北大博士課程を早期修了した化学系大学院生かめです。
博士課程修了前最後の関門が公開論文説明会(公聴会)。公聴会では、同じ専攻に属する教員11名を前に発表を行いました。質疑応答にはやや苦戦。全くの盲点から飛んできて、対処できずに終えてしまった質問も複数。公聴会を終えて時間が経つにつれ、自身の質疑応答対策の甘さを感じ出しました。「もっといいやり方があったのになぁ…」とギリギリ歯噛みする思いです。
この記事では、自身の反省をふまえ、公聴会専用の質疑応答対策を記します。博士課程の学位審査へ挑む方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。

それでは早速始めましょう!
異分野の教員からの質問に備えるべき理由


公聴会の質疑応答では特殊な対策を講じることが必要。学会発表や普段のゼミとは対策のベクトルを変えなければなりません。
ゼミや学会と公聴会の一番大きな違いは「聴衆のバックグラウンド」。前者の場合は同じ専門分野。考えることも気になることもだいたい自分と同じでしょう。後者の場合は専門分野が異なります。自分の分野には詳しくなくても、別分野に関してはエキスパートなのです。
研究背景の異なる人間からは異質な質問が飛ばされます。全くの検討外、かつ盲点からの質問がなされるのです。いわゆる”素人質問”も起こるでしょう。相手は素人を装った玄人。素朴ながら本質をズバズバ突いてきます。切れ味鋭い問いには たじたじ になること間違いなし。コチラが黙りこくった瞬間に畳みかけてくるので注意して下さい。
ゼミや学会と公聴会とでは、答えるべき質問の質が異なる点をご理解いただけたでしょうか。両者を同じようにとらえて対策していては惨事を招きかねません。我々はボコボコにされる前提で臨むべきなのか。いえ、きちんと対策して臨めばダメージを最小限に抑えられます。それでは、公聴会専用の質疑応答対策について、次の章にてご説明しましょう。
【対策】審査員の代表作と過去一年以内の出版論文に目を通す


我々博士候補生が審査員からの質問へ応対するにはどうすればいいか。相手の思考回路を解析すればいいのです。相手が物事をどのように捉えるクセがあるか。いかなるバックグラウンドを持っているのか。どのような問いに基づき研究を進めていっているのか。これらを徹底研究すればOK。研究者の思考回路が如実に表れるのは論文の中。相手の研究背景や思考パターンは論文を読めばつまびらかになります。
自分自身、M1のころ、指導教員の主著論文を全て読みました。先生が何を知っていて、どのような技術を持っていて、データを眺めたとき如何にして考察するかを理解できたのです。指導教員へ「あなたの論文を全部読みました」と報告したら「マジで…?(訳:何やってんのお前)」と気味悪がられました。自分、何かいけないことをしましたかね。大変遺憾であります。深い憂慮を示します。
私がもう一度公聴会へ臨むとしたら、先生方の論文を手掛かりに質疑対策を行うでしょう。まずは公聴会へ出席する先生それぞれの最も多く引用されている主著論文を一本ずつ読みます。余裕があれば、研究室内で過去一年以内にお書きになられた論文にも目を通すかもしれません。次に、各先生方が考えそうな質問を検討する段階を踏みます。最後に想定質問への回答を用意。ここまでやってから公聴会へ臨めば、余程の火の玉ストレートでも来ぬかぎり大丈夫です。
論文を自分の目で読むのは大変でしょう。まして、読むべき論文は異分野の論文。目を通したところでちょっと何を言っているのか分からぬかもしれません。そこで生成型AIの出番。各教員の論文を読ませて思考パターンを学習させ、それぞれの先生が考えそうな質問をリストアップしてもらうのです。生成型AIならどのような分野の論文でも読めます。読解と分析は合わせて5秒で終わる。質問生成と合わせても30秒以下で終わるのではないでしょうか。
人間の仕事は、AIが生成した想定質問への回答を用意すること。補助スライドを充実させたり、うまく切り返したりする際の文言を考えておきましょう。
【裏技】相手の質問を自身の専門分野へ無理やり引きずり込む


たとえどれほど対策したとしても、学位審査会では盲点からの質問被弾を避けられません。相手は現役のプロ研究者。思考回路が日々アップグレードされています。生成型AIによる論文解析だけでは教員の進化をキャッチアップしきられないのです。自分自身、盲点からの質問をモロに食らって苦悶の表情を浮かべることに。
想定外からの質問にはどう対処すればいいか。緊急事態で重宝する裏技があるので覚えて帰って下さい。
いま、審査員さんからちょっと何を言っているのか分からない質問が飛んできましたとします。問いを何度聞き返しても意味が分かりません。
そんなときは自分の専門分野における言語での表現を試みましょう。つまり、相手の質問を自分が理解できるよう意訳して、自身がなるべく答えやすいような形に変えるのです。相手との応対を繰り返すなかで翻訳の糸口を探ってください。どこかにあるはずです。相手と自分のバックグラウンドを結ぶ架け橋となるようなものが。解決の端緒をつかんだ瞬間、自分の土俵へと強引に引きずり込みましょう。ここまでくればもうこちらのもの。自分の詳しい範囲内の知見を披露して相手を納得させられるでしょう。
相手の土俵で勝負したら負けます。そりゃそうだ。相手はプロの研究者だから。相手にそうと悟られぬよう自分の土俵まで持って行けたら勝ち。このテクニックはゼミや学会でも有用です。土俵をスムーズにスライドさせられるようになれば質疑応答が怖くなくなりますよ (*≧∀≦*)
最後に
博士課程の最終関門である公聴会では、想定外の質問への対応力が試されます。異分野の教員陣からの鋭い問いかけは、私たち博士候補生の知的体力を徹底的に試しているのです。
公聴会の質疑応答。そこでは、学会発表やゼミとは一線を画す独自のアプローチが必要です。専門分野の異なる教員の方々は、私たちの予想もしない角度から巧みな質問を投げかけてきます。素朴な問いの中にも本質を突く深い洞察が隠れていることも珍しくありません。
公聴会での質疑応答を乗り越えるための戦略を提案します。まずは審査員の先生方の代表的な論文をじっくりと読み解きましょう。各教員の思考パターンを理解し、予想される質問を丁寧に検討していってください。生成型AIの力を借りるのも良いですね。ChatGPTやDeepseekなどにお願いすれば、ものの30秒で質問対策まで終えられるかもしれません。
質問を自分の専門分野へと導く対話力を養っておくのも重要でしょう。相手の問いかけを柔軟に解釈して、自身の得意分野で答えられる形に変換していく。こうした技術を磨けられれば、どのような場面で話すことがあっても余裕を持って対応できるでしょう。
私の経験から得たこれらの知見が、これから公聴会に挑戦する皆さんの道しるべになれば幸いです。
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