【研究室生活体験記】ラボ配属から博士課程早期修了まで駆け抜けた五年間のハイライト

悩みぬいて博士進学を決意したM1時代

研究対象に興味はない。「研究」という行為自体は好き

研究対象は好きではありませんでした。そりゃそうです。二度も不本意なテーマを渡されたのですから。研究内容や研究の展開に対して何の興味もわきません。自分にとってこのテーマは、学位取得のための道具に過ぎませんでした。

「研究」という行為自体は好きだったのです。一つの物事を徹底的に突き詰めていく所作へ魅力を感じていました。もともと脳筋気味だった気質も、研究活動を経て徐々に思考寄りに変わっていきます。何をどう、どのような順番で考えればいいか体感的に分かってきました。思考力を得た脳筋に敵はありません。B4のとき以上に実験量を重ねます。M1の一年で論文二報分のデータを得られました。

成果が出てくるにつれ、研究がますます楽しくなっていきます。もっと研究を深められる方法はないかと模索するようになったのです。相変わらず研究対象への興味はゼロ。一年取り組めば愛着が湧いてくるかなと思いきや、自分でも驚くほど関心がありません。好きも嫌いもない。みじんも興味がない。お世話になっている国研の先生には申し訳ないけれども、配属前に希望したテーマをいま渡されたらすぐにでも乗り換えたかったぐらい。

研究が好きとなったら、考えることはみな同じ。博士課程へ進学してみようかな…

修士課程修了後は企業就職していく人間が大多数。大学に残って博士課程まで行く人間は専攻内で5%も居ません。少数派の道を選ぶのには勇気が要ります。失敗したらどうしよう。自分に博士課程修了までこぎつけられる力はあるのだろうか。悪いことに、所属研究室が開設されてから現在に至るまでの十年間、博士修了者が一人も輩出されていません。博士学生への適切なガイドを期待できぬ条件が揃いすぎていました。

発想の転換

ここでも発想を変えてみましょう。この環境で博士号を取れたら凄くないか、と。

博士進学自体が研究室にとって前例のない挑戦です。おそらく、誰からも適切な指導をしてもらえないでしょう。実験装置はいつ使用不能に陥るか分かりません。おまけに、私がD1の年度にて、国研の共同研究者さんが霞が関へ出向になります。D1の一年間は一切の実験を行えません。そんななかで博士号取得に至ったらすごい。今度こそは文句なしに自らの力を証明できるでしょう。

いや…さすがに研究条件が劣悪すぎます。いっそ、研究室を変えてみようかなとも考えました。博士課程まで行くなら自分のやりたい研究テーマをやらせてもらいたい。興味のないテーマを続けたとて楽しくない。研究行為自体に嫌気がさして研究を辞めたくなるかも。それでも研究室を変えませんでした。どんな悪条件でも乗り越えられる強靭な精神力を養いたかったから

自分は大学受験で一浪しました。一浪時、現役時代に落ちた大学への受験から逃げ、レベルを下げて北大を受けて進学したのです。あの選択をずっと後悔しています。逃げなければよかった。正々堂々と真っ向勝負して、勝つなら勝つ、負けるなら負けるでハッキリさせておけばよかった。ここで所属研究室を変えたら、大学受験と同様に後悔してしまうはず。後悔はもう嫌だ。最後までこの研究室で走り抜いてみせる。

学生便覧で博士修了要件を確認したところ、M2の後期には要件を満たせる見込みでした。博士修了前に博士修了へ必要な論文数を満たす以上、博士課程で何もしなかったとしても三年間で修了できるでしょう。なんだか全然面白くありません。つまらない。もっと面白くできないのかな。どうせならもう一個、挑戦してみたいんだけれども。

そこで企んだのが「博士課程早期修了」。通常は修了に三年かかる博士課程を二年で出ようという試みです。

早期修了には膨大な量の業績が求められます。標準年限修了者の二倍以上もの業績を出し、それでようやく学位審査会に出る権利を得られるのです。これなら博士課程は暇にならなさそう。おまけに、受験浪人で背負った一年間のビハインドを取り返せるでしょう。M1の後期から、博士課程早期修了に向けて本気で取り組み始めました。早期修了できるかどうかは分からない。けれども、挑戦せずにのちのち悔やむのは嫌だったからチャレンジしてみたのです。

学会賞受賞

博士課程へ進学する前に学振DC1へ内定しようと考えました。金銭面での懸念を払拭するため、DC1内定で自信を得るために。

学振DC1内定に必要な業績面での条件として、自分の中で三つの要素を掲げていました。

  1. 学術雑誌への筆頭論文出版歴
  2. 国際学会での発表歴
  3. 学会での受賞歴

①はB4の3月にクリアしました。DC1申請までに追加で二報出版して、合計三報の出版歴を携えて挑めそうです。②はM1の9月にクリア済み。実家帰省中、オンラインで国際学会のポスターセッションに参加しました。

問題なのは③学会受賞歴。これまで学会へ複数回出てきた中で、まだ一度も賞をもらったことがありません。受賞に至らない原因は分かっていました。質疑応答へ致命的な課題があったのです。質問に対してちぐはぐな返答をしてしまって的確に答えられません。盲点からの質問にはフリーズ。議論にならぬケースも多々起こりました。学振DC1へ内定するには賞の獲得がマスト。質疑が苦手だなんて言っていられない。猛特訓して得意にならねばなりません。

そこでまず、書籍の音読時間を増やしました。発話能力のさらなる拡充を図ったのです。話すのに苦労しなくなれば、質疑へ余裕をもって挑めるようになるかもしれません。また、発表資料を発表一か月前に作り終え、質疑対応資料を作り込みました。相手の質問を全て事前想定済みにしておく作戦です。さらに、日頃の行いを正しました。誰に対しても感謝を忘れない。神社へ日頃のご加護を感謝しに、週一で北海道神宮へ参拝に行きました。

万全の対策を施して迎えた3月の国内学会。講演も質疑も会心の出来でした。終わった瞬間に受賞を確信するほど。これで賞を取れなければ何をやってもダメだなと思うぐらい良い講演を行えました。一か月後、研究室へ賞状が送られてきました。写真撮影してもらっている最中、長年の吃音症状をついに克服できたことへの達成感で笑みが止まらなかったものです。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 6年前に学位を取った者です。
    調べ物をしていて偶然このブログを見つけました。とても楽しく読ませていただいております。
    様々な災難に見舞われたり、在学中にコロナ禍もあったなか、これだけのモチベーションを保っていて、本当に尊敬いたします。

    私はかめさんのように優秀な学生ではなかったのですが、
    同じく、進学する人が周りにいない環境だったり、
    余裕がなくて彼女にフラれたり、
    ボスとそりが合わない時期があったり、
    研究が嫌いになったり、
    いいジャーナルに載ったら周りの評価が変わったり、
    色々なことを思い出しました 笑

    そして、就職のために引っ越しした春先は、とても楽しかったのを思い出します。

    かめさんの益々のご活躍をお祈り申し上げます。

    • コメントありがとうございます。記事をご覧いただけて嬉しく思いました。
      皆さん、博士課程へ行くと、何かしらハプニングに遭遇するのですね。何事もなく学位取得まで至った人を見たことがありません…笑

      ただいま、つかの間の解放感を味わっています。五年ぶりに何もやることがない状態になって精神が落ち着いております^ ^
      来週から会社員生活です。もう少し休ませてくれよとは思いますが、また気合を入れて頑張っていくしかありません。

      応援のお言葉をありがとうございました。
      今後も頑張ります。会社も、ブログ執筆も、その他の趣味も充実させます!

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