北大博士課程を早期修了した化学系大学院生かめです。
学部四年次から博士二年次までの五年間で主著英語論文を六報出版しました。学生生活のハイライトは、M2後期、論文がインパクトファクター (IF) 24の雑誌に掲載されたとき。
論文出版の過程で数多くのリジェクトも経験しております。一番ひどい時なんて、同じ論文を別雑誌へ四回連続でリジェクトされましたから。自分の研究の意義が否定されているように感じられて苦しかったです。リジェクトの辛さに耐えかねて脱アカを決意。D1後期に就活して民間企業で働くことを選びました。
B4からD2までの五年間で主著論文を計7回リジェクトされました。蹴られたうちの一回がNature Communications。Nature Communications誌は有名雑誌。どの業界に属する研究者でもみなご存じでしょう。Nature Communicationsは「すごい」ことで有名。色々な意味ですごいのです。
この記事では、Nature Communicationsのすごさを解説します。学術論文出版先をご検討中の方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。

それでは早速始めましょう!
あのNatureの姉妹誌


Nature CommunicationsはNatureの姉妹誌。姉妹誌の中でも特にランクの高い雑誌。
NatureといったらあのNatureですよ。姉ちゃんではありません。CellやScienceと並ぶ世界最高峰の学術雑誌のひとつです。掲載される論文はどれも学術界を揺るがすインパクトのあるものばかり。「こんなエレガントな作品、何を食ったら書けるようになるのだろう」と惚れ惚れとさせられます。論文というより芸術品。Natureから出版される論文は、どの分野の論文でも美しいし読む価値があります。
Nature Communicationsから出版される論文もハイレベル。”Nature”の看板を背負っているだけあります。強いインパクトのある、読んでいて目を見開かれる思いのする面白論文が多いです。同じ専門分野からNature Comm誌で出版された論文を読んだら鳥肌が立ちますね。「うわぁ~、アレってこういうことだったのか~」と頭をぶん殴られたような強い衝撃を受けます。さすがはNature系。素晴らしい研究成果ばかりが掲載されているのです。
IF20の超一流雑誌


Nature Communicationsは査読もすごい。本家Natureと同じレベルで厳しいレビューが行われます。
Nature Communications誌には全分野の研究成果が収録されます。人文社会科学系も自然科学系も同様に掲載される。つまり、色々な人に見てもらいやすいのです。おまけにNature CommunicationsのIFは20前後。世界の超一流雑誌のひとつ。IFの高い雑誌から出版された論文は多くの方から引用されるでしょう。IF5前後の標準的雑誌から出版されるのと比較しても注目度が段違いなのです。
世界中からの関心が集まるぶん、出版前の査読も厳しく行われます。
論文が出版社側に提出されたら、まずは雑誌編集者が目を通します。論文の質が一定以上に達しているとみなされれば査読者に送信される。編集者が読んで「この論文はイマイチだな」と感じたらその場でリジェクトになるでしょう。論文が査読者に送られる割合は、全投稿論文の5~10%。厳しい第一関門を突破してようやく査読に挑めるわけです。
査読のレベルもなかなかハード。世界最高水準の雑誌へ掲載されるに値するか慎重に見定められます。標準的な雑誌の2~3倍もの期間をかけてじっくり精査される。指摘も鋭め。論旨のわずかな矛盾や細かな違和感を徹底的に突かれていくのです。査読者がアクセプト前提のコメントを返してくれる確率は、全査読論文の3割程度。投稿からアクセプトまで一年近くかかるケースも珍しくありません。
掲載料100万円オーバー!今もインフレ中


学術界には奇妙な慣習があります。雑誌へ論文を掲載するのにお金を「払わ」ねばならないのです。他の業界では逆ですよね。漫画家がなんちゃらコミックへ漫画を載せる際、雑誌会社から漫画家サイドへ原稿料が渡されます。ところがアカデミアだけは異なる。苦労してデータを集めて論文を記し、それを掲載させてあげようと言っているのに、執筆者側は雑誌会社へ掲載のためにお金を払う必要があります。
Nature Communications誌が注目されるのは掲載料の高さにも要因が。アクセプト後、論文をオープンアクセス (誰でも見られる状態) とするのにとんでもなくお金がかかるのです。2025年2月現在、掲載料は£5290/$6990/€58901。日本年に直せばだいたい100万円近くもかかるのです。これは全学術雑誌の中で最高値だそう。すごいですよね。掲載するだけで100万円も払わせるって。
論文掲載料は全雑誌でインフレ傾向にあります。Nature Communications誌だけではありません。他の学術雑誌の掲載料も徐々に高くなっていっている。若手研究者の中には、掲載料を支払えずに論文出版を見送っている方が居られるそう。研究費調達は実験資材調達のためだけではありません。高価な掲載料を稼いで成果を発信するためにも資金集めが重要なのです。
アクセプトされれば色々な意味ですごい
Nature Communications誌の特徴は他誌と一線を画します。Natureの姉妹誌として、全分野の研究成果を扱うのが特色でしょう。インパクトファクターは20を超え、世界トップレベルの存在感を放っています。査読プロセスの厳格さには目を見張るばかりです。投稿論文の9割以上が編集段階で姿を消していく。掲載への道のりは茨の道。査読期間は標準的な雑誌の3倍にも及び、採択後の掲載料は100万円近くに達します。年々上昇する掲載料は、若手研究者の肩に重くのしかかっているのです。若手研究者の活躍を支える仕組みづくりが求められているのかもしれません。
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