもせぬ方向から



キミ、Flat探しているんだって?家に住まない?
とホームステイの打診が来た。「喜んで!いまめっちゃ困っていた所だったんですわ…」と九死に一生を得た形。後日、別に記事を作ろうかと思いますが、イギリスでFlatを探すのは本当にホンッッットーーーに大変です。せっかくの留学、野宿したくはないでしょうし、なるべく早くから現地のFlatの空き状況をチェックし問い合わせてみましょう。
事務手続きが難航を極める。派遣側&受け入れ側大学の両方ともが扱いに慣れていない


交換留学や正規留学と違い、私費留学に関する事務手続きは派遣側&受け入れ側ともにあまり慣れていないようです。北大とオックスフォード大ともに何をどのようしたらいいやら手探りで作業を進めた形。したがって、その手続きは難航を極めた。ややこしい、かなりややこしい手続きが留学生の私を待ち受けていました。一つずつ落ち着いて処理していけば特段問題は起こりません。でも、一度にいくつもの書類の準備や手続きをしなくてはならなくなった場合、たちまち頭が混乱しちゃって(どうしたらいいんや…)と途方に暮れる。学振の特別研究員として海外の大学へ渡航するなら、学振側とも渡航手続きや科研費の使い方について打ち合わせする必要が。この折衝も超ややこしい。もうちょっと簡単に海外へ行かせてくれたらとても有難いのですが…



私が北大からオックスフォード大へ留学するために行った手続きについて以下の記事に書きました。私費留学を希望する方はコチラの記事をご参照あれ


最後に
私費留学やそのメリット/デメリットの解説はコレで以上になります。皆さんの留学形式選びの参考になれば幸いです。
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