【読み方で差がつく】論文執筆に役立つ論文読解テクニック5選

私はB4からD2までの5年間で、筆頭著者として七報の学術論文を発表しました。私の専攻では博士論文を提出するために、筆頭著者として二報以上の論文を出版する必要があります。したがって、私の業績は博士論文二本分に相当します。

同じ研究棟に所属していた学生の中で、私より多くの論文を発表していた人はいませんでした。こうして多くの論文を生み出せた理由の一つは、「学術論文の読み方」にあります。私は論文を読むとき、常に「自分の論文にどう活かせるか」を意識していました。

この記事では、学術論文をどのように読めば自分の論文執筆に直結させられるかを解説します。初めて論文を書く学生や、今よりさらに上手に書きたいと考えている研究者にとって、実践的に役立つ内容です。ぜひ最後まで目を通してみてください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

要旨:読者の注意を引く文章構成を学ぶ

学術論文の読者はまず要旨に目を通します。要旨が興味を引けば本文まで読んでもらえますが、惹きつけられなければすぐに離脱されてしまいます。本文まで読まれない論文は引用されず、研究成果としての価値を発揮できません。つまり、要旨は論文全体の中でも極めて重要な部分です。

多くの著者が最も多くの時間と神経を注ぎ込むのは、この要旨です。私も論文を読む際には、要旨にどのような工夫が盛り込まれているかを注意深く観察しました。言葉の選び方、文章の順序、オリジナリティーの示し方、新規性の強調方法など、アブストラクトには学びのヒントが凝縮されています。

印象に残った要旨に出会ったときは、声に出して繰り返し読みました。音読によって、文章のリズムや構成が自然に身につきます。特に NatureScience に掲載された要旨は、表現力や論理構成の面で優れた手本です。文章を暗記するつもりで何度も読み返し、己の血肉としました。

背景:研究の位置づけと導入の構成を学ぶ

背景では、その研究に取り組む理由や社会的・学術的な文脈、使用する実験装置や手法の選定理由が丁寧に説明されます。背景の構成は、研究全体を理解するうえで極めて重要です。専門外の読者であっても、背景を読めば研究の概要がある程度つかめるよう設計されています。

そのため著者は、読者の理解を助ける目的で、この部分の執筆に多くの労力を割きます。背景を読むとき、私が注目したのは話題の展開方法とその論理構造でした。多くの論文は、広い分野や一般的な問題提起から始まり、徐々に研究対象を絞り込み、最終的に研究課題へと収束します。

その流れの中で、どの段階で何を提示しているのか、そして読者の関心をどう誘導しているのかを意識しました。研究課題に至るまでにいくつの段階があり、それぞれにどれほどの文量が割かれているのか。文のつなぎ方や用語の選び方にはどんな工夫があるのか。そうした細部を観察することで、背景の組み立て方を実践的に学ぶことができます。

私自身、執筆で最も苦戦したのは背景でした。構成が決まらず、何度も書き直すことになったのです。そんなときは、先行研究の背景部分を分析し、その収束の仕方を参考にして乗り越えました。背景は、読者を研究の本題へ自然に導く案内役です。他の研究者の導入設計を繰り返し観察することで、文章構成力は確実に鍛えられます。

実験方法:目的と手法の対応を明確に読み取る

実験方法の執筆は、論文全体の中でも比較的書きやすい部分です。実験で何を行ったかを手順通りに記述すればよいため、構成に悩むことは少ないはず。私がB4で初めて英語論文を書いたときにも、最初に書き終えたのが実験方法のセクションでした。当時の自分は研究経験も浅く、知識も不十分。それでも問題なく書けました。これから論文を書く人にとっても、取りかかりやすいパートだと思います。

ただし、読者の立場で実験方法を読むときには、視点を変える必要があります。重要なのは、使用されている手法がどのような目的に基づいて選ばれているかを正確に読み取ること。ある現象を明らかにするために、なぜその装置や条件が選ばれたのかを理解するのが重要です。

実験で用いる分析手法には研究室ごとに偏りがあります。馴染みのある方法ばかり使っていると、新しい視点に出会う機会を逃してしまいかねません。論文には、自分の研究スタイルとは異なる思考を持つ研究者たちの工夫が詰まっています。未知の手法や条件設定を知ることで、自分の研究の幅が広がるのではないでしょうか。日々の読解で実験方法のストックを増やしておくのです。自分の実験で困ったとき、窮地を打開するための選択肢が自然に増えていきます。

実験結果:観察の切り口と構成の工夫を学ぶ

実験結果のセクションでは、著者がどのような視点でデータを分析しているかを読み取りました。見落としそうなわずかな変化を拾い上げて考察につなげている例。自分では思いつかなさそうな意外な角度からデータを解釈している例、など。考察の中には、著者独自の問題意識や観察眼が色濃く反映されています。多くの論文を読む中で、さまざまな視点や思考パターンを吸収でき、研究者としての観察力が確実に鍛えられます。

また、データの掲載順も重要なポイント。データの順番によって、読者が受け取る論理の流れが変わります。原因と結果の印象が逆転する場合もあるため、順序の選択には注意が必要です。

論文を読む際には、なぜその順番でデータが提示されているのかを考えながら読みました。どの順で情報を並べると、読者にとって最も自然で説得力があるかを意識しながら読む。その繰り返しで、自分の論文執筆にも活かせる視点が得られるでしょう。実験結果のセクションは、観察力と構成力の両方を鍛えるための重要な教材。読み飛ばして良い文章はひとつもありません。

結論:成果の要点と展望の伝え方を学ぶ

結論では、研究によって明らかになった内容が簡潔にまとまっています。研究成果が今後どのように応用され、発展していく可能性があるかも示されることがあるでしょう。総括部分は、論文全体の締めくくりとしての役割を果たします。内容をダラダラと書き連ねるのではなく、明快で記憶に残る表現が求められる。形式に決まりがない分、著者ごとの個性が出やすいセクションでもあります。

結論を読むときには、どのように文章をまとめているかどの表現に説得力があるかを見極めながら目を通しました。自分の執筆時に、どのようなスタイルを採用すれば読みやすいかの参考になります。

最後に

自分の論文を書くときに役立つ学術論文の読解法を紹介しました。論文を読むときに意識を変えるだけで、得られる学びの質は大きく変わります。

要旨では、注目を集める言葉の選び方や構成。背景では、情報の流れと焦点の絞り方。実験方法では、手法と目的の関係。結果では、分析視点とデータの構成。結論では、締め方と未来への視線。一報の論文の中に、文章力、構成力、観察力、発想力など、研究者にとって必要な要素がすべて詰まっています。

サラッと読み流すだけで終わらせてはもったいない。論文を自分の頭へ蓄える意識を持てば、読むたびに実力は磨かれます。

今後の論文読解が、読者さんの成長につながる時間となることを願って締めくくります。

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