【博士課程】オーバードクターとは?ポスドクとの違いは?オーバードクターするとどうなるか

北大と国研で研究していた化学系大学院生かめです。

博士課程は三年で出るのが一般的。博士修了者のうち八割以上が三年での修了となります。中には私のように早期修了する変態も。各専攻に五年に一度ぐらいの割合飛び級者が現れるようです。修了期間と優秀との間の相関関係は強くありません。早期修了できるかどうかは研究テーマ運に大きく左右されます。

早期修了とは逆に、博士課程を三年以上かけて出る方がおられます。例年、博士候補生のうち1~2割が標準年限よりも時間をかけて修了するようです。それが今回の記事で詳述する「オーバードクター(Over Doctoral Course)。ポスドクはオーバードクターとは別進路。就職やアカデミア公募採用と全く異なる道なのです。

この記事では、オーバードクターについて解説します。ポストドクター(ポスドク)との違い、オーバードクターする方法、オーバードクターした末路をお伝えするので、博士課程へ進学予定の方や在籍中の方は是非最後までご覧ください。

かめ

それでは早速始めましょう!

当記事では簡単のため、医療系以外の博士課程をターゲットに解説します。標準修了年限は三年。医療系の標準年限は四年なので、医療系読者の方はそこを適宜読み換えてご覧ください。

目次

オーバードクターとは

オーバードクターとは、標準修了年限での博士課程修了を見送った方々を指す言葉。博士課程へ標準以上の期間だけ在籍するから”オーバー”ドクター。我々がD4へ突入した瞬間にオーバードクターです。D4もD5もD6もオーバードクター。オーバーしてから博士課程を修了するまでの間、属性はオーバードクターで変わりません。研究室学生の最年長者として院生部屋を牛耳ることでしょう。

D2で修了した私のような人間をアンダードクターと呼びま…せん。世の中には普通のドクターかオーバードクターしか存在しないようです。

オーバードクターとポスドクの違い

オーバードクターとポスドクは全く異なります。一番の違いは学位の有無です。

ポスドクは博士号ホルダー。既に博士課程を修了して博士号を与えられ、研究で飯を食っていっているプロの研究者。活躍の場は世界各国の研究機関。お金を払って雇ってくれる人の元ならどこにでもはせ参じるのです。ポスドク時代は博士課程での専門分野へ引き続き属する方が多め。中には全く新しい専門分野へ手を付け、全くのゼロから研究し直す人も。ポスドクには、自分が最も力を発揮できる分野へ移動する自由があるのです。融通を利かせられるのは、博士号を得て独立した研究者になった後だからこそ。

オーバードクターは修士号ホルダー。博士号を得るまでの途中段階。研究で飯を食うどころか、逆にお金を払って大学や研究所に所属しています。修了するまでは半人前扱い。指導教員から思考方法や論文執筆法を教えてもらって実力を高めていきます。オーバードクターの間は所属機関を移動するのは難しいでしょう。色々な研究へ目移りさせる前に、まずは今の場所で今の研究に専念して一本大きな幹を作るのが得策かもしれません。

オーバードクターする方法

オーバードクターはポスドクや企業研究者と異なり、自ら主体的に進むべき道ではありません。そうなってしまった、いつの間にかこうなったなど、望まぬ選択肢である場合が大半。

オーバードクターを希望する狂人さんへ。研究テーマを博打のように運次第なものにして下さい。世界最難関の研究計画を立てるのです。それに向かって果敢に挑戦するだけで簡単にオーバードクターできます。運に大きく左右されるテーマの場合、結果が出るかどうかは誰にも分かりません。何か成果が出ればラッキー。三年以内に何も出ない可能性の方が圧倒的に高い。Nature掲載を夢見て実験に邁進しましょう。ひたすら超高難度な実験へ打ち込むだけで容易にオーバードクター可能です。

論文をビッグジャーナルへ掲載したがる指導教員の元へ配属された場合もオーバードクターまっしぐら。どれだけたくさんデータを集められても駄目。標準年限以内に規定本数の論文を出せなければ修了できません。ビッグジャーナルへの掲載を志向するなら、一報あたりたくさんの論文が必要になります。博士課程修了に必要なのは論文「数」。どれだけ少なく見積もっても、一報のビッグジャーナルに標準レベルの論文二報分のデータが求められるのです。博士修了に論文二報が必要な専攻でビッグジャーナルを一報出しても修了できません。オーバードクターとビッグジャーナルとは大変相性が良いのです。

オーバードクターは我々のすぐ近くにあります。一寸先はオーバードクター。皆さんもオーバードクターにはくれぐれもご注意ください。

オーバードクターした人間の末路

万が一、オーバードクターした場合、大変なことになります。具体例をふたつ挙げてみましょう。

まず、博士学生支援制度の期限が失効します。学振DCやJSTフェローシップやJASSO奨学金が支援打ち切りになるのです。授業料支払い免除も危ないかもしれません。金銭的支援なしで博士課程を乗り切らねばならなくなります。貯金がなければ退学の危機。指導教員に土下座してリサーチ・アシスタントへ採用されなかったら資金がショートするでしょう。

また、将来のキャリアへ影響を及ぼす場合が。オーバードクターの期間が長引くと、自身の研究遂行力に疑いの目を向けられてしまいかねません。年齢を重ねるにつれて民間企業への就職が厳しくなってきます。会社員経験ゼロの何もできないアラサー新卒学生を雇ってくれる企業はそう多くないのです。博士生活が長引くと、精神的負担が募り、自身の研究への情熱に陰りが生じてきます。自身の研究に対する価値を信じられなくなって博士課程をやめたくなるかもしれませんね。

総括

博士課程修了の標準年限を超えて在籍する「オーバードクター」は、多くの場合、望まれない選択として訪れるもの。研究テーマの過度な難易度設定や、ビッグジャーナルへの論文掲載への執着が主な原因となっているようです。オーバードクターに陥ると、学振DCなどの経済的支援が打ち切られ、授業料支払いの負担が重くのしかかることでしょう。さらに、研究遂行能力への懸念から、将来のキャリアにも影響が及びかねません。民間企業への就職も年齢とともに困難になり、精神的負担から研究への情熱を失うリスクも高まっていくのです。

博士課程での研究生活を実りあるものとするためには、現実的な研究計画の立案と、標準年限内での修了を意識した戦略的な取り組みが求められます。皆さんもオーバードクターに注意しつつ、迅速な研究遂行を意識してみて下さい。

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