北大博士課程を一年短縮修了した技術開発エンジニアかめです。
日本で博士号を持っている人は”200人にひとり”と言われています。大学全入時代となった今でも博士号の希少性は失われていません。
博士課程修了者の中には「飛び級修了者」が現れることも。100人中5人程度の割合で在学期間を短縮して早期修了していくのです。所属元大学院では、私の修了年度に22人の博士修了者が誕生しました。そのうち、早期修了したのは自分ひとりだけ。オーバードクターも3割程度。博士課程の過酷さがお分かりいただける数字かと存じます。
博士課程を早期修了するには、通常の課程博士とは異なる過ごし方をする必要があります。大学院の飛び級は、入念な事前準備があってようやく成功するものなのです。
この記事では、博士課程を飛び級するための7ステップをご紹介します。7ステップは以下の通り↓
・大学院試験に合格する
・講義の単位を取得する
・指導教員に早期修了宣言する
・在籍期間短縮要件を満たす
・進路を決め、就職先を確保する
・学位審査会に合格する
・博士論文を提出する
今回の記事では、標準年限修了者とは異なる下線部分について詳述していきます。

それでは早速始めましょう!
指導教員に早期修了宣言する


指導教員は配属博士学生を三年がかりで育てようとします。二年でも、四年でもなく、三年。三年間で規定本数以上の業績を出せるようサポートしてくださります。我々学生側から何も言い出さなければ、先生サイドはこう思うでしょう。「この子は三年で修了するんだな。よし、分かった。三年間みっちり指導してあげよう」と。最初から学生を二年間で修了させようと考える先生など居ません。博士課程の早期修了は一般的ではないからです。全体の5%程度しか利用していないマイナーな修了方法を、早期修了の意思を伝えてこない学生へ適用しようと思う先生はいないはず。
もしも早期修了したければ、指導教員へ「早期修了したいです」と宣言してください。飛び級の意思を先生へ伝えてからが早期修了チャレンジのスタートとなるでしょう。在籍期間短縮の意思を聞いた指導教員は、学生が望み通り短縮修了できるよう協力してくださります。三年間かけて指導する予定を二年に圧縮して濃密に指導していただけるのです。研究成果をたくさん挙げるための手厚いサポート。他の人より一年早い学位審査の申請手続き。先生を味方につけ、早期修了に向けてペースを上げていきましょう。
在籍期間短縮要件を満たす


早期修了達成に向けて一番難関となるのが要件充足。標準年限修了志望者に「博士論文提出要件」があるのと同様、早期修了希望者にも「在籍期間短縮要件」なるものがあります。大半の場合、在籍期間短縮要件は、博士論文提出要件よりも厳しめ。三年かけて修了する人よりも二年で出る人の方が多くの業績を求められるでしょう。飛び級したければ在籍期間短縮要件を満たしてください。ギリギリで充足しているようでは危険かも。少し余裕をもって要件を満たしていると学位審査をスムーズに通過できます。
私の所属元専攻では、三年かけて出る人へ「国際誌での査読付き筆頭論文二報以上の出版」が求められました。早期修了希望者には「国際誌での査読付き筆頭論文三報以上の出版」が求められたのです。更に、私は指導教員から謎のローカルルールを適用されました。なんと、「国際誌への査読付き筆頭論文を五報以上出版せよ」と言われたのです。三年かけて出る人よりも2.5倍の論文数を3分の2の期間で確保せねばならない。単純計算で3.75倍速もの研究ペースが求められました。
早期修了を達成したいなら研究ペースの加速は必須。どこまで自分を追い込んでいけるか。どこまで実験解析効率を高められるか。論文出版までどれだけ素早く至れるか。早期修了者にはあらゆる場面で「速度」と「量」が問われていくでしょう。
進路を決め、就職先を確保する


早期修了するには、早期修了後の進路確保が必要になります。この点は三年かけて出る人と同じです。三年で出る人も飛び級者と同じく、進路を確保してようやく修了が認められます。
標準年限修了者と早期修了者が異なるのは「進路決定時期」。二年で出る人は、三年で出る人よりも一年早い進路決定が必要です。
私は企業でエンジニアになりました。大学院で取り組んできた研究の知見を活かして実社会をより良くしていくために。もともとの目標は、海外で研究者になること。世界を股にかけて活躍するスーパーサイエンティストを志向していました。しかし、D1後期に行ったイギリス留学で悲惨な目に遭い、海外で活躍する夢を諦めることに。おまけに研究者への憧憬も失った。精魂尽き果てた挙句、地元の企業で技術者として働く決心を固めたのです。
皆さんはどのような進路をお考えですか? ポスドク。大学教員。エンジニア。社長。公務員。フリーター。様々あるかと存じます。いずれにせよ、早期修了する一年前までには進路を決めておいてください。企業就職なら内定を確保する。ポスドクへ行くなら勤務先と話をつけておく。大学教員になるならコネを作ったり公募出願の用意をしておいたりする。公務員なら試験勉強する。将来に向けて早め早めに準備していってください。
学位審査会に合格する


標準年限で修了するにせよ、在籍期間を短縮して修了するにせよ、学位審査会を突破して力を証明する必要があります。学位審査は全部で三回。D2夏に行われる中間審査会。修了希望3~4か月前に行われる予備審査会。そして、修了希望2~3か月前に行われる公開論文説明会(公聴会)。この3つ全てに合格すれば、皆さんがお望みの博士号が授与されるわけです。
飛び級希望者の学位審査会は、非・飛び級希望者の審査会よりも厳しめ。飛び級するに値する研究力があるか。研究成果を深く理解しているか。あらゆる角度から徹底的に厳しく観察されると思っておいてください。特に予備審査会はハードですよ。鋭い指摘が入ってボコボコにされるのを覚悟して臨みましょう。案の定、私もボコボコにされました。なんせ、20分で終わるはずの質疑応答が65分もかかったんですからね。大炎上でしたよ。「何も変なことを言っていないのに、どうしてこんなに燃えるんだ…」と当惑するばかり。
早期修了志望者は、学位審査会でやらかしてなどいられません。審査会の結果次第では、飛び級に失敗する可能性があります。予備審査会と公聴会へは入念な準備のもと臨みましょう。絶対に成功させる。審査員へ圧倒的な実力を見せつける。いちゃもんを付けさせるスキを作らない。何度も練習して完璧に発表できるよう最高の用意を行ってください。
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