こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大工学系大学院生のかめ (D1)です。研究室配属後、今日まで毎日最低一報以上の英語論文を読み通してきました[関連記事]。専門知識を拡充すべく、B4前期から電気化学の教科書を読み始めました。M2後期からは英語の専門書へ手を出し始めた次第であります。
この記事では、研究室生活での論文と教科書の使い分け方について私見を綴って参ります。
- (両方とも読む必要あるの…?)とお考えの方
- どっちを読めばいいか分からない…という方
こうした方々にピッタリな内容なのでぜひ最後までご覧ください。
それでは早速始めましょう!
論文も教科書も両方とも読むべき。ただし両者を使い分ける必要がある
私としては論文も教科書も両方読むべきだと考えています。片方だけでは知識が不足し、満足に研究を進められないからです。たとえ今は研究が順調であっても必ずどこかで壁にぶつかる。両方とも読まなきゃ快調ペースを維持できません。何も読まないで構わないのはアインシュタイン級の俊英のみ。私を含む大多数の一般人は地道に力をつけねばならない。かといってやたら滅多に読み散らすのはコストパフォーマンスが低すぎます。かけた労力の割に成果が見合わず (オレは何をやっていたんだ…)と嘆くハメに (*自身の経験談です)。論文と教科書を適切に使い分けてこそ効率的に知識を収集可能。次の章では肝心な『使い分け方』について解説して参ります。
論文と教科書の使い分け方
私の場合、論文と教科書は以下のように使い分けています⇩
- 論文:最先端の知見を得る or 先行研究チェックのため
- 教科書:知識の基礎固め&抜け漏れの抑止 or 新しい専門領域の開拓のため
以下で一つずつ解説します。
論文
最先端の知見を得る
論文の特徴の一つとして”タイムリーである”ことが挙げられます。世界各国の研究者たちによる最新の研究成果を知られるのです。Google Scholarでプロフィールを登録すれば、関心のある分野に関する最新の論文が毎朝何報かメールで送られてくる。それ等のうち何報か (あるいは全て)ダウンロードして毎日読めば当該分野のトレンド (いま何がアツいのか) を把握できる。大学院生だって研究者の端くれ。専門分野の潮流について漠然とでもいいから情報を得ておく必要があります。もしコレを怠った場合、今後参加する学会にてすごく寂しい思いをすることに。活発な議論が為されているのにちょっと何を言っているか分からず、せっかくの学外での時間を有意義に活用できません。学会は論文の著者による貴重な講演を耳に入れる絶好の機会。どうせ行くなら何か収穫を得て帰った方が良いし、事前に論文を読み情報収集しておくのが大切というワケです。
昨日まで人類が知らなかったことが一つ、また一つと明らかにされる。業界を激震させるすごい論文を読んだ時は、「すごいなぁ…!」と感嘆の声を上げて貪るように読み耽ります。”知る”という行為そのものに大きな価値があると思う。知りたい。知らずにはいられない。知りたくて背中がムズムズする…私が毎日論文を読み続けてきた意欲の根源はココにあります。
先行研究のチェック (自分のモノと同じ研究例が出版されていないか日々監視)
論文を読むもう一つの目的は『前例がないか監視する』こと。自分の正にいま取り組んでいる研究が他チームに先を越されていないか確認するため読むのです。研究者は総じて賢いですから、自分の考えた渾身のアイディアが別の人の頭へ着想済みという場合がある。数年前に誰かが論文化して世に打ち出し済みの場合もある (*経験談です)。そんなこととは知らず実験をいくらやった処で、誰かに先を越された/越されていたと分かった瞬間に実験がパーになっちゃいます。まぁ、論文のアピールポイントを少し変えれば出版ぐらいは可能ですが、論文の書き方を余程気をつけなくては何度もリジェクトを食らうはず。自分のモノと同じ研究が過去&現在に存在しないか注意して同業者の論文を読みましょう。見つけるのが早ければ早いほど傷口の拡大を防げますよ👍(論文執筆中に見つけてしまうと目も当てられないことに…泣)
教科書
知識の基礎固め&抜け漏れの抑止
教科書を読む重要な目的は『知識の基礎固め』をすることです。専門分野で知っていて当たり前の知識を抜け漏れなく回収するためです。大量に論文を読んでいても知識は大体揃えられる。しかし、超基礎的な事項について論文にて丁寧な記述はされず、不明点を解決したくても論文だけでは解決しません。基礎の根幹がグラついていたら論文の理解が捗らない。そんな時、一旦教科書を読み直せばモヤモヤがあっという間に雲散霧消。分からないことを調べる辞書的な使い方で教科書を使っても構いません。ですが私としては教科書を一度は通読するのをオススメします。通読により知識同士に有機的な繋がりが生まれるからです。ひとたび体系的な理解を得ると一生涯忘れずに済むので、大変でも専門書を一遍通読してみましょう👍
なお、教科書や専門書は日本語より英語のモノの方が分かりやすい場合があります[関連記事]。ご自身の専門領域の専門書を一度確認してみて下さい。
新しい専門領域の開拓
教科書を読むもう一つの目的は新しい専門領域を開拓するためです。研究や興味心で専門外の学問に触れたくなったら論文よりも教科書を読んでいます。
私の場合、研究の都合で流体力学が必要になりました。流体力学は式のオンパレード。論文を読んでみても何が書いてあるのか皆目見当がつきません。そこで図書館にて流体力学の入門書を借り、”そもそも流体力学とは?”という所から知識を積み上げていく決断を下しました。概念を掴み、式の意味を一つずつ理解し、捉え所のない流体力学をモノにしてやろうと試みたのです。Excelで流動のシミュレーションをし、「あ、こういうコトなのね♪」と何となく腑に落ちました。もちろんまだまだ完全なる理解には至っておりませんけれども、新領域の開拓ツールとして教科書の活用は大変有意義だと分かったのです。
また、私は趣味で天文学を嗜んでいます。昔から星にそこはかとない憧れがあり、(宇宙のことについてもっと知りたいな)と宇宙関連の本を読んできました。大学時代、図書館で宇宙の専門書をよく借りたり立ち読みしたりしていましたね。あの時も論文ではなく教科書を読みましたし、”門外漢でも本を開けば好奇心を満たせる”と知りました。
最後に:論文は教科書ではないし、教科書は論文ではない
論文と教科書の使い分け方についてはコレで以上となります。まとめると、
論文
①最先端の知見を得るため
②先行研究をチェックするため
教科書
①知識の基礎固め&抜け漏れの防止のため
②新しい専門領域の開拓のため
このような形になります。
論文は教科書ではないので妄信するのは危険ですし、教科書は論文ではないので研究のトレンドは掴めません。論文と教科書にはそれぞれ読むべき理由が存在するから、両者をうまい具合に使い分けることで研究にお役立てください^ ^
以上です。
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