
初旬~:つくばでの5週間出張実験

GW明けにつくばの国立研究所へと出張に向かった。滞在期間は5週間で、研究室の歴代最長記録を1週間更新することとなった。
今回の滞在には二つの目的があった。B4時代の実験データの精度を向上させること、そしてTEM観察やRaman分光測定といった新しい測定手法に挑戦することだ。この頃から博士進学も視野に入れ始め、学振DC1の獲得も意識するようになっていた。
DC1には論文実績や学会賞受賞など、多くの研究業績が必要となる。研究室に博士課程の先輩がいなかったため、「学振DC1」の存在を知ったのはM1の5月という遅いタイミングだった。
B4での経験が活きたのか、第2週目から有意なデータが得られるようになった。予定していた実験は第4週で完了し、最終週は新しい実験セルの開発にも挑戦できた。TEMやRamanの技術習得も順調で、指導教員からは「修士課程2年分の成果」との評価を得ることができた。

滞在中、蒸留水とエタノールを間違えて飲むというハプニングはあったものの、それ以外は順調に進んだ。休日にはイーアスつくばで気分転換を図り、帰札の途中で靖国神社に立ち寄って「頑張ってきました」と報告する習慣もこの時から始まった。
下旬:輪講

つくば滞在中の5月下旬、初めての輪講を担当することになった。英語の専門書の内容をスライドで解説する取り組みで、雑誌会より手軽ではあるものの、基礎的な理解が不可欠だった。
「腐食」のイントロダクションを担当した私は、複雑な数式こそ避けられたものの、局部腐食や異種金属接触腐食など、多くの専門用語の調査に時間を要した。教科書の説明を補強しようと独自の内容を追加したところ、ボスから「余計な説明を入れるな」と叱られてしまった。
落胆する私を指導教員が「かめはこのままでいい」と励ましてくれた。この経験があったからこそ、翌年の輪講では意地でも5倍の内容を盛り込んで解説し、今度はボスから「すごく詳しくてわかりやすい」と評価されるまでになった。
博士課程への思い

つくばでの充実した実験生活を通じて、研究への興味が一層深まっていった。M1になって自ら実験内容を決定できるようになり、単なる作業ではなく真の研究を行っている実感があった。
就職すれば残り2年弱、就活期間を考えると実質1年しか研究に打ち込めない現実に気づき、博士進学への思いは強まっていった。5月末時点でのDの意志は50%まで上昇したが、自身の適性や経済面での不安は大きかった。
特に、進学後の研究テーマが明確になっていないことが最大の課題だった。博士論文には一貫性のある研究内容が求められるため、6月以降は将来の研究ビジョンについて真剣に考え続けることとなった。

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